静寂の時

ペコっ。ペコっ。パンっパンっ。
ジーっ・・・・。
ペコっ。

フゥ・・・大きく一呼吸つく。

そう、おれは早朝の三峯さんにいる。

おれらが階段を上がったところで、拝殿の中では朝のご祈祷が終わったところだった。

その姿を眺めつつ、拝殿の前で、静かにお参りをした。

ボブおです。

朝9時のちょっと前。

いつもなら、まだこの時間は人影はまばらなはず・・・と思っていたのだけど、今朝は違う。すでに拝殿の横にはお参りを済ませた人たちで老若男女の人だかりができていた。

11月の中旬の秩父といえば、紅葉の真っ盛り。標高の高いこの三峯神社では少しピークを過ぎたようにも見えるが、まだまだ赤や黄に染まる美しい木々を楽しむことができる。

それにしても、今日は朝早くから、人多いよね?

リンくんが首を傾げる。

行列の理由はすぐに分かった。

御守りや御朱印をいただくのを待っている人だった。授与所は朝9時開所。それを待ちかまえる行列だったのだ。

本当は、おれらもご多分にもれず、1年間お世話になった気守をお返しして、新たに受けようと思って持ってきたのだけれども・・・。

うーん・・・。どうやら、今日じゃないみたいだね。また次にしようか。

ケンイツエンチョーが言った。

うん、同意。そうしよう。今日じゃ、ないみたいだね。また、次にしよう。

そう、我が家は、人だかりがニガテ。そして、この神聖なすがすがしい気持ちを、行列に並ぶことで失いたくなかった。だから、今日は通過。

拝殿へのお参りの後には、毎回、御神木からも気を頂くのだ。コロナっちゃんの前は、御神木に直に触れることができたのだけれど、もうここ1年以上はソーシャルディスタンスになってしまって、柵が作られてしまった。

少しだけ残念だけれど、ううん、お力を分けていただくことには変わりない。

ペコっ。ジーっ・・・。

スゥー・・・フゥ・・・スゥー・・・フゥ・・・スゥー・・・・・フゥ・・・・・。

静かに手を合わせて、深呼吸を三度。

お辞儀をして、拝殿を後にした。

ゆっくりと境内を下っていくと、やはり今日は人が多いみたいだ。多くの人とすれ違う。

おしゃべりをしながら歩みを進める女性グループ。

企業のご祈祷だろうか、スーツを着た大人数の団体。案内係が声を張り上げて誘導をしている。

門の前で写真を撮るカップル。

普段なら人気のあまりない日本武尊像のほうにまで人が上っていくのが見えた。

人の声がするたびに、空気が揺れるような感じがする。

なんだか今日は賑やかな三峯さん。そんな日もある。みんな神さまに会いたいんだ。神さまはニンゲンと一緒に生きている。

あまりに人がどんどん上ってくるものだから、我が家はむしろ急いで帰ろう、ということになる。

境内を後にする前に、もうひとつ大切な場所に立ち寄る。

遥拝殿。

ここは、三峯神社の奥宮、妙法ヶ岳の山頂を臨める拝殿なのだ。

おれらは奥宮にも何度かお参りをしたことがある。トレッキングシューズじゃないと辿り着けない、れっきとした山道だ。今日はスニーカーだから、ここでお参り。

運よく、先客はいなかった。

ペコっ・・・

一礼をして、鳥居をくぐる。

展望所のようになったその拝殿は、目の前に大きく望む山並みと、眼下には秩父の街。美しい場所だ。

フゥ・・・。

ペコっ。ペコっ。パンっパンっ。

ジーっ・・・・・・・・・・。

ペコっ。

おれらが柏手を打ったその瞬間、音が消えたように感じた。

シンとしずまりかえる、奥宮の空気がよみがえる。

一瞬、人の声も、人工物の音も、すべて消えた。

そう、おれらはその瞬間、妙法ヶ岳の山頂にいた。

そこでは、山の木々がこすれあう音、鳥の鳴く声、とてつもなく大きな、自然の音しかしない。

それは、日々の生活音に慣れてしまっている耳には、無音に感じる。

会話をすることがためらわれるくらい、大きな、神聖なものに包まれる、感覚。

おう、よく来たね。

神さまがそうやって、おれを迎え入れてくれた。

神さま、なかなか来られなかったから、どんどん頂いた「気」を使い果たしてしまいました。
おれもお会いしたかったです。今日は、また、「気」をたくさん頂くことができました。
いつも、ありがとうございます。

ちゃんと、おれの気持ちを伝えようと思って、ジーっ・・・が長くなってしまった。

一礼をして鳥居を後にすると、また雑踏が戻った。

土産物屋の呼び込みが賑やかだ。きっとこの週末はここ一番の活気になるのだろう。

神さま、また来ます。

さぁ、無事に、おうちに帰ろう。

ボブお

“三峯さんの御神木から「気」を分けて頂くの”
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Rin(リン)

ぬいぐるみブロガー、Rin(リン)です。 ライオンのボブ家と愉快な仲間たち、そしてニンゲンのケンイツ園長と一緒に、みどりキャンプ場で暮らしています。 ボブ家の日常を、彼らの視点でつづっていきます。

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