ぼんやりのピンク色

パヒュッ。

ピンク色のいきもの代表、ウーパールーパーのイーさんこと、ひふみです。

わたしにとって、春とは、いちばん好きな季節。

寒さがゆるんで、さまざまなお花が咲き始めて、あちこちで鳥が鳴き始めるの。

なによりも好きなのはね。

どことなく、いろいろなところが、ピンク色に染まるんです。

あまり目がよくないわたしにとって、春というのは、自分のピンク色の身体と景色の境目がぼんやりになって一体化するような、そんな気持ちになる。

パヒュッ?(これなんだろ?)

河津桜だって。まだまだ咲き始めだけれど、キレイだねぇ。

“イーさんのピンク色と河津桜のピンク色”

わたしは生まれたばかりの頃、山小屋の床に置かれた小さな狭い水槽が住まいで、右と左を行ったり来たり、土管のなかでかくれんぼしたり、水面へパヒュッしに行ったり、それくらいしか楽しみがなかったの。水槽の外からは、カラフルなたてがみのライオンがジーっっっと見てきて、なんだかうれしくてこそばゆかった。

食べるものと言えば、茶色いカリカリの粒だけ。一度に10粒。おいしくもまずくもなく、とにかく口に入るものはなんでもよかった。間違えて水槽の小石を食べてしまって、苦しい思いもした。あの頃の日々はとても単調で静かで、水の音しかしなかった。

ある日、私は水槽を出た。あの時、リンくんが大粒の涙を流していたことを、今となって思い出す。リンくん、悲しんでいたのかなぁ?わたしはというと、えいやっと勇気を出して、ひとり旅に出ようとしていたから、リンくんのことはあまり構わなかったんだよね。リンくんはじゃあね、といってさみしそうに私を送り出してくれた。

広い世の中を旅してみたら、水槽の外には、美しいものがたくさんあることを知ったんだ。

どこに行っても、すべてのものが新鮮だった。おいしいものだって、味わって食べられるようになった。

半年後、ひとり旅を終えることになった。ラッキーなことに、リンくんと、ボブ家のみんなと再会したんだ。

もう一回、一緒に暮らしていい?

もちろんだよ。イーさん、おかえり。これからはさ、一緒にどこへでも行けるね。

うん。ただいま。

そうやって、第二の”ウパ生”の日々を過ごしている。

河津桜の花見さんぽから帰ってくると、食卓のテーブルも、ぼんやりのピンク色にになっていた。

パヒュッ?(これ、食べていいの?)

食べよう。桜もちだよ。春の味だよ。

パヒュ。パヒュパヒュッ!(わぁい。いただきまーす!)

“桜もちのピンク色とアワのピンク色とイーさんのピンク色”

あいかわらず景色はぼんやりだけれど、ピンク色はちょっと濃くなっている気がする。

ひふみ

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Rin(リン)

ぬいぐるみブロガー、Rin(リン)です。 ライオンのボブ家と愉快な仲間たち、そしてニンゲンのケンイツ園長と一緒に、みどりキャンプ場で暮らしています。 ボブ家の日常を、彼らの視点でつづっていきます。

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