倉敷酔いどれナイト

「アハハハハ!あへあへあへあへー。楽しいぃーおいしいぃーうわぁいー!」

リンくんがついにおかしくなったか?
いやいや、コレがある意味普通なのか。 

おなかいっぱい食べて気持ちよく日本酒を空けて、お財布がすっからかんになったところで、ホテルまでの帰り道、倉敷の街を大笑いしながら歩いた。

コンビニに寄るためにスクランブル交差点をナナメに渡ろうとしたところ、リンママちゃんに抱きつかれて必死に止められるリンくん。

「横断歩道はナナメに渡っちゃダメよ危ないわよ!」

いやぁ、スクランブルだし。ハァ・・・まったく。

そんなじゃれあうニンゲンの母娘ふたりの後ろをトボトボとついていきながら、おれは自分の足取りもちょっとフラリフラーリとしていることに気がついた。

うん、いい夜なんだなぁ。

そう思って、おれは酔いざましにペットボトルの麦茶をグビリと口に含んで、リンくんに手渡した。

“ホテルまでの帰り道、倉敷の街を大笑いしながら歩いた”

うっす、旅グマころすけでっす。
リンくん&リンママちゃん3泊4日の山陰山陽旅にお供してますよ。

旅の2日目は、午前中にシマーネ(島根県)安来の足立美術館を堪能し、昼過ぎに特急やくもに乗り込んだ我々。ひとときの列車旅を満喫して、オカヤーマ(岡山県)は倉敷駅に到着した。

「おおおー!なんか、都会!倉敷、都会だねぇー!」

駅の改札を出ると、ニンゲンがたくさんいて、観光客も多ければ地元のひともいっぱい。駅ビルを抜けるとペデストリアンデッキになっていて、そこはデパートの天満屋に直結している。なんだか都市といった風情だ。

“特急やくもで約2時間。JR倉敷駅に到着!”
“岡山のクマさんたちがお出迎えしてくれた。くまなく・たびにゃんというらしい”
“花時計がすてきなロータリー”

「あ、天満屋。明日倉敷を出る前にデパートでまとめてお土産買って配送できちゃうね。」

「あら、それは良かったわぁ。荷物増えないしね、伯母さん(リンママ姉)にも買いたいし、習い事の先生にも買いたいし・・・。」

「ほうほう。おっけー。それにしてもさ、ママちゃん、この駅前の景色、覚えてるの?」

「いいえー、全然。まったく覚えてない。」

リンくんとおれは、初めての倉敷だけれど、リンママちゃんは20年ほど前に一度だけ来たことがあるという。そのときはトーキョーから新幹線で一直線にやってきたと話していた。そういえば倉敷駅で新幹線乗り場といったものは見かけなかったんだよね。なんだかおかしいなぁ???と思ってあとから調べてみたら、新幹線の停車駅は新倉敷駅という、別の駅だったみたいだ。

「倉敷は街並みがキレイなのよ。美観地区って言ってね・・・それでね、大原美術館が良くてね。」

リンママちゃんは当時の倉敷の印象が良かったらしく、これまでにも時折そのときの旅行の思い出話をすることがあった。
だから今回、リン旅行社は旅程に組み込むことにしたのだった。

お世話になるホテルは、倉敷美観地区と呼ばれている一画にある。駅からは徒歩20分近くとちょっと離れているけれど、ガラガラとスーツケースを引っ張りながら歩いて到着すると、修学旅行の中学生やバスツアーの団体もチェックインの最中で、ロビーはたいそうごった返していた。

荷物を整理して少しだけ休憩をしてから、さっそく美観地区を散歩しに出る。今夜の晩ごはんはホテルの夕食プランはあえて利用せず、倉敷の街中の海鮮居酒屋さんを予約してあるんだ。それまでの間、倉敷川沿いの街並みで写真を撮ったり、雑貨屋さんやお土産物屋さんをのぞきながら美観地区の雰囲気を楽しむことにした。

薄曇りの空のもと、両方を白壁に挟まれた倉敷川は青々としたしだれ柳がふぁさふぁさと垂れている。石造りの橋の上から眺めてみると水面に映るそれはおだやかで優しい。晩秋の日の短さを表すかのように、夕方17時の街はもうのれんをしまってしまった店も多かった。

“倉敷美観地区のメインストリーム、倉敷川”

「ハイ!わたし、倉敷デニムストリート行きたいです!あわよくばデニム買いたい!」

リンくんは普段から岡山デニムを履いているんだけどね、それは近所のディスカウントストアが岡山デニムとコラボした、”なんちゃって”なんだよね。今回、自分のおみやげに、ホンモノの倉敷デニムを買いたいと思っていたみたい。

“やってきました倉敷デニムストリート!”

