「桜に染まるまち、佐倉」で撮影会！

「ハァーイ！イイネっイイネっ！すずちゃん、フク、そのままそのままー！」

（パシャ）

「あっあっ、すこぉしだけ、上に目線上げてみようか、そうそう、あそこの桜の木を眺める感じよ、そーぉそーぉっ！」
（カシャカシャ）

「さぁーもう少しリラックスぅー？おっおっ風が・・・！あっ花びらが舞ってきたねぇ、素晴らしいねぇ！」

（パシャカシャパシャ）

「風情がありますなぁー！すずフク、可愛いよっいいよっいいよー！」

（カシャパシャパシャパシャ・・・）

こんにちわぁーにっ！ウサギのすずだよぉ。

約ひと月前、ボブぞオヤビン（親分）がソニーの新しいカメラを手に入れてからというもの、写真撮影にハマってるらしいんだ。リンくんもボブぞオヤビンもあっちゃこっちゃからすずのことを写真撮ってくるんだ。気が抜けないよねっ・・・、まぁ、すずはどんな角度から撮ってもらってもオッケーだけどねー！

今日はね、チーバは桜・・・じゃない、佐倉ってところにやってきたよ。

佐倉っていうのは、「さくら➘」っていう発音なんだ。桜は「さくら➚」でしょ？ニホンゴって難しいねぇー！その佐倉、この春の期間、「桜に染まるまち、佐倉」と題したイベントをやってるんだって。
特に、佐倉城址公園というお城跡に作られた公園は、お花見で有名なんだって！

リンくんは子供の頃から佐倉という町には来たことがあって、今でも年に数回お散歩に来たりしてる。すずもね、アサガオを見にやってきたことがあるけれど、桜を観に来るのははじめてだよ！

アッ・・・、みんなにご説明してる間にも、オヤビンってば、ずぅっとシャッターボタンを押し続けてるの。すず、お写真撮ってもらうのは大好きだけど、オヤビンとは一緒に遊びたいなぁー。

「ねーねー！オヤビン、撮影、まだー？」

（パシャッ・・・パシャパシャ・・・！）

「すずちゃーん、ハイっもっかい、ニコーッ！ってしようかー？ハイッ、ニコーッ！」

（うひゃー！ニコーッ！！！）

隣にいるアザラシのフクと一緒にとびっきりの楽しいお顔をすると、オヤビンは大満足な表情をして、ようやくカメラを置いてくれた。

「フゥ・・・！いいお写真、撮れたと思う！おつかれさまでしたーっ。」

「わぁーい！じゃ、オヤビン、一緒にあーそぼっ！コッチコッチー！」

すると、今度はリンくんの声がした。

「わー！オヤビンコビンズ、かぁわぁーいぃーーー！ほらほら、ベンチに並んで座ってるところ、撮ってあげる。」

（パシャ！パシャカシャ！）

あぁ・・・そうだった。今度はリンくんがカメラマンになって、すずたちのことを何枚も撮り始めた。

「ねーねー！リンくーん、ハラへったー！」

ナイスオヤビン！リンくんはボブぞオヤビンの言うことにとってもあまあまなのだ。

「ボブぞ、おなかすいたのかー！じゃあ、駅の方、戻ろっかねぇ。」

佐倉城址公園というのはとっても広い公園で、敷地の中には国立歴史民族博物館、通称歴博がある。奥まった場所に姥が池という池があって、いますずたちがいるのはまさにその前にあるベンチだ。京成佐倉駅まで戻るには、多分、30分近くかかる。

「よぉし、ユルユル行こぉ。」

周りにはお花見客がいっぱい！大きな駐車場もあるし、なによりも城下町の風情を残した街並みだから、フォトスポットとしてもちょっと有名みたい。

「アーッ？あの人たち、何だろぉっ？」

きらびやかな衣装を着て、赤や金や緑や青や、色とりどりの髪の毛をしたニンゲンたちがグループで通り過ぎていった。隣には、対比するかのように黒っぽいモノトーンの普段着ででっかいレンズをつけた一眼レフを肩から下げたニンゲンを伴っている。

「なぁるほどぉねー！コスプレして写真撮るのに最高だよねぇー！確かに！」

リンくんが、ウンウン、ウンウン、とうなずいてひとりで納得しているかのような表情をしていた。
すずはお洋服、いっちまいも持ってないから、いつだってはだかんぼなんだけどなぁ。フクはウサギさんのかぶりものしてるしさ、ボブぞオヤビンだってオシャレなTシャツ着てるしさ。

「すずも、こすぷれ、してみたいな？」

「アハハハッ！すずは、コスプレ、いらないいらない！もぉその赤い羽根が目立つもの！だいじょぶだいじょぶ。」

むーん。
そういうことじゃないんだけどなぁ。お洋服って着たことないから、着てみたいなぁって、思ったんだけど。

リンくんとそんな話をしながらすずがパタパタと歩いていると、気になるものが目に入った。

パタパタパタパタっ！

「エーッ！あれ、ナァニーーー？？？」

明るい華やかなピンク色をしていて、リンくんの肩くらいの高さがあって、丸い柱のような形。それでいて、帽子かぶったみたいな頭をしていて、その目の辺りには穴が開いている。全面の下方には、黒猫さんの模様と桜の柄が描かれていて、キレイだ。おなかのあたりには扉がついている。

「ほぉー！めずらしい！丸形ポスト、しかも、ピンクだぁ！」

リンくんがあとから調べたところによれば、「桜に染まるまち、佐倉」イベントのひとつのフォトスポットとして、期間限定でピンク色に塗られた郵便ポストなんだって！

「すずね、シャッキーン！って姿勢よく立ってるモノ見ると、真似したくなっちゃう！シャキーン！」

パタパタパタパタっ！

なんだかお天気も良くって、すれ違う人たちは老いも若きもそれぞれにオシャレしててさ。アッ、すずははだかんぼだけどさ。デートに来たのかなぁーって感じのほほえましいカップル、女子グループできゃぁきゃぁしてる子たち、地元っぽいシニアのご夫婦、ちびっこ連れのパパママ。みんな、ニコニコしてるんだよ。
すずを抱っこするリンくんの顔を見上げたら、リンくんも耳の端っこまでニッコニコしてるの。すんごい楽しそう。すんごいうれしそう。すんごい、幸せそう。

「リンくん、あのね、すずね、とっても楽しいよ！」

京成佐倉駅までの道のりを、うふふ、うふふ、うふふふって笑いながら、ゆっくり、ゆっくり、味わって歩いて帰ったんだ。
桜に染まる、佐倉のまちを、ね。

のぉんびり気まま、お気に入りのカメラを片手に春の佐倉散歩。
アー、とっても楽しかったーーー！！！

すず（鈴之助）