ライオンボブぞ vs リンアニのオハナたち – 正月の約束を果たす in ZOZOマリンスタジアム その2
「おお、どもども!今日はマリ活ですか?」
試合開始前。
1塁側内野の指定席に腰をおろし、練習風景を眺めながら一杯目のドリンクをカンパーイして飲み始めたところで、ひとりのオジサマから話しかけられた。リンアニと同じくらい年端だろうか?まぁ、初対面だしリンアニのご友人ぽいのでオジサマ、と言ってみたものの、見た目はいわゆる中年の野球好きオッサンで間違いないと思う。
「おー!こんにちわっす。ですです。今日はマリン側なんですよ。あっ、コレ、妹ですぅ。」
リンアニがご友人とご挨拶をしている。
「どうもハジメマシテ。リンといいます、兄がお世話にナッテオリマス。」
リンくんが最大限のよそ行きの挨拶をして、ペコッとアタマを下げた。
「んじゃっ、アッチのほう座ってるんで、また!」
スチャッと手を上げて行ってしまったそのオッサ・・・いや、リンアニのご友人は、おつまみにとポテトチップスの小袋を、ハイ、と優しくおでに手渡してくれたのだった。
どもどもどーもこんにちわーに!
野球だいすきライオンのボブぞだよ。
本日、チーバは幕張のZOZOマリンスタジアムにやってきております!リンアニと野球観戦に来ることになった経緯から、当日の待ち合わせまでを描いたその1に続き、今回は続編だよ。
(前回のお話はコチラ → 「集合は朝10時 – 正月の約束を果たす in ZOZOマリンスタジアム その1」)
リンアニを落ち合ったのは朝10時で、今は、ようやく12時をまわったところだ。ちなみに試合開始は13時。ンー。まだまだ時間はある。
この2時間の間、何をしていたのかというとね、いちばんのビッグイベントはファングッズのお買い物だった。
「オマエ、誰のユニフォーム買うんだよ?」
ショップのオープンと同時に入るなり、リンアニがリンくんに質問する。
「エッエッえーっと・・・買うなら。もし買うんならローキくんがいいけど・・・、えーっと、いくらくらいするものなの?」
「1万円くらいじゃないの?」
「ひぃぃぃぃぃっ!高っ!」
そうさ何を隠そう、って何も隠してないが、リンくんはこのところ、日常の衣服に1万円もかけないのだ。ホラ、今日の服装を見てみようか。白のポケット付きTシャツはワークマン。アウターは8年着続けている、アウトレットでお安く買った山歩き用のやつ、それから、黒のキルティングスカートはしまむらさんだもの。
「あ、ボブぞ、スニーカーだけは、一応New Balanceの新作なんだからね!」
はいはい、そういうことらしい。
そんなわけだから、今日以降着るかどうかもわからない千葉ロッテマリーンズのユニフォームに1万円も払うのか・・・というと、ものすごくその可能性は低いように思われた。
「ン?ちなみに兄貴はショップで何か買うの?」
「オレは、ソトさんのタオル目当て。ユニ(ユニフォームのことを野球オッサンはそう短縮して呼ぶ)はヤマグチさんの持ってきたからさ。」
前回のその1でも解説したが、ソトさんというのは今期から千葉ロッテマリーンズに移籍した外国人選手で、前期まではリンアニ最推しの横浜DeNAベイスターズに在籍していた。
「フーン・・・。はぁ・・・高いな・・・。どしよ。」
ぐるぐるぐるぐる、ショップの中を何周もしながら、リンくんは悩み続けた。
「それより、ボブぞに何か買ってあげたいんだよね。あ、ボブぞってこのコね。バッジとか、ないのかなー?」
ほう、話題をそらす作戦に出たリンくん。リンアニに、バッジ売り場のありかをたずねる。リンくん、おでのオヨーフクにつけてくれるつもりらしいの。
「わぁい!おでも何かマリーンズ応援グッズ欲しいの!できればローキくんのがいいな!」
ローキくん、というのは説明不要かもしれないけれど、現在千葉ロッテマリーンズに在籍している若手のエースピッチャーで、佐々木朗希投手のことをいう。しかも今日は登板予定なの!
ローキくんグッズが欲しいとアピールすると、リンアニが冷たいひとことを放った。
「あー・・・缶バッジとかはね、最近シークレットなんだよ。ホラ、あれあれ。銀色の袋にはいって中身見えないようになってるヤツ。あれで当たればラッキーだけどね。」
ん。ガーン!
