アッツアツの熱田さん
ふはぁー!
イチネンぶりのアイーチ(愛知県)は名古屋、栄のオアシス21に到着したよっ!
こんにちわーに。ライオンのボブぞです。
今年もこの年の瀬のタイミングで、お伊勢さんへお礼参りにやって来ることができたんだ。今日は名古屋で前泊して、そこから伊勢へ移動するよ。
昼の1時過ぎ、オアシス21はカフェやらランチ向きのテイクアウトのお店が集まってるから、平日だというのに人が多いね。それから、去年もあったけれど、イベント広場にはスケートリンクが準備されているよ。夕方になるとオープンするみたい、いまは閑散としているけれど、きっとにぎやかなんだろうなぁ!
あ、そうだ!名古屋に来たんだから、おなじみのヤツ、やっとこ。
せーのっ!
「エヌエージーオーワイエーっ・・・名古屋っ!亅
いえーい!おで、名古屋来たぜっ!
「あれ?ボブぞ。水の宇宙船って、屋上階に上がれるんだね。前回来たときにはてっきり屋根の上に水が流れてるのを下から見るだけなんだと思ってたよ。」
「お?そなの?行ってみよっぜ!」
リンくんに言われて初めて気がついたの。おでらはドキドキしながらエレベーターで屋上階へ。
チーン
扉が開くと同時に、ぴぅーとひとつ風が抜けていった。
おおー!
お日さまにキラキラ光る水面がキレイだね。池のようなプールのような水場の周りは通路になっていて、一周できるようになっているよ。ベビーカーを押したファミリーや外国人のグループがわいわい写真を撮っているの。そして、周囲を見回せば、ぐるりと囲むは大都会、名古屋!背の高いオフィスビルがいっぱい、アッチには三越が見える。あぁ、テレビ塔はやっぱりカッコいいね。そういえば、まだテレビ塔にはのぼったことないよなぁ。
おでがわいのわいのはしゃいでいると、リンくんがエレベーターの方へ踵を返していくのが見えた。それから、そうそう、と本来の目的を思い出した。
「ボブぞ、そろそろ向かうよ。」
「はーいっ!待って待って。」
今日の目的地は、熱田さん。そう、名古屋といえばの我が家の大切な場所、熱田神宮だよ。三種の神器のひとつ剣をお祀りしている神社で、アマテラスさん(天照大御神)をお祀りしているのはもちろんのことだけれど、日本武尊(ヤマトタケルノミコト)の神話で有名な場所だよ。
オアシス21をあとにして、地下道を抜けて栄駅の改札へ。ここからは紫色の地下鉄、名城線で、熱田神宮伝馬町駅へ向かった。熱田さんの敷地は広くていくつか門があるから、3つの駅を利用してそれぞれから歩くことができるんだ。名鉄の神宮前駅、それか、地下鉄名城線の熱田神宮西駅もしくは熱田神宮伝馬町駅。今回は、正門からお参りがしたくって、一番近い伝馬町駅までやってきたってわけ。
今日の名古屋はちょっとポカポカ。今週末は最強寒波が来ると天気予報で見ていたリンくん、ダウンの入ったコートはむしろ暑そうだ。念のためのマフラーは巻かれないまま、おでらの入ったトートバッグの中で一緒になってぎゅうぎゅうと場所をとっている。
ぺこっ
正門の第一之鳥居の前に到着したのは午後2時すぎのこと。貫禄のある神明鳥居を、一礼してくぐる。一瞬敷地に踏み入れただけで、空気が変わる感じがするから不思議だ。樹齢何年かわからない、太くて背の高い木々がおでらを取り囲み、その上ではヒヨドリたちがヒィヨヒィヨと遊び回っている。おでの小さなカラダじゃぁ、どんなに真上を見上げてもその先を見ることができないくらいだ。
拝殿までたどり着くと、その周りでは正月の準備が始まっていた。木々にライトをくくりつける業者さんたちが、もうちょっとコッチ、とかアッチ、とか指示を出しながら角度を調整している。
「初詣の準備かぁ・・・。年の瀬だね。」
リンくんがつぶやく。
我が家のニンゲンたちは人混みがニガテなので、いわゆる初詣には出かけることは滅多にないんだ。その代わり、年の瀬のお礼参りには、できる限り来るようにしている。そうそう、いつもならケンイツエンチョーが一緒のはずなんだけれど、今日のニンゲンはリンくんだけだから、ちょっと心配だけれど。
ぺこっぺこっ・・・ぱんっぱんっ・・・ぺこっ
本宮の前でお参りを済ませると、おでらは、メインの参道から脇道にそれてみた。今回は熱田さんの境内をゆっくりと歩いてみたくなったのだ。
「こころの小径(こみち)」。
