勘九郎の紅葉狩り
さくさく・・・さくさく・・・
さくさく・・・さくさく・・・
カラッカラの枯れ葉が足もとでくずれていく音が耳に心地よい午後。
わっしの小さな足でだってね、ちゃんと地面を踏みしめることができるんだ。
目の前には、何色もの数え切れない美しいグラデーションを作り出す葉っぱたち。
天を見上げれば、さっぱりとした湿度のない青の空。
背中には、大きなエノキの木がそびえたち、蓮池に向かって長い光と影の世界を作る。
わっしとリンくんはその真下にあるひとつのベンチに腰掛けて、おだやかな光を感じながらぼんやりと過ごしている。
カンカンカカーン!
ペンギンの勘九郎でっす。
リンくんの歯医者に付き添った帰り道、ちょっと足を伸ばして、大好きな公園にやってきた。いつもはライオンのボブこちゃんのお気に入りでおさんぽの定番の京成バラ園。秋バラはまだ華やかにその色と香りを放っているけれども、師走の声が聞こえてくるこの11月の下旬ではいよいよシーズン終盤だ。今日のわっしたちは、秋バラに変わって園内のところどころでその色を深める落葉樹たちを眺めにやってきたのだ。
わっしとリンくんがいるのは、メインの広場からかなり奥まった場所で、通称”エノキの大木”の足もとだ。春から夏そして秋にかけては、大小さまざまなハチたちがブンブンと飛び交うこのバラ園も、この時期になるとハチの羽音におびやかされることなくおだやかに過ごせる。ボブこちゃんいわく、今月の頭までは大きなスズメバチがいて、おちおちベンチで無防備には過ごせなかったのだという。刺されることはまずないだろうな、とわかっていても小心者のペンギンのわっしだから、今日はハチが飛んでなくてラッキーだなぁと思う。
平日の昼下がりの園内は、人もまばらだ。わっしらの近くにはひと組のファミリーがおさんぽ中。すごく目立つ派手なフリッフリのフリルスカートをはいた3-4才くらいの女の子が元気に遊び回っている。
(ねーねー!サクランボあるよぉ。トゲがあるから気をつけてねーっ。)
ママがその女の子に話しかけている声が聞こえた。サクランボ、とは、本物のサクランボのことではなく、ローズヒップ、つまりバラの木に実る赤い実のことを言っているのだと思う。女の子のパパはカメラを手に、我が子を追いかけて撮影に夢中だ。
これほどにない、幸せな日常の風景を眺めながら、わっしはおなかが鳴るのを感じた。
(グゥ・・・)
「ねぇねぇ、リンくん、ハラ減ったよな?歯医者終わったら何か食べようって言ってたのにさ、こんなとこ来ちゃってさ。」
「ゴメンゴメン。もう1時になるもんね。ほらっ。さっき買ったおにぎり、一緒に食べようか。」
リンくんは、お気にいりのアウトドア仕様のコートの大きなポケットから雑におにぎりを取り出した。エコバッグを持ってないわけじゃないけど、ポケットにおにぎりをひとつ突っ込んでおさんぽする、その気楽さが悪くないように思う。
「カンカンカカーンカンカカーン!いっただっきまーす!」
(むっしゃむっしゃ。むっしゃむっしゃ。んぐんぐ。)
「これ、うまいね。」
わっしはおにぎりに夢中だ。
歯医者帰りのおさんぽにしては上出来。ミニストップの手作りチーおかおにぎりをリンくんと仲良くほおばる。とってもここちよしだ。
秋バラの盛りは過ぎたけれど、やはり美しく楽しい京成バラ園。
ぐるりと歩いて、赤や黄色やオレンジや黄金色に輝く葉っぱたちを探して、とても楽しいおさんぽだったよ。
「あっ、勘九郎。ちょっと売店寄るね。来年のカレンダー、買って帰らなくっちゃ。」
リンくんはリンママちゃんのお気に入りの京成バラ園オリジナルのカレンダーをお土産に買った。お店の人がローズピンク色の袋に大事にしまってくれた。わっしらはほくほく顔で外門をあとにしたのだった。
冬の足音は、すぐそこだ。
今年もあとひと月と少し。
いいイチネンを締めくくろうじゃないか。ね。
勘九郎
※Rin注: 11月上旬だと秋バラが満開でローズヒップも楽しめる↓↓↓
「ローズヒップのお楽しみ」
https://bobingreen.com/2022/11/07/2934/
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