キツツキは木をつつく
フォーホケキョ!
ピゥ。ピゥ。
ピーゥピッ!
クァクァクァクァ。
勘九郎です。
団地のはずれにある小さな森に来ています。森といってもね、小高い丘になっていて裏山感があって、ちょっとした林といったほうがいいかもしれない。けれど、小鳥の森、と命名されているので、一応森なんだと思う。階段とかベンチはあるけれど、舗装されているわけではない。階段ののぼり口には、鳥獣保護区、と仰々しい赤い看板がついている。
今日はね、最近野鳥にハマったリンくんと一緒に、カメラを持って、観察会という名のお散歩なのだ。
3月も半ば。あっという間に春らしい日が増えてきた。
今朝は目が覚めたら、急な雨。
布団の中で、あーぁ、天気予報ちゃんと見てなかったよぉ、なんてつぶやくリンくん。朝のお散歩をスキップして二度寝したの。
おはーに。
ケンイツエンチョーが起きてきたときには、もう晴れてた。
晴れたねぇ。
今日はなんと22℃まで上がるらしい。リンくんは、もう何年着てるかわからないくらいのお気に入りのボーダーTシャツに、ジーンズ。軽いロングシャツワンピを上に羽織ってる。わっしは、そのシャツワンピのおっきなポッケに入って、リンくんと一緒に、ジーッと鳥たちを待っている。
森は静かだ。
そよぐ風と、その風で触れ合う葉。
その中でランダムに鳴く鳥たちのさえずりは心地よい。
・・・ふぇくしゅ!ふぇくしゅ!
リンくんの大きな鳴き声が響く。
おーいリンくん、くしゃみおっきいよ。鳥逃げちゃうよ。
あはっ。ゴメンゴメン。ダイジョブだよ、いま鳥たちは恋に夢中だから。
フォーホケキョ!
そう。春の鳥の声は美しい。
ウグイスが鳴くと、あぁ、春本番、と思う。
キーンコーンカーンコーン。キーンコーンカーンコーン。
昼12時50分を知らせるチャイムだ。給食時間の終わりかな?
この団地のはずれの森の近くに中学校があることを、つい最近知った。ここは全国各地によくある高度成長期に建てられた約50年近く経つ古い広大な団地で、端から端まで途方もない世帯数が生活している。あまり若いファミリーは見かけなくて、どちらかといえばシニア、しかも後期のシニアが多い印象だから、中学校へ通う子供を見かけることは少ない。
森のベンチに座っていると、ニンゲンの生活する匂いや活気が少しだけ遠くになる。
キーンコーンカーンコーン。
またもひとつチャイムが鳴った。
子供たちのはしゃぐ声がしてきた。中学生のそれとは違う高い声だ。
あ。そうか。小学校も隣にあったね。
午後の授業かな。どんな時間割だろうか?
わっしには決まった時間割はない。ただただ、毎日自由気ままにやりたいことをやって、過ごしてる。
だってペンギンだもの。今日は、さしずめ理科の野外学習といったところだろうか。
グォーーーーーーーー。
ギュインギュインギュインギュイン!!!
急にクルマのエンジン音とチェーンソーの音が響く。
ほとんど管理もしてないひとけのない森かと思っていたら、どうやら森を管理する人たちがちゃんといたようだ。
おおお。職人さん、お昼休憩だったのね。。。
静かな森は機械音に邪魔されてしまった。でも、鳥たちはめげずに鳴いてる。
勘九郎?
はいー?
鳥たち、写真撮れるかな?
リンくん、ベンチに座ってちゃ見つからないよ。ちょっと歩こう?
うん。歩いて探してみようかね。写真とれるといいな。
ヨシ、いこー!レッツゴー!
森の反対側の出入り口の方へ歩いてみる。途中、木の手入れをする職人さんたちの邪魔をしないように、そぉっと進んでいく。
すると、奇妙な音に気が付いた。
カッカッカッカッコツコツコツコツコツコツ。カツコツコツカツコツコツコツコツ。
ん?
耳を澄ます。
鳥たちが恋をして鳴くそのさえずりにまじって、あまり聞き覚えのない音がする。
カッカッカッカッコツコツコツコツコツコツ。カツコツコツカツコツコツコツコツ。
決して大きな音ではない。頭上から聞こえる、小刻みの音。
!!!
キツツキ!!!
目の前の幹をつつきながら登っていくキツツキがいた。黒と白の斑点のように見える体毛。あとから調べたら、コゲラというみたい。
すごい。これまで、キツツキって見たことあったかな?
ねぇ、キツツキが木をつつく音って、本当に聞こえるんだね。しばらく無我夢中で、カメラを構えながら音をたどっていく。
うー・・・。
リンくん、どした?
勘九郎ー。頭上を見上げすぎて、首が痛い・・・。
アハッ。普段はスマホ首なんだから、プラマイゼロで、いいじゃない。
カッカッカッカッコツコツコツコツコツコツ。カツコツコツカツコツコツコツコツ。
キツツキはどこまで木の幹を登っていくんだろう?
鳥の音はさえずりだけじゃないって知ってしまって、ますます野鳥観察が楽しくなったイチニチでした。
カンカンカカーン!
勘九郎
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