熱田さんの境内に、こんな小径があることはこれまで知らなかった。どうやら本宮の裏手へぐるりと繋がっていて、一番奥には、熱田大神の荒魂(あらみたま)をお祀りしている一之御前神社(いちのみさきじんじゃ)があるという。
参道よりもよりうっそうとしていて、舗装もされていない。木々はより一段と日の光を遮り、まるで神域を外界と隔てているかのような、そんな厳かな雰囲気だ。
一歩、一歩と歩みを進めると、本宮の真裏手に出る。表と同じく、ひっそりとしたそこにも鳥居が建てられていた。
一番奥にいらっしゃる神さまは、ひっそりと祀られていた。
「なぜ今まで気が付かなかったんだろうね。これまで3回くらいは熱田さんに来ているはずなんだけれどな。」
「いっつも、なぜか急いでいたかもしれないよね、熱田さんに来るときって。どうしてかな。」
荒魂へのお参りを済ませて、リンくんと来た道を戻りながら、もそもそっと、そんな話をした。熱田さんに失礼なことをしていたかもしれないなぁって反省しつつ、次にケンイツエンチョーも一緒に、全員揃って来るときには必ず一番奥までお参りしようって、ココロに決めた。
「こころの小径」の入口まで戻ってきて、そのまま宝物館へも立ち寄ってみることにした。
「こんにちはー。一般オトナ1枚おねがいします。」
「草薙館はいかがしますか?」
「エ?草薙館には何があるんですか?」
「刀をたくさん展示しています。」
「ほぅ・・・じゃぁ・・・見たことがないので、草薙館もせっかくなので行きます。」
「では共通券で、800円です。」
宝物館も初めて、草薙館も初めてだ。前回熱田さんに来たのは一昨年のやはり年末。そのときにはどちらも華麗にスルーしていたようだ。
宝物館の展示は随時入れ替えされているらしく、今時期はさまざまな時代に作られた鏡、いわゆる三種の神器の鏡のことだ、が多く展示されていた。細かい細工や素材、大きさなど、きっといろいろと違いがあるのだろうと思ったけれども、説明があまりピンとこなくて、ちょっとおでには難しかった。
でも、宝物館の中で、ひときわ目を奪われたお宝があった。それは、現代の作品で、大きな一枚のキャンバスに描かれた、鮮烈な赤を基調とした神さまたちの絵だった。タイトルを「熱田神宮・創祀千九百年」といい、作者は斎藤吾朗氏という画家さんだった。
まるで曼荼羅のように、その一枚の中心には、アマテラスさん(天照大御神)や日本武尊をはじめとした熱田神宮に祀られている神さまたちがおり、その周囲には、熱田さんにまつわる神話上・歴史上の人物や神事の様子が詰め込まれていた。この一枚で、熱田神宮の1,900年の歴史を表現している、そういう内容のようだった。
※展示実物の写真は撮影できないけれど、公式ホームページに画像があったよ
斎藤吾朗氏 公式ホームページ内 ↓↓↓
斎藤吾朗「熱田神宮・創祀千九百年」、2013年、油彩、F200号
https://goroh-saitoh.com/gallery/oil_painting/22
「ほぅ・・・!」
この真っ赤な世界の目の前に、おではリンくんに抱っこされたまましばらくほうけていたのだった。
「正直、ここに描き込まれているお話をひとつひとつ解説してほしいなぁ、あまりに知らなすぎる。」
「リーンくん、1,900年を一瞬で理解するなんて、無理に決まってら。だけど、この1枚を眺めることで、時代とか空間とか、それから神話の世界と現実の世界との境界まで超越して、熱田さんの内側に入り込むことができる感じがするよ。」
「ボブぞ、もっともらしいこと、言えるんだねぇ・・・!」
エッヘン。
そのまま草薙館へ移動すると、そこはまだできてから2年経ってないらしく、あまりに洗練された展示室だった。一般的には展示品の説明には壁面にパネルに印刷された説明書きがあるものだけれど、ここはタブレット端末で動的に掲示されていた。
それにしても、刀の展示だけ、という潔さだ。それもそのばず、三種の神器の草薙の剣が奉納されている熱田神宮だからこそ、名刀と言われる刀たちが日本各地から集まってきたのだそうだ。展示室内には外国人観光客が多いのもうなづける。それから、高校生くらいの女子ふたり組がキャッキャいいながら見て回っていたのが印象的だった。多分刀を題材にしたアニメやゲーム、刀剣乱舞だったり鬼滅の刃だったりの影響かもしれないね。
ぐるっと見て回ると、最後に真剣を持てるという体験コーナーが用意されていた。
(テイクアフォトプリーズ?)
