陰から陽へ バイバイ、シマーネ

うっす、旅グマ、ころすけでっす。

シマーネ(島根県)安来にある足立美術館を後にした我々。今宵2泊目のお宿は、ここからちょっとワープしてオカヤーマ(岡山県)倉敷に取ってるんだよ。

美術館からの帰りのシャトルバスに20分ほど揺られると、安来駅前で降ろされた。昨日のうちに切符を買っておいた12:17発の特急やくもまで、あと約20分ほど。どこかお店でランチを食べる余裕はないし、そもそも駅の周りにはコンビニが見当たらない。その代わりに駅舎に観光案内所と地元のお土産物の売店、それから、ありがたいことに、本当にありがたいことに、小ぎれいなカフェが併設されていた。
DELI & KITCHEN halo

“JR安来駅構内のカフェ haloさん”

リンくんがジィっとメニューを眺めていたら、早めのランチを終えたと思われるマダム二人に話しかけられた。きっとこのあと足立美術館へ行くのだろう、リンママちゃんより少しお若いくらいかしら、シニアになってからのお友だち同士の旅行も楽しそうだ。

「ココ、とぉってもおいしかったわよ!オススメするわ!うふふ。うふふ。」

「あ、そうなんですねー!ありがとうございます。」

リンくんが精一杯の社交性を見せて返事をする。マダムたちオススメのおまかせデリプレートは、できたてをお弁当でテイクアウトできるらしい。

「あ、よかったー。持ち帰りもできるみたい。ココでお昼ごはん買ってさ、列車内で食べよっか!」

リンくんがリンママちゃんに話しかけると、リンママちゃんがうなずく。なかなかセンスのいい手作りランチを確保できたことで、ふたりともホッとした表情になった。おまかせデリプレートと、それから大山鶏のサンドイッチをひとつずつテイクアウトで注文してから、出来上がるまで近くのテーブルで一息ついて待つことにした。

我々に続いて、フランスからと思われる4人組のファミリーもそのカフェに席を取った。美術館からのぎゅうぎゅうに詰め込まれていた同じバスの便に乗っていた顔だ。リンくんはフレンチファミリーの真横の席で、スーツケースを膝の上に抱えて、できるだけ動かないように、ぶつかって迷惑をかけないようにと固まっていたんだ。※

おれはというと、小学生くらいの(でもちょっと大人びたように見える)ギャルソン(男の子ね)がお兄ちゃんのスマホを借りてゲームに熱中していたのが印象的で、チラリチラリと見ていた。まさか小さなおっさんグマに見られているとは思っていなかっただろうなぁ。

駅舎の小さなカフェの厨房からはいい匂いが漂っている。
あんなに壮大で優美な美術館を堪能した後に、まるで荷物のように補助席までギチギチに全部使い切って満席輸送されてきたものだから、我々そして彼らも、ちょっと口数が少なくなっていた。

それは多分、お腹が空いているからに違いない、と思い込むことにした。(実のところ無料のシャトルバスだから、多くを望んではいけないことは大人グマのおれなら理解するしね、押し黙っていたさ。)

フゥ、おれってポジティブ。きっとおいしいものを食べたら、笑顔が戻るに違いないよな。

そう思ったら、ぐぅ・・・とひとつお腹が鳴った。

(お待たせしましたー。)

出来上がりを知らせる店員さんの明るい声。そして、お隣のテーブルから響く耳に心地よいフランス語に、心のなかでオホヴォアール、ボンボヤージュ(さようなら、よい旅を)と言って、我々は駅のプラットフォームに入った。

できたてホカホカのデジュネー(昼食)を手に下げて。

おれの知っているフランス語はこれで以上である。

“特急やくも 381系車両”

さて、特急やくもに乗り込んだ我々。ここから今日の目的地倉敷までは2時間10分の道のりである。リンくんが取った指定席は6両編成の先頭車両。平日の昼間、かなりガラガラで、周りに気兼ねをなくランチを楽しむには悪くなかった。

ぷしゅっ!

「シマーネ、バイバーイ!そして、いっただきまーす!」

売店で買った島根の地ビール”ビアへるん”のスタウトの缶を開けましてーの、
さぁ、安来駅のカフェhaloさんのデリプレート&サンドイッチ、いっただっきまーす!

“haloさんのデリプレート&サンドイッチ、それから島根の地ビールビアへるんのスタウト”

「リンくーん!おれ、めちゃハラへったのよ。」

「はいな、どぉぞ。たくさん召し上がれ。わたしはめっちゃノド渇いた。」

ぐびっぐびっ・・・と言いたいところだけれど、普段は飲み慣れない黒ビール、しかもコレは普通の3倍くらいのお値段のするお高級品、というわけで、リンくんはなめるようにちびりちびりとやっておる。

