初めてのサシ飲みでゲームセット – 正月の約束を果たす in ZOZOマリンスタジアム その3
ゲームセット。
春先の日差しが傾いてオレンジ色の光に包まれたZOZOマリンスタジアムを後にした。
おでらは、熱気冷めやらぬ野球ファンたちがワイワイと駅へ戻る流れにのって、ノロノロと歩いていた。相変わらず風は強いままで、まだ春分の日を迎える前なものだから、この時間の海浜幕張は、肌寒いを通り越して真冬に戻ってしまった。
ネックウォーマーと手袋で完全防備したリンくんとは対照的に、おではリンくんの背中のリュックのなかにギュウギュウに押し込まれて、ゆっさゆっさと揺られていた。朝からずっと強い海風の中、屋外のスタジアムで過ごしていたから、さすがタフなライオンのおでも、ちょっとつかれちゃったみたいだ。急に生ぬるい空気に包まれて、うっとりと眠たくなってきた気がする。
オトモダチのみなさん、こんにちわーに。ライオンのボブぞです。
今日は千葉ロッテマリーンズ vs 楽天ゴールデンイーグルスのオープン戦を観戦しに、チーバはZOZOマリンスタジアムにやってきたんだ。
今日のメンバーは、とってもめずらしくてね。リンくんとおでボブぞ、それから、リンくんの兄貴であるリンアニとその仲間(ぬい)たちだよ。
(ここまでのお話はこちら → 「集合は朝10時 – 正月の約束を果たす in ZOZOマリンスタジアム その1」、「ライオンボブぞ vs リンアニのオハナたち – 正月の約束を果たす in ZOZOマリンスタジアム その2」)
13時に始まった試合は、約3時間半で終了した。結果はというと、3対5でロッテの負けだった。
おではロッテ側の応援席にいたし、チーバ県在住でチーバが好きだからもちろんロッテには勝ってほしかったのだけれど、それでも大満足の試合だった。
まずは憧れのローキくん(佐々木朗希投手)が先発登板して、あのダイナミックな投球フォームを初めて生で観ることができたし、継投では、巨人から移籍してきた澤村投手、さらには、抑えピッチャーの益田投手も観ることができたんだよ。野手では、リンアニの推しで横浜DeNAから移籍してきたばかりのソト選手が出塁したし、ベテランのオギタカこと荻野選手が代打で出てくれた。
ローキくんが制球できず初回に4点も取られちゃったのが心配だけど、まぁまだオープン戦だし、結果はともかく、ワクワクする楽しい時間だったんだ。
ほわーんとおでが今日の長いイチニチのできごとを思い出していると、リンアニが叫ぶでっかい声がリュック越しに聞こえた。
「ダミー!ダミーぃぃぃぃぃっ!」
なにごとかと思っておではひょっこり顔を出してみた。すると、海浜大通りにかかる大きな歩道橋のたもとに、千葉ロッテマリーンズのユニフォームを着たオジサマが立っているのが見えた。
「おぉー!トモダチー!」
ン?どうやらリンアニと歩道橋のオジサマが遠目にブンブンと手を大きく振って、ごあいさつを交わしているらしい。
リンアニのただでさえ長いコンパスが急に早まって、スタスタとオジサマの元まで近寄っていった。リンアニはね、身長が185cmもあってしかも歩くのがとっても早いんだ。リンくんとおでは小走りしながらあとを追った。
「ダミーさん、来てたんだ!」
「おぉートモダチー!いえぇーい!」
すごいハイテンションなふたりが盛り上がっていて何がなんだかわからないけれど、どうやらマリーンズファンのオジサマであることは間違いない。
リンアニの説明によれば、千葉ロッテマリーンズファンのなかでは有名人で、かのボビー・バレンタイン元監督のモノマネさん?としてファン活動をする”ダミー・バレンタイン”さんという方らしい。長年、首都圏の球場で出没していて、会えると幸せになれるとかなれないとか?(このあたりはほぼリンアニの創作かもしれないけど。)
「せっかくだからわたしもダミーさんにごあいさつしよっと。」
リンくんは勇敢にもダミーさんに挑んでいくと、なにか小さなチラシを手渡されていた。タイトルには「新・鉄腕ロウキ」とある。鉄腕アトムの替え歌の歌詞らしい。
「ダミーさん、また会おうな―!」
「ガンバロウキー!」
リンくんが手元を見ている間にもリンアニとダミーさんは盛り上がってバイバイしていた。ダミーさん、明らかに日本人のそこそこシニアだけど、たしかにちょっとダンディーな雰囲気はボビー・バレンタイン元監督っぽくも・・・あるようなないような。アハッ!陽気なところはそっくりだった気がする、ってリンくんは言ってたぞ。
