ロケハン隊長ボブぞ、春の朝

「おで!ロケハン行ってきまっす!!!」

ライオンのボブぞです。

春の嵐とはよく言ったもので。
昨晩の夜中から明け方にかけて、窓の外では、ガタガタびうびうと、ものすごい轟音が鳴り響いていた。おではモーフを鼻先まで引っ張り上げて耐えていたけれど、気が気じゃなかった。

(桜、散っちゃったら・・・どうしよぉぉぉぉ!ドキドキドキドキブルブルブルブル・・・)

今週末、みんなでお花見するって約束したのに。
おでのコビンズ(子分)の、すずとフクは、ソメイヨシノの満開を見たことがないというから。

ふたりとも、お花見ってナァニー?それってうまいのー?と、無邪気に笑っていたから。

チーバの我が家の近くのソメイヨシノたちは、数日前はまだ五分咲きにもなっていなかったけれど、おそらくあっという間にそのつぼみを開き始めているだろう。もしも、彼らが満開になる前に、志半ばで、この嵐のいたずらで散ってしまっていたら、とても悲しいから。
おでは、コビンズを悲しませたくない。さみしい思いをさせたくない。一緒に美しい景色を見て、楽しく笑い合いたい。

嵐の音を聞きながらそんな心配をしているうちに、ウトウトしていたみたい。
朝、目が覚めると、隣で寝ているはずのリンくんは、もうおフトンにはいなかった。

(あ、もうリンくん起きたんだ・・・。そっか、今日は燃えるゴミの日だから、、、って・・・あ!)

恐ろしいあの轟音は、聞こえない。
クルマが通る路面の音も乾いた音がするし、ウグイスたちはホーホケホケホケと鳴いている。

(雨、やんでる!風も、やんでる!おで、起きなくちゃ!!!)

飛び起きると、リンくんがちょうどゴミをまとめているところだった。

「リンくん、おはーに!おでね、今からロケハン行ってくっから!!!」

「えー?ボブぞ、おはーに。どした、どした?盛り上がってるね?」

「ウンっ!だってさ、だってさ。昨日の嵐、すごかったじゃん?桜、ちゃんと残ってるか、見てこなくっちゃ。今週末、みんなでお花見するって約束したじゃん!」

「あーーー・・・。そうだねぇ、すごい風だったね。いまはね、雨やんでるよ。なんならちょっと青空見えてきた。」

「でしょ、でしょ。おで、ちょっと裏のソメイヨシノ、見に行ってくる!」

「ひとりで行くの?ニーちゃんやネーちゃんや、すずやフクはいいの?」

「おで、ロケハン隊長だから!これはね、ロケハンなんだよ。ロケェションハンティング、下見ってやつさぁ!フハッ!!!」

「はいはいな。わかったよ。じゃあ、リンくんと一緒に行こ。ボブぞひとりで出かけちゃ、ダメってケンイツエンチョーに言われてるでしょ?まだ朝とはいえ、ライオンさらいにあわないか心配だし、ちょうどゴミ出しに行くしさ。ね?わたしも連れてってよ。」

「しょーぉがないなぁー!40秒で支度しなっ!」

「はいはい。どこでおぼえたんだか・・・。」

うむ、リンくんが過去片手では数え切れぬほど観てたし、なんならしつこくセリフをそらんじていたから、覚えちゃっただけだよ。
ま、おでは別にそこまでせっかちじゃないから、もうちょっと待てるけどね。

リンくんを待つ間、おではカメラの動作チェックをする。
つい先日ケンイツエンチョーに買ってもらった、ソニーのコンパクトデジカメ、名前はソニおだ。手元にやってきてからまだ1ヶ月にも満たないが、毎日のようにパッシャパシャと撮りまくっているので、すでに通算撮影枚数はゆうに1,000枚を超えている。

(充電オッケー、カード残容量オッケー。オッケー、オッケー!今日も元気にさー行こう!)

おでが首からカメラを下げると、ケンイツエンチョーがやってきた。

「なんだなんだ?オレも連れてってよ。シゴト前だからそんな長居はできないけどさ、ほら、コンビニ寄って飲み物買ってから、ささっと桜、チェックしに行こうぜ。」

「おーまたせー!って、あれ、エンチョーも行く?」

リンくんを待っていたら、おまけにケンイツエンチョーもついてきた。なんやかんやいって、このニンゲンふたりはふたりでひとつだ。ケンイツエンチョーはコンビニで買い物してくれるというから、おでは喜んで賛成した。

「わーいわーい!じゃ、いってきまーす!」

まだソファでうとうとしてる、ニーちゃんやネーちゃん、オハナ(家族)のみんなにあいさつをして、玄関を飛び出した。

おでは、お気に入りのカメラ、ソニおを首に下げて。
リンくんは、燃えるゴミの袋を手に持って。
ケンイツエンチョーはおケツのポケットに小銭を持って。

平日の朝9時すぎの公園、人はまばらだった。
ランニングをする人、ワンちゃんのお散歩をする人、ベンチに座る老夫婦。でもみんな手にスマホを持って、頭上を見上げている。

「わぁ。満開じゃん!!!」

おでが声を出す前に、リンくんのはしゃぐ声が聞こえた。

地面にはポツポツとうすピンク色の花びらも見えたし、細い枝はアッチコッチに落ちていた。花の房ごと地面に落ちてしまっているものもいた。

でも、美しく力強く花をめいっぱいに咲かせるソメイヨシノの木々が、おでの目の前に立っていた。

“地面には花びらも小枝も落ちていたけれど、しっかり咲いていたよ”

「桜、散ってなかった!むしろ、あとちょっとで満開!なんとか、昨晩の風に耐えたんだねぇー。」

「ボブぞ、良かったねぇ!イヨォッ、ロケハン隊長!やりますな。オハナみんなのために自らチェックしに来るだなんて、けなげだねぇ、やさしいねぇ。オハナ思いだねぇ。」

「でへへへへっ。」

“あとちょっとで満開!”

リンくんに持ち上げられて、おではすっかりごきげんだ。

ロケハンは大成功!
さぁ、週末、みんなでお花見するのが楽しみだぁ!

コビンズ、喜んでくれるかな?

わくわく!ドキドキ!

ボブぞ

“おでのロケハン大成功!”

「40秒で支度しな」

スタジオジブリ 宮崎駿 監督 『天空の城ラピュタ』

「新しい相棒、ソニおがやってきた」
https://bobingreen.com/2023/03/06/4059/

※2022年のお花見さんぽはこちら↓↓↓
「ライオンの早朝お花見さんぽ」
https://bobingreen.com/2022/04/01/1751/

「桜もちの木」
https://bobingreen.com/2022/04/07/1777/

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Rin(リン)

ぬいぐるみブロガー、Rin(リン)です。 ライオンのボブ家と愉快な仲間たち、そしてニンゲンのケンイツ園長と一緒に、みどりキャンプ場で暮らしています。 ボブ家の日常を、彼らの視点でつづっていきます。

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