すずフクのお花見納め
「すずちゃーん?空からはらはらと舞ってくるコレは、なぁに?雨なの?雪なの?それともおいしいものかな?」
「アハッ!フクぅ、すずも初めて見る景色だよ。桜の枝から降ってきてるように見えるよ。食べものじゃない気がするなーぁ?アハッ。」
・・・クンクン?
わたしのお耳の色みたいな(あ、”ウサギもどき”のことです)うっすらとしたピンク色のそれは、美しく風に踊り、小川の水面や遊歩道の草花の上に、ふうわりと降り立っていく。
一枚、また一枚、それからもう一枚、数え切れないほどの踊り子たちが、楽しげにはかなげに、わたしたちの目の前を通っていった。
アザラシのフク(鰒太郎)です。
フクね、この3週間くらいの間に、いろんなところで、たっくさんの桜の花を見たんだよ。
早咲きの河津桜の並木が続く、八千代新川の千本桜に始まって、
水戸の偕楽園では、遅咲きの梅と早咲きの桜の共演も見た。
それから、ボブぞオヤビン(親分)が見つけてきてくれた近所のお花見スポットでは、嵐の後に頑張って咲き続ける花を眺めながら、シートを広げてみんなでおにぎりを食べた。
それから、「桜に染まるまち、佐倉」におさんぽに行って、ボブぞオヤビンによる撮影会にも参加したり、桜色のポストを見たりもした。
毎週末、天気予報とにらめっこして、おでまめ(おでかけ)に連れて行ってもらっては、桜のある春の景色をあちらこちらで楽しんできたんだよ。
「もう、いよいよ今年の桜も終わりだぁねー。今年はなんだかたくさん楽しませてもらった気がするね。ラスト海老川、一緒に来られて良かった!」
リンくんがケンイツエンチョーに話しかける声が聞こえる。
「そぉだなぁー!いろんな所、見に行ったもんなぁ。」
「そうそう、それもこれも、すずフクの初めての春、初めてのお花見だから、いっぱい見せてあげたかったんだよね。」
「おーい、すず。おーい、フク。お花見、楽しんでるか?」
エンチョーに話しかけられたので、わたしはぴょこと耳を立てて返事をした。
「えへへえへへ。フク、桜、好き!お花見、好き!すずちゃんと一緒!」
ぷくぷくぷくぷく!
わたしがそう答えると、隣で桜のドームを見上げていたすずちゃんが、ジィっとこちらを向いて笑いかけてくれた。
「うんっ!すずもフクと一緒!すずも、桜、好き!お花見、好き!」
パタパタパタパタ!
ぷくぷくぷくぷく!
そう。そんなわけで、わたしたちがお花見納めとしてやってきたのは、フナバーシは海老川という小川沿いの桜並木だ。地元ではジョギングロードとしても有名で、この季節はいい匂いをただよわせる屋台が立ち並ぶ、ちょっとしたお花見スポットなのだそうだ。
リンくんは、去年ボブぞオヤビンとここに来て、あまりのキレイさに感動したんだって、聞いた。
「ふふ。ここに、みんなで一緒に、来たかったの。さ、すず、フク、おいで。」
リンくんはうれしそうに笑うと、桜の木と木との間の川べりに腰を下ろして、すずちゃんとわたしとをひざの上にのせた。
わたしは、リンくんにギュぅと抱っこされて、川に落ちないように注意しながら身を乗り出す。
「ほうらっ!見てごらん?この角度で見ると、圧巻でしょぉ?」
「ふわぁぁぁぁぁっ!桜の大舞踏団!!!」
言うなれば、アリーナ席。もしくは、砂かぶり席。
桜の花びらたちが、最後の最後まで美しくありたいと指先つま先までめいっぱいに神経をとがらせながら、わたしたちを楽しませてくれようと踊りまわっていた。
くるくるくる・・・
くるくるくる・・・
風がそよぐと、それに応じるかのように息つぎをして、もうひとつ回転する。
ふぅわり、くるる
ふぅわり、くるる
くるくるくる くるくるくる
くるくるくる くるくるくる
「すずも、踊るっ!パタパタパター!」
「フクもー!踊るっ!ぷくぷくぷくー!」
わたしは、生まれて初めての桜のダンスを目の前にしてはしゃぎまわって、そして、とてもあたたかい気持ちになった。
「ね、ね。すずちゃん。フク、すずちゃんと一緒にいるよ。」
「アハッ!フク、すずも、フクと一緒にいるよ。」
なかよし、なかよし。
なかよし、なかよし。
わたしはすずちゃんと、ぴっとしぴっとし両手を合わせて、いつものなかよしのポーズをした。
ゴツゴツとした桜の枝からは、うす緑色の小さな葉っぱが、自分の出番はまだかな?と、顔を半分出していた。
「葉っぱさん、最後の最後まで、美しく舞う花びらさんたちを、ちゃんと見届けるから、もうちょっとだけ待っててね。」
すずフク、初めての春のお花見納め。これにて幕引きです。
「来年もめいっぱい桜のお花見、楽しもうね!みんなで、なかよくね。」
・・・ところで、花びらっておいしいのかなーぁ?結局、誰も答えを教えてくれなかったなぁー・・・!
ペロリ・・・(???・・・味がしない・・・)
ウフフ。
フク(鰒太郎)
海老川ジョギングロード(千葉県船橋市) / 船橋市観光協会公式ホームページ
https://funakan.or.jp/tourism/853/
「千代に八千代に千本桜」
https://bobingreen.com/2023/03/14/4166/
「梅の残り香、桜の呼び声」
https://bobingreen.com/2023/03/23/4271/
「ロケハン隊長ボブぞ、春の朝」
https://bobingreen.com/2023/03/24/4298/
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