三度目の正直のハシビロコウさん

(うわぁー!動いてるぅ!)

(えーっ!おさかな食べてるよー!)

(ねぇ!飛んだ!飛んだ!)

柵のまわりに集まるニンゲンたちが、コーフンぎみにレンズを向ける。

ちびっこを抱っこしたファミリー、デート中と思わしきカップル、大きなリュックを背負って大砲みたいなレンズを向けるカメラマン。
その人だかりに混じって、目の前でその光景を一緒に見たんだ。

こんにちわーに!
ウサギのすずこと鈴之助です。

今日はね、ついに・・・ついに・・・ついにー!ハシビロコウさんを見にやってきたの。ココは、チーバ県はチーバ市にある、千葉市動物公園。

“千葉市動物公園に来たよー”

すずね、実は三度目の正直ってやつで、今日、ようやく、ハシビロコウさんに会うことができたの。

一度目

一度目は、去年のGW前のこと。
すずが春先に鳥さん観察にハマりはじめてまだ数ヶ月と間もない頃、ケンイツエンチョーがある提案をしてくれたんだ。

「なぁ、すずー、掛川花鳥園って行ってみたくない?ハシビロコウっていう、珍しい鳥さんがいるんだって。でっかくて動かないんだって。」

「エーッ!行きたい!行きたい!」

目を輝かせたすずを見て、ケンイツエンチョーは、できるだけGW中の渋滞を回避しつつチーバの我が家からシズオーカの掛川まで車中泊しながら旅行するプランを考えてくれた。

それなのに、それなのに。
直前になって、却下になったんだ。

理由はね、リンくんが怖がったから。

「あのね、わたし、鳥さんは好きだし動物を見るのはとっても好きなんだけど・・・、実は間近に来られたり、直接触ったりするのはニガテなの。あ、触ったあとにすぐ手を洗ったりできれば問題はないんだけどね。」

掛川花鳥園は鳥さんたちが自由に飛び回れるようになっているエリアがあって、ニンゲンにとっても慣れてる鳥さんたちだとアタマや肩や手なんかにのってくることもあるという話だった。むしろそれが魅力で人気の園ではあるのだけれど、調べれば調べるほどリンくんはバビって(ビビって)しまったらしいの。

「それからね、ニンゲンはいいとしても、むしろ、オハナ(ぬい)のみんなはダメだよね。一緒に花鳥園入ってさ、万が一鳥さんに連れて行かれちゃったり、うこ💩とかされたらもうショックで耐えられないもん。」

わざわざリンくんはすずたちに危険が及ぶ懸念を引き合いに出して、いかに掛川花鳥園が我が家に向いていないか、ということを熱弁するのだった。

すずはハシビロコウさんに会うのをとっても楽しみにしていたのに、結局そんなこんなでGWは予定変更をして、別の場所へお泊まりドライブをしに行くことになったのだった。

二度目

そして、二度目。
それは年の瀬に行った名古屋でのできごとだった。

「さぁーみんなー!明日はどこを観光しよっかなぁー?」

名古屋のホテルに到着したリンくん、スマホで周辺の地図を見ている。ケンイツエンチョーの出張にくっついてきた次第だ。昼間、大阪でオシゴトを終えたのちに新幹線でばびゅんと名古屋のホテルに合流してきたケンイツエンチョーが、着替えながらひとこと。

「なぁなぁ、すずー。東山動物園にハシビロコウさんいるらしいぜ?」

「えー!行く!行く!リンくん、動物園行こうよ!」

「ほうほう。じゃあ、明日は動物園にしようか。」

そんなわけで翌日の朝。
栄駅で名城線沿線の客先へ行くというオシゴトモードのケンイツエンチョーと別れ、リンくんと一緒に黄色い東山線に乗り込んだ。

「ハッシビッロコーさん!ついに会えるんだぁーうわぁいうわぁい!」

イチニチ中混雑する東山線の、女性専用車両でガタゴトと揺られ、着いたのは東山公園駅。入口でチケットを買って、広大な敷地を有する園内ガイドのパンフレットをもらうと、真っ先に調べたのはハシビロコウさんの場所だ。

「えーっと、えーっと?ハシビロコウさんなんて超人気者でしょ。載ってないわけないよねぇ・・・。」

リンくんが、あれ、おかしいなぁとつぶやいている。

「地図見てみよう。」

その日の名古屋の最高気温は5℃、北風が吹きすさぶ中、園内地図の看板の前で立ちすくむリンくん。手元では一生懸命スマホで何かを検索している。

「リンくん、どした?」

「・・・すず・・・。ハシビロコウ、東山動物園にはいなかった・・・。」

「エ?」

「あのね。だからね、ハシビロコウさんには今日会えない。」

すずね、そのひとことを聞いたとき、アタマを地面に打ち付けられたかのような大ショックを受けたんだ。ただでさえおっきくないウサギさんの小さなアタマ、なんだか痛くなってきた気がするの。