「くぅー商売上手だのう。昔、っていうかわたしたちが子供の頃はさぁ、好きな選手の缶バッジを選んで買ってさ、キャップにつけてたじゃん!」
「いやー、最近はドコのチームもそうよ。」
というわけで、ローキくんの缶バッジはあきらめて、おでは白いストライプ柄にチームキャラクターであるカモメのマーくんのイラストが描かれた巾着を選んでもらった。
「ボブぞ、コレに入ったらちょっとユニフォームっぽくなるよ。」
「うん!わーい!」
さぁて、とリンくんとおでがレジへ向かおうとすると、再度リンアニが引き戻しにかかった。
「で?オマエ、ローキくん、買わねーの?ホントに?」
「アッアッアッ・・・。バレたか・・・。んもー・・・!・・・じゃぁ、買いますよ。」
例えば、夢の国へ行ったらカチューシャつけたりでっかい手袋したりしちゃうように、やっぱり野球のスタジアムへやってきたら、それなりの格好をして思いっきり楽しんだほうがいいっていうことらしい。
リンくんとしては、リンアニとふたりでどこかへ遊びに行くなんて、オトナになってからは初めてのことだし、これから先もあるかどうかわからないから、何かの記念なのだと自分を言い聞かせたらしかった。
チーン。
いや最近のレジスターはチーンとは鳴らなくて、むしろ最先端のカッコいいタブレット型POSシステムでPayPayしたわけなのだけれども。結局うちのリンくん、ユニフォームとおで用の巾着合わせて1万円をはるかに超える想定以上の大出費となってしまった。
(まぁまさかだとは思っていたけれど、リンアニが愛する?妹と、その付き添いライオンである心優しきおでのために買ってくれたり・・・なんていう軌跡は、起きるはずもなかったよ。)
・・・ってなわけで。
いま、うちのリンくんはでっかい17番を背負ってます。その上には、「R. SASAKI」の文字。ペラッペラの印刷じゃなくて、ちゃんとワッペンが刺繍されてるの。
「オイ、ちょっとさ、立って後ろ向けよ、写真撮ってやるよ。」
「エ?あ、はい?」
リンアニに言われるがまま、座席を立つリンくん。背中の17番の写真を撮ってくれるという。
「あっははは!友達に送ってやろ。妹とマリン戦観に行くっていったらさ、その友達が、オマエが誰のユニ買うのか、っていう予想をしてきたんだよな。」
「ふーん、あ・・・そう・・・。」
ナルホド、リンアニの野球コミュニティ内のネタのために1万円払ったってことね・・・。
おつかれ、リンくん。高くついたねぇ・・・。
「ボブぞ・・・、お財布が痛いよう・・・。うー。」
「まーまーもう買っちゃったもんは仕方ないよ、楽しもーぜ!な、リンくん?」
いつもリンくんにはちょっと風当たりの強いおでだけれど、今日ばかりは少しかわいそうな気もした。おで、めずらしくちょっと励ましてやったんだ。
ま、おではこの巾着ユニフォームが気に入ったしな!
それにしても野球観戦というのは、単に野球をスタジアムで生で観る、ということには尽きないんだとつくづく思う。
ご衣装が決まったあとは、今度はグルメだ。
お弁当、おつまみ、ハンバーガー、チーバの地元グルメに、選手とのコラボ商品。いろんなお店が軒を連ね、その前にはニンゲンたちがわんさかと行列をなしている。
それから、飲みものに関しては、生ビールを中心にいろんなメーカーのロゴを背負った売り子さんが観戦席の間を縦横無尽に駆け回り、笑顔を振りまきコップに注いでいる。
「ひぇぇ。」
基本的に行列に並ぶのが嫌いなリンくんは、いろんな食べ物のニオイがぐっちゃぐちゃに混ざり合うその人混みを見た瞬間、ひるんだ。しかも、お医者さんから言われている食べ物の制限がいくつかあって、成分表示やアレルギー表示をじっくり見ないとなかなか手を出せないから、すぐにメニューを決めることができない。
さらに、最近はビールまで控えるように言われていて、以前は毎日のように飲んでいたのに、ここ3ヶ月くらいはとんと口にしていない。
「なんだか、スタジアムグルメとは縁遠いねぇ・・・。」
おでとリンくんはそう話しながら、家から持ってきた6Pチーズのアルミをはがしてかじりつつ、海浜幕張駅前で買ってきた権兵衛(大好物の手作りおにぎりチェーン店だ)の”梅ひじき玄米”をほおばった。プチトマトとにんじんスティックも家から持ってきていたけれど、両手がふさがってしまったので今はやめておいた。
「オマエ、メシは買ってこなくていいの?」
「んー。駅前でおにぎりは買ってきた。球場の売店のは食べられないもの入ってそうだから、一旦ダイジョブ。アリガト。」
「あ、そう。じゃ遠慮なくオレは食うけど。」
リンアニは隣で、テイクアウトカップに入ったコッテリした汁なし担々麺だとか、香ばしいニオイを放つ唐揚げとポテトのセットだとかを、うまそうにほおばっている。
「なぁなぁ、リンくんの地味メシじゃさみしいから、おでにも茶色い揚げ物、ひとくちくれよー!」
そういっておでがリンアニの方へそぉっと寄っていったら、ちゃんとアーンしてくれた。
「んぐっ。もっぐもっぐ。うまいじゃん!リンアニやさしいじゃん!さんきゅー!」
ぐびっぐびっぐびっ!
