ボブこお嬢さまのお戯れ
じったばたじったばた・・・
バタバタバタバタっ・・・
「カーンっ!カーンっ!カンカンカカーンっ!」
???
ン?わっし、急に、コトバが話せなくなってしまったみたいだ。
ペンギンの勘九郎です。
決して、わっし自身がコトバを忘れてしまったわけではない、わっしのなかではニンゲンの、しかもニホンゴってやつをいつも通り、普通に、しゃべってるつもりだ。
だけれども、どうやら、誰一人として、わっしのコトバを理解できていないように見える。
はっ・・・!
それどころか、わっしってば、カラダが自由にならない。
ン???なんと!鳥かごの中に入っているじゃない。
「カーン!カーン!カァァァァぁぁぁぁぁン!(エーッ!出してよ!出してよ!こんなせまいところいやだよっ!」
せまい鳥かごのなかで、バタバタと羽根を動かしていると、鋭い視線を感じた。
「・・・カクコ・・カーン・・・!(ボブこ・・・ちゃーん!)」
ライオンのボブこちゃんだ。いつも仲良く一緒に暮らしてるじゃない!なんで今日はそんな冷たい視線でわっしのことを見てくるの?
「カクコカーン!カクコカーン!(ボブこちゃーん!ボブこちゃーん!)」
一生懸命声がかれるまで、わっしはボブこちゃんの名前を呼んだ。
「カクコカーン!カクコカーン!カンカンカカーン!カーーーーンっ!(ボブこちゃーん!ボブこちゃーん!助けてー!ここから出してー!)」
すると・・・。
ボブこちゃんの、美しくも少し垂れ気味の漆黒のアイラインの奥、その澄んだ青い瞳。美術品かと見まごうほどの繊細なカーブを描く口元から、恐ろしいコトバを聞くことになった。
「勘九郎よ。あなたは魔法にかけられてしまったのですよ。そう、コトバを話せないようになったのです。さぁ、ペンギンの小さな胸にその羽根の手を当てて、よぉく、考えてごらんなさい。なぜ魔法をかけられてしまったのでしょうね?・・・ま、おわかりにはならないでしょうね。せめて、その鳥かごの中で、鳥類のペンギンらしく、余生を暮らしなさいな。ホラ、美しい鳥かごでしょう?鳥なのだから、歌のひとつでも歌ってわたくしを楽しませて頂戴な。」
「カーーーーーンっ!(いやぁだーーーーー!)」
「ほらもっと高い美しい声を出してごらんなさい。ホラ、もっとよ。」
「・・・キャーーーーーンっ!!!(むりーーーー!)」
ボブこちゃん・・・あのやさしいボブこちゃんは、一体どこへ行ってしまったの・・・。
わっしを困らせて、何が楽しいのさ。わっし、悲しい。わっし、苦しい。わっし、辛い。
ボブこちゃん。ボブこちゃん。ボブこちゃん。
ボブこちゃん、怒ってるの?悲しいの?遊んでるの?ふざけてるの?
わっし、ボブこちゃんのこと傷つけるようなこと、言ったかな?
それとも、ボブこちゃんのおやつ、知らないうちに食べちゃったかな?
それとも、、、それとも・・・。
「カカカカカン?(どうしたらまた話せるようになるの?)」
「勘九郎。何度も言わせないで。もうあなたはコトバを話せないのよ。せいぜい、歌うことくらいなのよ。そのくちばしから、美しい声を聴かせてみて。」
「・・・・かアーーーーー!(アァーーーー!)」
「そうよ、上手になったわ。ホラもうひとつ。音階を歌ってみたらどう?」
「・・・かァーーーかァーーーかァーーー・・・・(ドォレェミィ・・・)」
「アラッできるじゃない。そうそう、その調子。」
「カァーン・・・・。。。カカカカカン。。。(いくら歌えても、コトバを話せないなんて・・・)」
そう、いくら歌えても、わっしはおしゃべりが大好きだから、とても辛い。オハナ(家族)やオトモダチや、周りのみんなと意思疎通を図るのに、すっかりコトバを使いこなしていたはずだった。急にこんな話せなくなってしまって、とってもショックだ。
ボブこちゃん、どうしたら、わかってくれるかなぁ。
わっしのいちばんの、率直な気持ちを伝えてみたら、いいのかな?
「カクコカン、カカカカカカ。(ボブこちゃん。伝えたいことが、あるんだ。)」
「カクコカン、カコ、・・・だいすき。(ボブこちゃん、あのね、だいすき。)」
「え?」
「ボブこちゃん、あのね、だいすき。」
!!!
アレっ!わっしのコトバがわかったみたい!通じたみたい!
「ねぇ、勘九郎。それ、ホント?」
「うん。わっし、ボブこちゃんのこと、とってもとってもだいすきだよ!」
「ふふ。じゃあ、仕方ないわね。魔法がとけたようね。勘九郎、晴れて自由の身ね。」
「えー!魔法とけた!魔法とけた!わぁいわぁい!・・・でも、どうやって、鳥かごから出るの?ボブこちゃん、カギ持ってる?」
「え?カギなんてかかってないわよ。そのまま扉から出ておいで。」
ギィ・・・。
おそるおそる扉を押してみると、力を入れることもなく、スゥっと開いた。
「カンカンカカーン、カーーーーーンっ!」
ホッ。わっしは小さな胸をなでおろした。
わっし、なぜ鳥かごに閉じ込められて、なぜコトバを奪われたのかな?状況を理解できないままだけど、無事に外に出られて、コトバも通じるようになった。
けど・・・けど・・・。
「ねぇねぇ、ボブこちゃん。結局どんな魔法だったのさ?」
「だいすきの魔法よ。ちゃんと自分の気持ちは、伝えなくっちゃね。そうじゃなくっちゃ、なんでコトバを話すのか、なんのためにコトバを使うのか、わからなくなっちゃう。勘九郎はいつだって、おなかすいたー、スイーツたべたーい、そんなことばっかり言ってるから!もっと大事なこと、言って欲しかったの。うふふ。」
そぉ・・・かぁ・・・。言うなれば、ボブこちゃん、いや、ボブこお嬢さまのお戯れだったのかぁ。
「勘九郎、もう一回言ってくれる?」
「・・・ボブこちゃん、だ・・・だ、だいすきだよ。」
「もっとはっきり気持ち込めて言って頂戴な。そうでないと、また鳥かごに入れて別の魔法かけちゃうわよ!」
ヒィッ!カーン!!!
わっし、ボブこちゃんのこと、だいすきなんだよぅ。
仲良くしようよぅ。
ね。
カーン!
勘九郎
※ぴーんぽーんぱーんぽーん。ここでRinよりお知らせです。このお話はフィクションです。
ボブこちゃんは女優ごっこをしているだけなので、本来の性格や言動とこのエピソードは一切関連がありません。
それから、勘九郎はこのエピソード以降、あちらこちらで「だいすき」「だいすき」と言ってまわっています。
Rin(リン) 「ねー、勘九郎、リンくんのことも、好きかな?」
勘九郎 「だ・・・だいすき!」
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