「うぅぅぅ・・・!リンくんのうそつきー!ちゃんと調べてこないからでしょーぉ!」

「あぁ。。。うぅ・・・すず、まじでゴメン。楽しみにしてたよね?」

「んもー!ケンイツエンチョーに言いつけてやるぅ!」

その場ですず、ケンイツエンチョーにメールした。


“エンチョぉー、おつかれさまなの。
聞いて、聞いて。リンくんウソつきなの。ハシビロコウ、東山動物園にはいないの。
んもー!”

すず

そしたら、ソッコー返事が返ってきた。

“えー、すずゴメンよー!
東山動物園にハシビロコウいるって言ったのエンチョーだー!
ゴメンゴメン!やっぱり掛川花鳥園かなー。”

エンチョ

“エンチョーぉっ
あはっ!そーだっけ?エンチョーは悪くないよ。リンくんが調べなかったんだもん。
あ、すずね、ワライカワセミさん見たの。あと、ペリカンさん、コンドルさん。おっきーの!カッコよかったぁ!”

すず

そう。
結局、ケンイツエンチョーとリンくんの思い込みとテキトーさにホンロー(翻弄)されて、いるわけもない東山動物園でハシビロコウさんを探して空振りしてしまったのだった。
ま、でもその日はほかの鳥さんたちやコアラさんを見て、さらに東山タワーにのぼって、とっても楽しんだんだけどね。

三度目の正直

前置きが長くなっちゃったね。
それでね、それでね。今日が三度目の正直ってわけなの。

いま、すずの目の前に、ハシビロコウさんがいるよ。

決してさほど広くはない柵越し、キッと鋭い眼光と曲線を描く大きなくちばし、そして、ファサファサっとしたモヒカンアタマの毛。背中の羽根は一枚一枚が大きくて、丸みを帯びているのがよく見えるの。

“すずの目の前に、ハシビロコウさんがいるよ”
“キッと鋭い眼光と曲線を描く大きなくちばし”
“ファサファサっとしたモヒカンアタマの毛。冠羽というよ”
“背中の羽根は一枚一枚が大きくて、丸みを帯びているよ”
“くちばしの先はぐっと内側に曲がっていてちょっと鋭いね”
“ジィーっ”

そして、ハシビロコウさんといえば、動かないことで有名なはずなんだけれどね。

このコ、動く!動く!

まばたきくらいはするよね、とは思っていたけれど、実際にはアタマを左右上下に動かすし、羽根をばたつかせてオリのなかを飛ぶし、あくびはするし、えさ場へ行ってはおさかなを食べるし、お客さんを喜ばせるサービス精神旺盛なハシビロコウさんだったんだ。

(”じっと♂
来園日: 2005年7月22日
性格: 何事にも動じない。食いしん坊で、飼育員が魚の準備をしていると早く食べたいオーラを出して見つめてくる。”)

「へぇ、じっとくんかぁ・・・!全然じっとしてないけどね!アハッ!」

リンくんはひたすらカメラを向けて、じっとくんとすずのショットをいっぱい撮ってくれている。

“大あくび?大きくくちばしを開けてくれたじっとくん”
“おわぁっ飛んだよ!”
“大きな羽根をばたつかせているの”
“おさかな大好きハシビロコウさん、丸呑みするんだって”

「こりゃぁ、超サービスカット満載だな!すずちゃーん、来てくれてありがとう!って歓迎してくれてるんじゃないの?」

横で眺めていたケンイツエンチョーも驚いている。

何よりも、普段からこの千葉市動物園に遊びに来ていると思わしきファミリーたちが、「カッコいい」、「今日はすごい」、「外を歩いてる」だの、「おさかな食べてるところ初めて見た」、「飛んだ飛んだ」とキャァキャァわぁわぁしてるんだ。だから、こんなに動いているハシビロコウさんを見られるなんて、きっととってもラッキーなことなんだろうって思うんだよね。

その瞬間。

ピシューッ!!!

白いものが、じっとくんのおしりのあたりから流れ出た。

(あ!うんこ💩した!)

