Gとの戦いと勝者の初日の出
うぉぉぉー!お日さま、出てきた出てきた。
「あけましておめでとうございます!」
てんてこてーんてんてこてーんてんてこてーん
てんてこてーんてんてこてーんてんてこてーん
2024年、もしくは令和6年の元日。
朝6時半にかけた目覚ましを止めて、あと10分だけと二度寝しようとしたリンくん。
そりゃあさ、夜中、おもしろ荘を見ながらゲラゲラ笑って、そのまま酔っ払ってソファで寝落ちしてさ、おフトンに入ったのが2時半だもの。
そのまま居間の床で寝ていたケンイツエンチョーがおトイレに起きたらしく、おれに声をかけた。
「おーボブお。外明るくなってきたよ。」
ふはっ!とカラダを起こしたリンくんに、おれがまるでたたき起こされたみたいになって、みんなであわてて居間へ行った。
おはーに!そして、あけましておめでとうございます。
ライオンのボブおです。
さっき「ライオン&ドラゴンの元旦」っていう今年一発目のお話をアップしたけれどね、コレはスピンオフ的な、裏話。でも、本当にあった、今朝のできごとだよ。
夜更かししたのにもかかわらず早起きをしようとしたのは、他でもない、初日の出を拝むためなんだ。チーバの我が家のあたりの初日の出は7時ちょい前、ということで、なんとか間に合ったの。
そうはいっても、昨晩の宴会の洗い物はそのまんま放置して、あたふたと自分のデスクへ急いで、カメラの準備をするリンくん。
リンくんと一緒に”ミラこ”を手にして、居間に戻ってくるやいなや、妙なニオイを感じた。(”ミラこ”というのは、リンくんの所有するカメラ3台のうち、唯一のミラーレス一眼でソニー製のコの愛称だ)
クンクン?ン・・・?なんのニオイだろ?
「いま、Gがいた・・・。」
緑色の缶を手にしたケンイツエンチョーが、そう言い放った。
「え!マジ?G?」
エーッ?新年早々に?ひぇぇぇ。
G・・・ことゴキブリ氏がいたらしい。古い団地だから、年に一度くらいはね、仕方なしそういうことがあるのだけれど、まさかいまから初日の出拝むよー!っていうタイミングで出てくるとは。
Gのヤツ、なかなかなファイティングポーズで挑んでくるなぁと思う。
(※Gとの戦いのお話は、Noteのコチラでもリンくんが書いているよ → 「”G”あらわる。ぬいぐるみを逃がす」)
おれは戸惑いつつも、ソファの上へと逃げ込んだ。食卓横にあるレンジラックのそばで発見したらしいから、台所と食卓からいちばん遠い場所でジィっと息をひそめた。
あ、念のため言っておくけれどね、おれはライオン。ヒャクジューのオー(百獣の王)でしょ。チカラ比べしたら、Gなんてめじゃないよ。でもね、でもね。
おれさぁ・・・殺虫剤のニオイがニガテなのよ。ファブリーズじゃないんでしょ?しかもGのやつって強いでしょ、できるだけ遠くにいたいのね。だから・・・だから・・・。
おっと。そんな説明をしているうちに、テレビでは日本一早い初日の出として富士山頂の生中継がちょうど佳境になってきた。チャンネルは、毎朝見ているテレ朝モーニングショーの、新春スペシャルだ。あと数分でダイヤモンド富士の映像が撮れるのなんだのって、羽鳥さんが話しているよ。
リンくんもケンイツエンチョーと一緒にG退治に参戦。首からはカメラをかけたままだ。
「エンチョー、、、あとのことは任せた!」
そう言っておれはみどりテラス(我が家の団地のベランダのことだ、最上階の5階だからまぁまぁ見晴らしはいいのだ)に出た。
フゥ・・・スゥ・・・
深呼吸をひとつして、ココロをしずめる・・・、つもりなのだけれど、Gの行方が気になる。
そもそも、カメラを首から下げたままのリンくんがやってこないことには、初日の出の写真は撮れないしね。
むーん・・・
空はだんだんと明るんできて、お日さまは半分くらい顔を出している。いやぁー今年は間に合わないのか???まさかの寝坊は回避できたのに、Gのヤツのせいで・・・!