「さぁ、コレは何かしら?」

「ン?どれどれ?わたし、今日の黒板メニュー撮影しておいたよ、ン?きんぴらっぽい・・・”マコモとモロッコ豆のキンピラ”じゃない?」

「あぁらぁー、ちょっと変わってるわねーおいしいわ。いいお味!」

どうやらリンママちゃんの口に合ったようだ。

「女性ウケしそうなヘルシーお弁当だよねー、わたしたちは大好きだけど。」

そう、リンくんとリンママちゃんはほとんど同じ味覚と胃袋を持っているから、リンくんが好きなものはだいたいリンママちゃんも好きなのだ。

「おれ、このコロッケ食べたい!もっぐもっぐ、あー、ホント、うまー!」

おれはかぼちゃコロッケをほお張った。なにせ、おれの名前はころすけだしね、コロッケには目がないんだ。

その他、お野菜メインのデリサラダが少しずつギッチリ盛られていて、ゴハンは雑穀米だ。”黒千石ごはん”と書いてあったけれど、後で調べたら、黒千石(くろせんごく)大豆、という小さな粒の大豆を混ぜ込んで炊いたもののようだ。プチプチもちもちしてゴハンだけでもおいしく食べられた。

“おれ、ころすけだけにコロッケには目がないのよ”
“野菜の味噌汁以外のメニューがギッチリ盛られていたよ”

「うっわ、このサンドイッチ、侮れない!チキンたっぷり、野菜もフレッシュでおいしいー!しかもちょっとトーストしてあるね。」

ぐびっ!

サンドイッチにはおビー(ビール)でしょ、と言わんばかりに、リンくんは大口を開けてかじったあとに、気持ちよさそうに黒い缶を飲み干した。

もっしゃもっしゃむっしゃむっしゃ、キャッキャキャッキャとおしゃべりしながらの車中、時折ズドンッ!と床から突き上げるような揺れがやってくるのはご愛嬌。リンくんいわく、この特急やくも、以前カイシャイン時代にたまに乗っていた特急あずさや特急しなの、よりもさらに揺れが大きいのだという。

「横揺れじゃなくて、上下に揺れるよね、この電車。まぁ、車両の古さの問題もあるかもしれないけれどねー。」

大事な大事なお弁当がテーブルから浮き上がりそうになって、あわてて押さえる。

「ふぅー、こりゃあ山間に入ったらもっと揺れるよ、早く食べ終えちゃお。」

「おれに最後のひとくちくれー!」

おれは、デザート代わりに残しておいた、”さつま芋のクリームチーズくるみ和え”で締めたのだった。

「ごちそうさまでしたー!」

すっかりお腹いっぱいになると、リンママちゃんは揺れに合わせてうとうとを開始した。

リンくんはパソコンを取り出して、この旅日記を書いている。

「リンくーん、ハラいっぱいになってこんな揺れの中で文字見たら、酔うぞ?」

「え?まだ飲めるし、コレくらいじゃ酔わないよ。」

プシュッ!

リンくんはウメ味の缶チューハイを開けた。

「そういう意味じゃないっつーの。」

陰から陽へ バイバイ、シマーネ。

特急やくもは、キラキラと水面が輝く高梁(たかはし)川沿いをぐんぐんと進み、オカヤーマを目指すのだ。

ころすけ

“特急やくも。揺れる揺れる”

テイクアウトの”おまかせデリプレート”と”大山鶏のサンドイッチ”、おいしかったです!
DELI & KITCHEN halo 島根県安来市 JR安来駅構内
https://halo-yasugi.com/
Instagram: @deli_kitchen_halo
https://www.instagram.com/deli_kitchen_halo

島根の地ビールはコチラ!↓↓↓
島根ビール株式会社 松江ビアへるん
http://www.shimane-beer.co.jp/

黒千石大豆について
https://portal.hokuryu.info/kurosengoku/#ksb

特急やくもについて
「車窓で旅する日本列島 vol.17 伯備線」 交通新聞社 トレたび 
https://www.toretabi.jp/travel/vol17/01.html

今回乗った381系車両のやくもは3代目で、来春(2024年春)に新型に変わるんだってー!乗られて良かった!↓↓↓
「エチケット袋を備えたことも 独特の「揺れ」の秘密とは? 特急やくもの半世紀 写真で振り返る(Sデジオリジナル記事)」 山陰中央新報デジタル
https://www.sanin-chuo.co.jp/articles/-/179445

※Rin補足: 足立美術館のシャトルバスについて

手荷物の持ち込みについて、大きな荷物は避けるようにとホームページに注意書きがあったことを後から知りました。今回我々は美術館隣接のお宿に泊まったのでスーツケースを持参して乗り込みましたが、できれば避けるべきだったみたいです、、、すみませんでした!(わたしたちはなんとかひざの上に荷物を乗せて座りましたが、足の長い方や恰幅のよい方だと物理的に無理かと。)

美術館エリアで大きな荷物が不要な場合は、駅のコインロッカーや預かりを利用するか、タクシーなどの別の輸送を利用することをオススメします。
https://www.adachi-museum.or.jp/shuttle_bus

「クマのいる”庭園もまた一幅の絵画である”」
https://bobingreen.com/2023/11/02/6804/

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Rin(リン)

ぬいぐるみブロガー、Rin(リン)です。 ライオンのボブ家と愉快な仲間たち、そしてニンゲンのケンイツ園長と一緒に、みどりキャンプ場で暮らしています。 ボブ家の日常を、彼らの視点でつづっていきます。

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