ごっべごっべごっべ!
そうして、リンアニは生ビール、リンくんはキリンの氷結シャルドネ味を気持ちよく飲みつつ、腹ごしらえを済ませた。
ふぅー。
すると。リンアニのリュックのなかから、わんさか仲間たちが出てきた。我が家でいうところのオハナ(=ぬいぐるみの家族)のことだ。
白クマのくまーな、茶グマのくまお、千葉ロッテマリーンズのキャラクターであるカモメのマーくん、それから、猫ピッチャーというマンガキャラクターの白ネコミーちゃん。
まだまだいるよ、楽天ゴールデンイーグルスのキャラクターのワシくんに、最後はDeNAのプーさんこと宮崎選手ファンの、くまのプーさんだ。
「うっわ!こんなにいっぱい連れてきたんだ・・・!みんな来たのねー!すごい。」
カラダの大きさだけでいったらおでがイチバン大きいけれど、数でいったらリンアニの仲間たちは総勢6名となかなかのボリュームだ。
「どもども、おで、ライオンのボブぞです。野球が好きでね、将来、ローキくんみたいな豪速球投げられるようになりたいの。あ、それかオータニさんみたいなスラッガーでエースにも憧れるの。」
おでがちゃんと自己紹介しなくっちゃと思っておじぎをしたところで、心ないヤジが飛んできた。
「あー!なんだかオマエ、サイタマ行けよーっていう顔してるなぁ!ライオンなんだろ?」
「エッ?エッ?・・・。」
シュン・・・。
あぁそうですとも、おではライオン。白いライオンじゃないけれど、やっぱりどこからどう見ても、誇り高きライオン。ライオンで野球といえばさ、そりゃあ埼玉西武ライオンズだもんね。
おでだって数年前までトーキョー都内に住んでた頃は西武線に乗ってライオンズの球場へ野球を観に行ったりもしたさ。だって、ライオンだもの。今だってライオンズが嫌いになったわけじゃないよ。でもさ、でもさ、せっかくチーバに住んでるんだから、千葉ロッテマリーンズ応援したっていいじゃん。ライオンだからって、ダメってことないじゃん。ねぇ。
おで、なんて返していいかわからなくって、戸惑っていると、リンアニが仲介に入った。
「あぁ、悪い悪い。こいつ、口悪くってさ・・・オレに似ちゃってさぁ!」
おではちょうどアタマを下げていたところだったから、暴言をはいたのが一体誰だったのかはよくわからないんだ。間違いないのは、どうやらリンアニが自身の手下の誰かに言わせたということだった。
「くまお、アナタでしょ。うちのボブぞのことイジメないで。ココロやさしいライオンなんだから。我が家じゃぁそんな厳しいヤジは飛ばないの。だから、ヤメて。いい?」
リンくんが叱ってくれたその相手は、小さい茶グマのくまおというヤツらしかった。そいつは全然リンくんの話も聞かず、リンアニの手の中で黒目がちの目をくりくりとさせて、ボロボロになったホールケーキを握っていた。カラダはおでの手のひらくらいしかないサイズなのに、とっても態度がデカくて、口も悪いの。我がボブ家のオハナ(家族)にはそんな仲間はひとりたりともいないから、カルチャーショックを受けたようにびっくりしてしまった。
「おで・・・、おで・・・ライオンだけど、マリーンズもライオンズも好きだもん!野球が好きなんだもん!ライオンがチーバにいたって、いいじゃーん!んもー!いいから、おでと仲良くしてくれよぉ!」
こんなところで口げんかをしてもカッコ悪いし、おで、カラダの大きなヒャクジューのオー(百獣の王)ライオンらしく、でーんと大きく構えなくちゃと思ったんだ。だから、せめてそれくらいしか言えなかったんだけどさ、頑張って放ったおでのそのコトバには、もう誰も耳を傾けていなかった。
だって、目の前では試合開始のセレモニーが始まっていたからだ。
集合10時。待ち合わせして、並んでグッズ買ってから11時の開門を迎えて。そこから指定席について、選手たちの練習を見ながらお昼ゴハン食べて、1杯飲んで。いい感じで酔っ払ってリンアニのオハナたちと口げんかできるくらい、仲良く?なった。
ここまでで、すでに濃厚な3時間が経過していた。
時刻は13時。ようやく・・・いんや、いよいよ、ホンモノのプレイボールだ!
(その3へ続く)
ボブぞ
千葉ロッテマリーンズ 公式ホームページ
https://www.marines.co.jp/
東北楽天ゴールデンイーグルス 公式ホームページ
https://www.rakuteneagles.jp/
「猫ピッチャー」 公式サイト
https://nekop.jp/index2.php
「集合は朝10時 – 正月の約束を果たす in ZOZOマリンスタジアム その1」
https://bobingreen.com/2024/03/21/8689/
「初めてのサシ飲みでゲームセット – 正月の約束を果たす in ZOZOマリンスタジアム その3」
https://bobingreen.com/2024/04/04/8810/
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