そのとき。
ガラッ!
みどりテラスの窓ガラスが開いて、リンくんが顔をひょこっと出した。そのあとからケンイツエンチョーの姿も見えた。手にはわりばしとティッシュを持っている。
「・・・G、どした?」
おそるおそる聞くと、ケンイツエンチョーが晴れ晴れとした声を出した。
「やったぜ、やったぜー!安心して初日の出見られるよ。おれ、今年の大仕事、もう終えたわ。いやぁ、もし逃したら、この1年間、ずっとモヤモヤしそうだもんな。」
ふぅー!
ケンイツエンチョーのG駆除大作戦は成功したらしい。リンくんいわく、ちゃんとリンくんも加勢したもん、とのことらしいが、真偽はわからない。たいがい鈍くさいリンくんだから、きっとGに翻弄されていただけに違いないけれど。
ま、おれは心底ホッとして、みどりテラスから拝む初日の出に戻った。リンくんもようやく一緒にやってきて、おれらは一緒に南東の空を見上げた。
「あぁっ!お日さまが完全に顔だしたよ!」
せーのっ・・・
あけましておめでとうございます。
なんやかんやのバタバタな朝だったけれど、2024年もどうぞよろしくお願いしますなの!
「新年早々、G氏の命を奪ってしまってスミマセン。」
「リンくん、意外とそういうこと言うんだな?」
「うーん、でも同居する気にはなれないもんね。」
そんな我が家は、決して広くない団地の部屋のなかで、どうぶつたちが自由に暮らしているよ。
ライオンも、ツキノワグマも、シロクマも、ペンギンもウサギも、それからアザラシやカエルやアヒルや、ネコやイヌや。ウパもいれば謎の妖精さんもいる。
Gには申し訳ないけれどさ、こうやっておれらが安心して生活できるように、今年もケンイツエンチョーがこのオハナどうぶつ園のエンチョー(園長)を務めてくれているのだ。
エンチョーであり、運転手であり、用務員であり、さらには虫退治レンジャーのケンイツ。カイシャインのおシゴトをして、おれらの食いぶちを全部稼いできてくれている。
一方、毎日、パソコンに向かってお話を書いたり、カメラで鳥さんを追いかけ回したり、急に絵を描いてみたりきまぐれに編み物したり、謎の自由行動のリンくん。カイシャインをやめて、早2年以上。どうにか今年は人の役に立って、できれば「ブチとシロ」を連れてきて欲しいものだ。
(※ブチとシロというのは飲みしろと食いぶちのこと。ネコちゃんみたいでカワイイから我が家ではそう呼んでいる)
あぁ。
わちゃわちゃしたボブ家のオハナ(家族)一同が、2024年もちゃんとイチニチイチニチ、成長のある年を過ごせますように。
おれは新しいお日さまの光に、そう願いを込めた。
部屋に戻ると、ソファの背中の上に勢ぞろいしたオハナたちが、同じ方向を向いてニコニコしていた。みんなのもふもふの背中の毛並みをいっぽんいっぽん輝かせるその光には、特別なチカラが宿っているような気がした。
「お日さま、キレーだね。」
「お日さま、まぶしいね。」
きゃっきゃっ!
きゃっきゃっ!
「みんな、今年もよろしくな。」
そういって、おれはみんなの輪の中に戻った。
騒がしいG騒動が済んで、ようやく静かな元旦を迎えられるよ。
我々は、Gとの戦いに勝ったのだ。これは勝者の初日の出だ。
フハッ!
ボブお