「さぁて、どっかでメシ食ってくか。」
リンアニとリンくん、実は外でサシ飲みって初めてなんだって。いつもリンママちゃん家に集まったときに一緒に家飲みするばかりだから、不思議な感じらしい。
「いいよー、今日はそのつもりだったし。」
海浜幕張駅は混み合うし飲んだ後に都内まで帰らなくちゃいけないリンアニからすれば帰り道が長いのはちょっと面倒くさいから、途中の乗り換え駅まで移動することにした。電車に揺られつつ、リンアニがボソッと話しはじめる。
「昔、神宮でさぁ・・・。」
子供の頃に兄妹で一緒に行った野球観戦の思い出話のようだ。おではまだ8才で子供の頃のリンくんのことは知らないから、初めて聞く話ばかりだった。
駅前ロータリーの雑居ビルに入っている北海道海鮮居酒屋に飛び込みで入り、サクサクとカンパイの一杯目を注文する。
「カンパーイ!」
リンくんはハイボール、リンアニはウーロンハイ。おでも一緒にカンパイしたの。
「オマエ、お酒飲むの?」
「飲むもーん!ごっべごっべごっべぐびっぐびっぐびっ!」
ちなみに球場でのアルコールの杯数、リンアニ8杯、リンくん3杯。リンアニからすれば野球観戦のときの杯数としてはだいたい平均的なものらしいけど、正直リンくんは目の当たりにしてびっくりしていた。だって、リンくんは自分だって呑んべえでお酒は強い方と思っていたから。
ここからのリンくんの巻き返しがすごかった。
ハイボールの大ジョッキサイズを選べるのを発見するやいなや、ぐびぐびとやりながらリンアニのおしゃべりにあいずちを打っている。
テーブル上には小さな網焼きコンロが置かれていて、その上にはバターが溶けたうまそうな貝焼きホタテがのっている。おではなかなか話に入ることもできないし、つまもうかなぁって狙ってたらね、リンくん、ちゃんとアーンしてくれた。
もっぐもっぐもっぐもっぐ
うまーい。うまいんだけど、話題に入れないのはちょっとつまらない気がする。
会話の中心はリンアニがまわしていて、どうやら子供の頃の話、家族の話、仕事の話、今の生活の話、それから、これからの話。そう、野球以外の話題ばかりしていたように思う。リンくんに後から聞いたけど、こんなに野球以外の話をたくさんしたのは初めてのことだったって。
「なぁ。おで、そろそろリュック入ってる。話終わるの、待ってるな。」
「うん、ちょっと兄妹でサシ飲みタイムにさせてもらうね。ボブぞ、リュックのなかでウトウトしててもいいよ。」
いい匂いの漂う店内でおではこっそり、兄妹のサシ飲みを見守ることにしたんだ。だって、いまのリンくんがあるのはリンアニがいたからだし、リンアニはどうやらリンくんのことが大好きみたいだからだ。おで、別にシットとかしてないぞ。おでのリンくん、とか思ったことはないけれど、でも、おでの知らないリンくんの顔を見た気がして、なんだかモヤモヤしたの。
でも。おではおニーさんだから、決してリンくんにそんなこと言わないもんね。リンくんって、妹だったんだぁって、知っちゃった。
ふぅ。
おで、長いイチニチをようやく終えることができた。朝10時の集合から、早10時間が経っていた。夜8時過ぎにお開きとなって、へべれけのリンアニとリンくんが改札でバイバーイすると、リンくんはいつものリンくんの顔に戻っていた。
「リンくーん、おかえり。」
「ン?どゆこと?」
そう、そういう気がしたんだもん。おでのリンくん、おかえりなさい。
これにてリンアニとの海浜幕張の長いイチニチ、終了。
ホントの、ゲームセット!
いやぁ、疲れた。大敗したあとの気分だよ。
ローキくんのキモチ、おで、わかるぞ。多分。
ボブぞ
「集合は朝10時 – 正月の約束を果たす in ZOZOマリンスタジアム その1」
https://bobingreen.com/2024/03/21/8689/
「ライオンボブぞ vs リンアニのオハナたち – 正月の約束を果たす in ZOZOマリンスタジアム その2」
https://bobingreen.com/2024/03/26/8727/
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