倉敷デニムストリートとは名の通り、デニム製品を扱ったお店が集まった通りで、ストリートの入口からどんどん奥の方へ進むと複数の店を買い回れるような造りになっている。デニム製品専門店、といってもジーンズやデニムジャケットなどの洋服だけではなく、バッグやポーチ、なんならクマのぬいぐるみやマスコットなんかもある。いわゆるお土産物的なリーズナブルなものも一部あるけれど、かなり本気な素材と造りの本格派がほとんどで、とっても見応えのある売り場だった。

リンくんは、白いステッチとポケットの造りが特徴的なテーパードスタイルのワンウォッシュにひとめぼれしたらしい。サイズ違いをいくつか試着したり、他のメーカーのも履いてみたりした結果、おなかピタピタのギリギリサイズでしかもノーストレッチのやつに決めた。

「やばーい、太れない。でもジーンズってそういうものよね・・・。」

リンくんと店員さんがきゃっきゃきゃっきゃおしゃべりしている間、おれはというと、店の端でぽつーんと座っていたオーバーオールクマさんと話し込んでいたんだ。鼻だけでおれの顔のサイズくらいありそうな、それは図体のデカいクマさんだ。クターっと猫背に座って、お腹を突き出して、なかなかにいい風貌だ。

「あぁ・・・ども、チーバからやってきたころすけです。きみ、さすが倉敷のクマさん、デニム似合うねぇ!」

「・・・」

彼は言葉少ななクマみたいで、おれが一方的に話しかけていたといってもおかしくないかもしれない。デニムにはちゃんと履きジワがあって、それはそれは上手に着こなしてるなぁっていう印象だった。

「うちのニンゲンのリンくん、ココで買い物して楽しいみたいだぞ。アリガトな。しかしこれからメシ食いに行ってさっそくウエスト入らなくなったら面白いんだけどなぁ。な、だろ?」

「・・・」

「なぁ、おれにもオススメのデニムある?」

「・・・」

うーん、どうやら世間話も接客も得意じゃないみたいだ。おれみたいな小柄なクマが着られるサイズはないよ、ってことかもしれないけどな。

“倉敷デニムストリートのオーバーオールクマさんと。ちゃんと履きジワがあってカッコいいな!”

「ころすけ、お待たせー!お会計終わったよー。晩ごはん行こうか。」

「うっす、あ、呼ばれたから、おれ、行くな。おしゃべりに付き合ってくれてアリガトなの。」

「・・・」

リンくんに呼ばれたので、おれはオーバーオールクマさんとバイバイした。最後まで彼の声は聞けなかったけれど、最後、大きく右手を振ってくれた。

ブンブンっ!

暗めのスポットライトのもとで、その振りが残像となっておれの目にこびりついた。オーバーオールクマさん、きみとのひとときは倉敷のいい思い出になったよ。

お買い物に熱中したデニムストリートを後にすると、美観地区はすっかり暗くなり始めていた。街灯が遊歩道をボンヤリと照らし、街はもう夜を迎える準備をしている。

「散策の続きは明日の午前中にするとして、そろそろゴハン行こっか。」

“倉敷の街はもう夜を迎える準備をしている

18時ちょっと前に到着、今宵の晩ごはんは海鮮居酒屋の”浜吉”さん。倉敷に来ると決めてからというもの、かなり入念に下調べして、リンくんが事前に電話で予約をしておいた期待高まるお店だ。

“浜吉さん、平日の18時前なのにカウンター満席の大人気店”

「予約してますリンですー。」

広くない店内のカウンターはすでに満席でビックリ。

「19時にカウンターが空くので、それまではコチラでお願いできますか。」

「はーい?ハイ、おっけーおっけー。」

1時間限定で個室に通されて、その後といちょいつまんだところで、カウンター席へ移動した。
その後の記憶といったら、おいしかったー楽しかったーよく飲んで食べた!、ということだ。あまりにお腹もココロも満たされてサイコーすぎたんだ。

普段おれはそこまで大食漢じゃないんだけれども、ココでは、食べたことのないオカヤーマ特産の品々をとても上手に料理してくれて、何を頼んでもうまかったんだ。すっかり食べすぎたなぁ!

