トンキチ店長に会いに行く その1

「アッぢぃーーー!!!」

上福岡駅のロータリーに降り立つと、9月の残暑の容赦ない照り返しで、おれは思わず大きく叫んでしまった。階段のすぐ下には焼き鳥屋があって、まだ昼前の11時過ぎだというのに、モクモクと串を焼いている様子だ。なるほど、焼き鳥居酒屋とお持ち帰りコーナーが併設してて、鋭意仕込み中ってわけだ。

こんにちわーに!ライオンのボブおです。

“ボブおです。サイターマはふじみ野市、東武東上線上福岡駅に到着!”
“東武東上線”
“「アッぢぃーーー!!!」”

今日はね、ぬいぐるみ界隈に大人気の、あの場所に向かってるんだ。
その名も、“TONKIES Cafe”
ブタのトンキチくんが店長を務める、ぬいぐるみフレンドリーなカフェだ。

サイターマ(埼玉)はおれらが暮らすチーバよりも暑いらしいってことは毎日の天気予報で知ってたけれど、いざ降り立ってみると、その体感はモーレツだ。おれの小麦色の毛並みが、こんがりと褐色に日焼けしちゃうんじゃないかしら、まぁそれもワイルド感増していいのかな?なんて虚ろに思う。

お店の場所は東武東上線の上福岡駅西口から徒歩5分ほどだという。平日キンヨービ、朝9時前に家を出て、今はえっと・・・11時15分。フゥ・・・ここまで、2時間半弱の道のりだった。

灼熱の太陽の熱気と炭火焼の煙に包まれつつ、左に目をやると、そこには遮るものがない広場が広がっている。奥には大きなショッピングモール、見慣れた看板があった。

「おっ!ヤオコーだ!」

ヤオコーは我が家も好きなスーパーで、ちょっといい品揃えとおいしい手作りお惣菜が売りのとこだよな。たしかサイターマに本社があったはず。あーちょっとだけ、中に入って涼みたいなぁ・・・でもなぁ・・・。

そんなことを考えていたら、リンくんがぐんぐん歩みを進めるので、あわててついて行く。

「ほぇー。わたしねぇ、ふじみ野市に来るのは、人生で多分2回目。へ?ほうほう。その名の通り、富士山が見えるらしいよ?ン?あ、この近くの道路から?今も見えるの?いや、わからないけど、とりあえず行ってみよ。」

リンくんが駅前の案内板を見ながら、ボソボソと独り言を言っている。いや、おれらに向かって話しかけてるのかもしれないけれど、回答は求められてない。

“駅前の案内板をしばし眺める”
“「富士山ビュースポット」だって?!”

「ン?お店の方向コッチだってよ?」

おれが言っても聞かず、大通りを歩いていく。

「むぅ、この道路の奥の方に富士山が見えてたらしいけど、いやー、雲かかってるし、わからないね。」

うむ。そのためにただでさえ時間もギリギリで暑いってのに、リンくん、寄り道をしたのだった。

お店の予約は11時半。えっさほいさ!急げ急げ!と来た道を戻っていたら、ふじみんのベンチを見つけた。ふじみんとはふじみ野市のキャラクターだ。

“ふじみんのベンチ発見!”

「ボブお、ふじみんのベンチ座ってお写真撮る?」

おれは聞かれたけれど、いんや、と静かに首を横にふった。だってさ、ベンチの座面はお日さまにめっちゃくちゃに熱されてて、まるで座れるような状況じゃなかったの!

「あぁーそーぉ?でもせっかくだから、ちょっとだけ記念撮影ね、前に立って。ハイ、カシャ。」

んもー、ホラぁ、また道草食ってる。

“座面が熱すぎて無理なので立って記念撮影”

いっそげいっそげ!

そうやっておれらは上福岡駅前をウロウロしつつ、大通りから路地を入って、いい感じにひなびた”大衆スナック委魔神”の看板を横目に、さらに進む。あれ?合ってるよねぇ?なんてスマホとにらめっこするリンくん。もう超絶の汗だくだ。

“渋いねぇ「大衆スナック委魔神」”

目的の場所に到着したときには予約の時間を、5分過ぎていた。

「とーちゃぁぁぁぁぁくっ!」

“とーちゃぁぁぁぁぁくっ!”

全面ガラス張りで、外からでも店内の様子をうかがえる。入口には、日頃SNSで見ていたメニューが貼られていて、それから、あのステキな看板がそっと置かれていた。
作家さん手書きのぬいぐるみさんたちのイラストとあたたかみのある”TONKIES Café”の文字。そこには、こう添えてあった。

“ぬいぐるみと繋がるカフェ”。

“全面ガラス張り、日頃SNSで見ていたメニューがズラリ張り出されている”
“ぬいぐるみのオトモダチいっぱいに囲まれたステキな看板”

おれらがトンキチくんに初めて会ったのは、1年半以上前の、去年の2月のことだった。あのときはトンキチくんがはるばるチーバまで遊びに来てくれたんだった。そのときはまだTONKIES Cafeはオープンする前だ。だけれど、いろんなことをおしゃべりする中で、「いつかカフェを開きたいんだよね」、とトンキチくんが話していたことをよく覚えているよ。
(トンキチくんと以前会ったときのお話はコチラ「十”ぬい”十色のぬい友たち」

「夢、実現したね、トンキチくん。」

おれは扉の前でつぶやいた。
うれしくて飛び上がりたい気持ちと、そして、トンキチくんがお店をオープンしてからというもの遊びに来るのがずいぶん遅くなってしまって申し訳なかったなっていうことと、いろんな感情がないまぜになりながら、意を決して入口の扉をそぉっと引いた。

“意を決して扉をそぉっと引く”

「こんにちわーに!トンキチくぅううううん!」

「いらっしゃいませー!」

1年半+ぶりに会ったトンキチくんは、すっかりトンキチ”店長”になっていた。お店に出るときのユニフォームであるグリーンのキャスケット帽とグリーンの唐草模様のスカーフがとってもお似合いだ。

“1年半+ぶりに会ったトンキチくん。グリーンのキャスケット帽と唐草模様のスカーフがとってもお似合いだ”

ニンゲンたちも当然のことながら久しぶりの再会だ。トンキチくんの主さんでありこの店のオーナーシェフをつとめるサトシくんは、XInstagramで見ている限り多忙を極めているようだけど、元気そうな様子でホッとしたよ。こころなしか表情がやわらかくなった気がするって、あとでコッソリリンくんが言ってたぞ。

「トンキチくん、会いたかったよー。遅ればせながらだけど、TONKIES Cafeの店長就任おめでとう!」

「ありがとでしゅ。ホラ、注文何にしましゅか?」

おっと、商売熱心な様子!何ページもあるメニューをパラパラとめくる。定食から単品、ドリンク、デザートまで、ホント充実していてしかも毎週変わるというのだからびっくりだ。

“「ホラ、注文何にしましゅか?」”

「おれね、メインはコレって決めてきたの。Xとか見てるとみんなコレ食べてるでしょ。ベジのキーマカレーってやつ!」

おれは来る前から決めていた、”無水トマトベース茄子と大豆のキーマカレー”を指さした。

「アッ、ハイボール頼んでいいですかぁ?」

リンくんが、真っ赤な顔して手ぬぐいで汗を拭きながら、横から口をはさんだ。

おれはトンキチ店長に相談する。

「お。じゃぁさぁ、トンキチくん、ハイボールに合うおつまみ、なにかないかな?」

「うん、そうでしゅね・・・、オススメは”大豆ミートの唐揚げ”でしゅ。お酒にぴったりでしゅ。」

「あぁー。うん、それ迷ってた!おれは食べてみたいんだけどさ・・・。うちのリンくん、大豆ミートにあんまりいいイメージ持ってないらしくって、これまで食べてきたものがあんまりおいしく感じなかったらしいんだよね。どーなんだろ?」

「サトシが丁寧にこだわって下味つけて揚げてましゅ。大豆のいやなニオイも感じられないでしゅ。サトシの料理はおいしいんでしゅよ。」

サトシシェフの作る料理に、絶大なる信頼をおいているらしいトンキチ店長。

「うむ、じゃぁわたし、チャレンジしてみる!トンキチ店長、”大豆ミートの唐揚げ”おねがいします。」

「ありがとうございましゅ。では、ハイボールと”大豆ミートの唐揚げ”、それから”無水トマトベース茄子と大豆のキーマカレー”お持ちしましゅ。」

トンキチ店長がオーダーを復唱すると、サトシくんはそれを伝票にメモし早々に厨房に戻っていった。

“ハイボールに合うメニューをトンキチ店長に相談中”

「ところで、トンキチくんさぁ。」

おれは注文を終えると、麦茶をひとくち口に含み、ホォっとひと息ついた。

改めて店内を見回す。
テーブルはニンゲン1名用の席が2つ。4人席が2つ。それから、長テーブルとソファのある広めのぬい撮りスペース。ターコイズブルーの壁紙と赤い革張りのイスのコントラストがとっても特徴的だ。

おれらはぬい撮りスペースの真横のテーブルに座らせてもらった。

今日の我が家のメンバーは総勢7名だ。

・ライオンのボブ三兄弟(妹のボブこ、弟のボブぞ、おれ、ボブお)
・ウサギのすず(鈴之助)
・アザラシのフク(鰒太郎)
・ペンギンの勘九郎
・コペンギンのハンペン

・・・おっと、失礼、ニンゲンのリンくんを忘れてたよ!アハッ!総勢8名だった。

“上段上左から: ボブお、ボブこ、ボブぞ、中段左: フク、中段右: すず、下段: ハンペン(ハンペンの中に勘九郎が潜んでます)”

「トンキチくん、今日のうちのメンバーね。初めましてのコもいるから、どうぞよろしくね。」

「よろしくでしゅ。じゃぁ、うちのメンバーも紹介しましゅ。」

「あっ!モッキーちゃん、コムギちゃん、久しぶりぃ!ふたりは去年も会ったよね。・・・ってあれ、もうひとり増えてるぅ!おれらもライオン三兄弟、ナマケモノもトリオになったんだねぇ。」

「そうでしゅ。ナマケモノの3人めは、ナマオでしゅ。首のネクタイにイニシャルが入ってましゅ。」

「お久しぶりモキ。」

「待ってたムギ。」

「オレはナマオ。モッキーとコムギから、派手なライオンのトモダチがいるって聞いてたぜ。よろしくな!」

“左から、ナマオくん、モッキーちゃん、コムギちゃん”

「それから、れいんぶー。我が家には3人ブタがいましゅ。いちばん先輩のブーたんはおうちにいるんでしゅ。」

「いらっしゃいませでござる。今日はいっぱい遊ぼうでござる。」

パステル調のレインボーカラーのれいんぶーは、ハットがとってもお似合い。

“れいんぶーは、ハットがとってもお似合い”

そして、お隣りにいるのは黒いフカフカのクマちゃんだ。

「んで、こちらはオレオたんでしゅ。オレオたんはニセツムリちゃんといつも一緒なんでしゅよ。」

「まるでうちのすずフクみたいだなぁ!仲良しなんだね。」

「そうなんでしゅ。もの静かでしゅけど、怒ってるわけではないでしゅよ。」

“「オレオたんはものしずかだけど、怒ってるわけではないでしゅ」”

おれらがぬい撮りスペースのほうを向いて自己紹介を続けていたら、テーブルの上で、トンキチくんの真横にいる茶色のフカフカのクマちゃんが大はしゃぎしていた。

「ガぶぅガぶぅ!ガぶぅ!!!」

「ショコラたんでしゅ。赤ちゃんグマでしゅ。紹介が最後になって怒ってるんでしゅね。あ、いや、んーっと・・・ライオンのみなさんの派手なたてがみを見て興奮してるみたいでもありましゅ。」

「アハッ!そっかー、こんなライオン見たことないよねぇ!ショコラたん、よろしくね。」

そう言うとショコラたんは満面の笑みで大きくうなずいてくれた。

「ガぶぅっ!」

“「ガぶぅっ!」クマ赤ちゃんのショコラたん。派手なライオンたちを見て大はしゃぎ!”

すると、おれらの紹介タイムが終わるのを見計らったかのように、サトシくんが料理を運んできてくれた。

「お待たせしましたー。ハイボールと、”大豆ミートの唐揚げ”です。」

「わっわっ!揚げたてー!おいしそーう!」

クンクン
クンクン

おれの鼻を刺激する、華やかで香ばしい香りが、目の前の湯気とともにフワァっと広がった。

「よぉし、食べよう!いっただっきまーす!」

“おれらの紹介タイムが終わるのを見計らったかのように、サトシくんが料理を運んできてくれた”
“クンクン・・・!見よ!これが大豆ミートの唐揚げ!すっごく香ばしいいい香り”
“ハイボールでカンパーイ!いっただっきまーす!”

ボブ家一同、晴れて、トンキチ店長のTONKIES Cafe、デビューでーす!

その2 に続く)

ボブお

“えっへへ!カンパーイ!”

ぬいぐるみと繋がるカフェ “TONKIES Cafe”
埼玉県ふじみ野市 / 東武東上線 上福岡駅西口から徒歩5分
公式X: @TonkichiCafe https://x.com/TonkichiCafe
公式Instagram: @tonkichicafe https://www.instagram.com/tonkichicafe/

トンキチ店長に会いに行くお話の続きはコチラ

▼その2はコチラ

「トンキチ店長に会いに行く その2」
https://bobingreen.com/2024/09/28/10578/

▼その3はコチラ

「トンキチ店長に会いに行く その3」
https://bobingreen.com/2024/10/01/10648/

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Rin(リン)

ぬいぐるみブロガー、Rin(リン)です。 ライオンのボブ家と愉快な仲間たち、そしてニンゲンのケンイツ園長と一緒に、みどりキャンプ場で暮らしています。 ボブ家の日常を、彼らの視点でつづっていきます。

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