どこかのファミリーのお父さんが、ちびっこに教える声がする。

「うふふ、うふふ。うこ💩したねーぇ!アハッ!」

「したねぇ!」

リンくんと顔を見合わせて笑ったつもりが、やっぱりリンくんはびっくりしたらしい。

「はぁ・・・やっぱり、掛川花鳥園じゃなくて、良かったかも。すずにかからなくて良かった。」

「ダイジョブ、すずにはうこ💩かかってないよ。ニンゲンだってどうぶつでしょ。うこするでしょ。すずだって、立派なうこするし。」

「いや、そりゃぁニンゲンはモリモリするけどさ。すずはウサギさんだけどぬいだからしないでしょ?」

「すずはね、えーっとね、キューリ色のうこするもん。」

「えー。すず、いっつも口ではそういうけど、わたし、すずのうこ見たことないよ。」

「すずのうこはキューリ色のキューリ味だから、すぐ食べちゃうの。だから見えないんだよ。」

あはははははっ!
あはははははっ!

ドヨービの昼下がり。リンくんといつもみたいにたわいもない、しかも上品とはいえない話をして、大笑いした。

動かないはずのハシビロコウさんが活発に動いてる姿に出会って、すず、とってもとってもとぉぉぉぉぉっっっっっても、楽しかったんだ!

ハシビロコウさんにバイバイして、動物園の出口へ向かう帰り道のこと。

リンくんは”森のおみせやさん”という売店のなかに消えていったかと思ったら、しばらくすると、両手を後ろに隠して出てきた。

(バッサバッサ)

「あれ?大きな羽根の羽ばたく音がするよ」

(やぁ!)

リンくんが右手を前に出した。その手には、小さな、すずよりもちょっと小さいくらいのハシビロコウさんが抱っこされていた。動物園でオハナ(ぬい)をお迎えするだなんて、知る限り我が家にはない経験なんだ。

「ハシビロコウさん、うちに来るって。」

「うあぁぁぁぁい!ハシビロコウさん、オハナ(家族)になるの!うれしい!すず、うれしい!」

“ハシビロコウさん、オハナ(家族)になるの!”

すずがきゃっきゃっきゃっきゃ喜んでいると、ケンイツエンチョーの腕に、ピトッとハシビロコウさんがくっついた。

(エンチョー?)

「おぉ。おぉ。おれはエンチョー。えっと、千葉市動物園のエンチョーじゃないぞ、ボブ家のオハナ学園のエンチョーだよ。これから、よろしくなー!」

“ケンイツエンチョーの腕にピトッとくっついたハシビロコウさん”

ようやく出会えたハシビロコウさん。歩いたり飛んだり食べたり排泄したりといった(どうやら貴重な)活発な姿を見せてくれた、じっとくん。

それからね、ハシビロコウさんが、我が家のオハナ(家族)の仲間入りもしたの。
鳥さんが増えてうれしいなぁ。これからゆっくりお名前考えて、仲良く暮らしていくんだよ。

すず、ハシビロコウさん、大好きになっちゃったよ!

三度目の正直は、ホンモノだった!
アリガトぉ!アリガトぉ!もいっちょ、アリガトぉ!

すず(鈴之助)

※Rin補足
千葉市動物公園にはほかにもたくさんのどうぶつがいます。お写真撮れたみなさんを紹介するね!

2本足で立つことで有名なレッサーパンダの風太くんは、まだまだご健在!元気に歩き回っていたよ。

“レッサーパンダの風太くん。2003年生まれの21歳だって”
“立方体のごとく四角くひざをかかえていた、フクロテナガザルさん”

おっと!勘九郎のオトモダチのピッタくん @PittaOmnomnom のご親戚を発見!(パタスザル)

“オトモダチのピッタくんのご親戚、パタスザルさん”

「ピッタくんからのお届けもの」
https://bobingreen.com/2022/07/25/2333/

“愛らしいチーターさん、やっぱりネコ科!”
“ヒョイッと立ってくれたミーアキャットさん”
“仲良し仲良しケープペンギンさん”
“スラッっとした立ち姿がカッコいい、ヘビクイワシさん”

「すずちゃんの野鳥にびっくりでSHOW – 第10回 鳥さんのお祭りジャパンバードフェスティバル」
https://bobingreen.com/2023/11/08/6870/

千葉市動物公園 公式ホームページ
https://www.city.chiba.jp/zoo/

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Rin(リン)

ぬいぐるみブロガー、Rin(リン)です。 ライオンのボブ家と愉快な仲間たち、そしてニンゲンのケンイツ園長と一緒に、みどりキャンプ場で暮らしています。 ボブ家の日常を、彼らの視点でつづっていきます。

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