リンくんが訪日客と思わしきアジア系の女の子から話しかけられる。どうやら刀を手にした姿を記念撮影できるスポットらしい。
「おでっ!おでも、真剣持ってみたいぞ!」
「はいなー。ボブぞ、もってごらん。」
ズシッと重たく、おでの小さな手のひらには重厚過ぎた。
「おっとっと・・・。」
真剣ではあるのだけれど、ちゃんとアクリル板のようなものでガードされていて、もちろん刃先には絶対に触れられないように守られていた。それでもおでの腕はぷるぷると震えて、これ以上長くは持っていられなかった。
フゥー。
刀から手を離して元の場所に戻すと、安堵を覚えた、と同時に、とてつもない空腹を感じた。
グゥ。。。グゥグゥ
「リンくーん!おで、ハラへった!なぁなぁ!朝ごはんにおにぎり食べて以来、何も口にしてないよ!」
「あは。お昼ごはん、遅くなっちゃってゴメンよ。大変お待たせいたしました。熱田神宮といえば・・・、ボブぞの大好きなアレでしょ?」
「うんっ!お出汁のきいた、アレね!」
草薙館の出口の自動ドアを出た瞬間、かつおぶしのお出汁のいぃぃぃぃ香りがするの。熱田さんのお参りの定番といえば、コレでしょ!
「すみませーん。宮きしめん、ひとつください。」
屋外に並べられたテーブルのうち、端っこの景色のいい場所に席を取り、きしめんが出来上がるのを待つ。
ブブーッブブーッ
「あ。できたみたい。受け取ってくるね。ちょっと待ってて。」
呼び出しベルを手にリンくんがカウンターへ受け取りに行く間、おではおとなしくクンクン、クンクンしていた。
「ほい。食べよ。」
「いっただっきまーす!!!」
あぁ、コレだよね!コレ!
湯気の立つ大きな丼ぶりには、かつおぶしが踊り、ほうれん草とねぎの緑、そして、しっとりとお出汁を含んだきつねさん。それから、しみっしみの椎茸さんと、彩りを与える、宮のかまぼこ。見た目もすごく美しくて、これぞ熱田さんのごちそうだなぁって思う。
麺はモチモチつるつるしてやさしい食感、おなかにもとっても優しそう。そして、ちょっとお出汁にうるさいライオンのおでも認める、バキッとおしょうゆのきいたおつゆはしょっぱくておいしい。
そして、唐辛子大好きなリンくんだから、大缶の一味をたっぷしふってあって、ピリピリピリ辛。一味の香りがおでのお鼻からふぅっと抜けるの。
「今日は、減塩は無視しちゃうもんね。ズズッズズズッ。」
「うんまーい!」
普段は塩分を気にしているリンくんだけれど、この宮のきしめんを目の前にしたら、その魅力には抗えないよね。おつゆもゴックンゴックン飲んで、おでらは空腹を満たしたのだった。
3時半、おやつみたいな時間のお昼ゴハン。いつもは急ぎ足だった熱田さんを、今回初めてちゃんと奥までしっかり回って、宝物館も草薙館も見て回って、最後には定番の宮きしめんもいただいて、とっても楽しかったんだ。
「おで、アッツアツの熱田さん、大満喫!大満足!」
ココロもオナカも満たされて、ほくほくした気持ちで正門へと向かったのだった。
すっかり日が傾き、北向きの風がスゥっと首もとを冷やしていった。
「リンくん、マフラー巻きなよ。」
おでは地下鉄の駅へ戻る途中で、リンくんにマフラーを手渡した。トートバッグに突っ込まれていそれがいなくなっただけで、ずいぶんとおでらのスペースはゆったりとした。
今シーズン最強寒波はすぐそこまでやって来ているようだ。
さぁ、名古屋の夜を迎えるね。
ボブぞ
OASIS21(オアシス21)/ 愛知県名古屋市
https://www.sakaepark.co.jp/about/
熱田神宮 公式ホームページ / 愛知県名古屋市
https://www.atsutajingu.or.jp/