瓶ビールでカンパイからの、さっそく並行して倉敷の地元のお酒”多賀治”をいただく。純米吟醸から始めて、結局、純米大吟醸も飲んでしまう。純米のほうが少し甘めでリンママちゃん好みだったみたいだ。あとから知ったことだけれど、”多賀治”の流通は絞られているらしく、翌日、倉敷駅前の天満屋デパートで買おうとしたら、扱っていなかったんだ。(”多賀治”を造っている十八盛酒造の別の銘柄を買ったので、結果オーライだけど。)

“おビールでカンパーイ!”

「ころすけー、倉敷ナイト、何がおいしかった?」

旅から帰ってきたあとに、リンくんに聞かれた。

「んーっ・・・、悩むなぁ。全部うまかったよな。お刺身の盛り合わせのさわらはコッチじゃめずらしいよね。身が柔らかくておいしかったなー。黄ニラってのも超高級品なんだろ?ま、あれは高級過ぎてぶっちゃけ普通のニラでもいいけどな・・・。」

“美しいお刺身盛り合わせ、岡山特産の高級品黄ニラのおひたし”

「わたしはねー、多分人生初のシャコ!見た目がちょっと・・・で食わず嫌いだったけど、食べてみたらおいしかったなー。しかもオスとメスと、全然サイズが違っておもしろかった。」

「おお、おれもクマ生初のシャコだったぜ。びっくりしたよな!見た目はやっぱりアレっぽいけども。」

“クマ生初のシャコ体験!大きいのがメス、小さいのがオスなんだって”

「カウンター席に移ってからの後半はすでに酔っ払って楽しすぎて、店員さんにオススメされるまま注文してたよね。米烏賊(べいか)の炙ったのとか、タコの唐揚げとか、特産のままかりもね。」

“米烏賊(べいか)の炙りもめずらしい地元のオススメ品だって”

「あー、もうだんだん感覚ぶっ飛んでたよな。メニューに値段書いてないのもあったしね、ホント、リンくん現金足りてよかったぜ。」

「あっは。ホント、倉敷ナイトはやらかしたわー。リンママちゃんもよく食べてたし、いつもより飲んでたよね。」

「ちゃんと利き酒してたもんなー。”多賀治”は買えなくて残念だったけど。」

「ころすけが成人・・・いや、成クマしててよかったよ。アリガトね。」

「おう、酒豪のおっさんグマは、なかなか頼りになるだろ?」

アハッ!いま思い出しても、倉敷酔いどれナイト、楽しかったなー・・・!

(あ。旅日記はまだ続きますよ。次は3日目!お楽しみにねー。)

ころすけ

倉敷美観地区 岡山観光Web
https://www.okayama-kanko.jp/spot/10226

天満屋
https://www.tenmaya.co.jp/

リンくんは“DEEP BLUE”のテーパードジーンズを買ったよ。サイズピタピタ、果たして体型をいつまで維持できるのか?!
倉敷デニムストリート 岡山観光Web
https://www.okayama-kanko.jp/spot/10362
DEEP BLUE
https://dbjeans.com/

倉敷の海鮮居酒屋さん
店員さんにその日のオススメを聞いて、さまざまな特産品を食べて地酒飲んで大満足でした↓↓↓
郷土料理 浜吉 / 岡山県倉敷市
http://www.hamayoshi-kurashiki.jp/

「クマのいる”庭園もまた一幅の絵画である”」
https://bobingreen.com/2023/11/02/6804/

「陰から陽へ バイバイ、シマーネ」
https://bobingreen.com/2023/11/07/6845/

いいね! Like! 0
読み込み中...

Rin(リン)

ぬいぐるみブロガー、Rin(リン)です。 ライオンのボブ家と愉快な仲間たち、そしてニンゲンのケンイツ園長と一緒に、みどりキャンプ場で暮らしています。 ボブ家の日常を、彼らの視点でつづっていきます。

シェアする

2件のフィードバック

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

コメントする

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください