近くて遠い”日本のエーゲ海”

ガタンゴトンガタンゴトン・・・

ガタガタガタガタガタガタ・・・

おおっ、窓際で旅グマ俳優を演じていたおれ、ものすごい大きな揺れに危うく愉快に・・・じゃないや床に落っこちそうになったぜ。

“窓際で俳優グマを演じていたおれ、激しい揺れに落ちそうになったわ”

うっす、旅グマ、ころすけでっす。
リンくんとリンママちゃんの3泊4日の山陰・山陽旅もいよいよ後半。3日目の午前中をオカヤーマ(岡山県)は倉敷で過ごし、おれらは最終夜、今宵のお宿を目指して移動を開始した。

「えーっと、倉敷駅からは鈍行で・・・、45分くらいだね。途中、岡山駅で乗り換えね。」

「ほー?了解。どんなトコ?」

「瀬戸内市の、牛窓っていう地区だよ。”日本のエーゲ海”って言われていて、海にほど近いお宿なんだ。ななんと!全室オーシャンビュー!」

「エ?おっさんブーだって?!」

「ちがーうっ!」

アハハハハっ!

おれらは誰一人体調を崩すことなく、トラブルに巻き込まれることもなく、無事にここまで旅をやってこられている。笑って喋って食べて飲んで、全然元気。さすがに70過ぎたリンママちゃんには3泊4日の旅行は長すぎるかな?疲れちゃうかな?と心配していたけれど、正直なところ全然杞憂だったみたいだ。おっさんブー、とおれが言ったら、うふふ、うふふ、ころちゃんはカワイイわね、と微笑んでいる。

倉敷駅から岡山駅までは山陽本線で4駅、降りたホームのまま10分後にやってくる赤穂線に乗って、邑久(おく)駅というところまで行くらしい。リン旅行社は元来の鉄道好きなものだから、乗り鉄欲を抑えつつ、無理のない範囲で旅程を考えた結果らしい。学生の頃は時刻表片手に青春18きっぷでアッチコッチ乗りまわっていたリンくんといえども、赤穂線はどうやら初めてなんだそうだ。

「ほー、赤穂ってあの赤穂浪士の赤穂でしょー、ドコまで行くんだろ・・・路線図見たい・・・!」

手元には路線図がないし、最近の電車には路線図が貼っていないこともしばしばなので、スマホのGoogle mapを見ながらブツブツつぶやいている。

「ほーほー、山陽本線よりも海沿いを走るわけねー、ほーほー・・・。」

大きな荷物を持った旅客たちはたいがい岡山駅で下車して階段を登って行ってしまった。外国人も多く、みんな新幹線ホームへと向かうんだろう。明日のおれらも、この波に混じることになる。

リンくんは茶色いシートのボックス席に座ると、岡山駅のホームで買った麦茶をグビリと口に含んだ。その後に、リンママちゃんに、いる?と聞いて、今はいいわ、と目でやり取りをするあたりは、やはり長年やってる母娘ならではの、自然な動作だ。

「邑久駅でお宿の迎えのシャトルバスが待ってるから。14:50って言ってたよ。」

電車は岡山駅を出ると、田園風景のなかを走る。岡山に来てから気付いたけれど、まだ稲刈りしてない田んぼが結構あるんだよな。もう10月も下旬だぜ?なんでだろ、と不思議に思っていたら、リンママちゃんも同じことを言っている。

「あれ、稲よねぇ・・・?これから稲刈りするのかしら?なんで刈ってあるところとそうでないところが混在してるのかしらねぇ。」

「だよねー。わたしも思った!チーバはもうとっくに刈っちゃったよ。下手したら8月の終わりとかに稲刈りしてるところあるもん。」

後からリンくんが調べたら、このあたりでは稲の二期作をやっているらしいことがわかった。真偽は定かではないけれども、一応、それで納得することにしたよ。

ガタガタガタガタガタ!

おれ、落っこちちゃうよー!!!ヤメテー!

「がんばれ、ころすけ!」

うーん、うちのリンくんは、どうしてこんなおっさんグマに試練を課すのだろう。

ま、軽々とクリアしちまうんだから、おれもまだまだ若いってことかな?

そんな遊びをしていたらあっという間に邑久駅に到着してしまった。下車するニンゲンは少なからずいる。自動改札機のない地方の駅らしく、ICカード用の機械にカードをピピッとかざして退場すると、そこには運転手のおじいちゃんと小さなマイクロバスが待っていた。

「あ、今日お世話になります、リンですぅ。」

「あぁ、お待ちしてました、どうぞー。」

ホテルのマイクロバスと言っても、実のところは地元のタクシー会社が運行している、駅とホテル間を送迎するハイヤーのようだ。利用するこちらとしてはなんの不都合もなく、ありがたく乗車した。先客が一組、中年女性の二人組が乗り込んでいたその後ろの座席に、リンママちゃんとリンくん、そしてその間におれ、という感じで乗り込んだのだった。

邑久駅を出発したが、正直なところ、どこがオーシャンビューの海岸の町か?と疑うような田園風景が続くばかり。なんならちょっと山感もあるくらいだ。あぁ、半島って、アップダウンきついよね、だから山っぽいのかもね、なんてココロのなかで言い聞かせながら、マイクロバスからの車窓を淡々と見つめた。

「オーシャンビュー、オーシャンビュー、おっさんブー!おっさんブー!」

「。。。ころすけ。あのね、だからね、おっさんブーじゃなくって・・・。」

「わかぁっとるわ!海だろー。おれ、楽しみにしてたんだ。」

「あ・・・スミマセン。そうだよね。きっと見られるよ、おっさんブー。」

「フハッ!だろ?」

おれらは他客のいる、地元のラジオが小さくかかる、小さなバスのなかで、まだ見ぬおっさんブーのホテルを楽しみに、田園風景のなかをズビズビと進んでいった。

「アーアー、オリーブエン、ツーカ。オリーブエン、ツーカシマシター。」

運転手のオジイが、無線で発したコトバ。それは、オリーブエンをツーカシマシタ、ということだった。そう、この近所には、オリーブ園なる、商業施設もあるらしいのだ。日本でオリーブといえば小豆島が有名だけれども、この牛窓でもオリーブを作っているらしいんだよね。そのオリーブ園を通過したよ、ということをどうやらホテルのフロントの面々にお伝えしたらしい無線だった。

“リンママちゃんにオケツをつかまれるおれ。なぁ、ぺたんこになっちまう!”

「いよいよかね?そろそろ海、見えるのかも!」

「わーいわーい!ついに、山陰は境港からやってきて、ココ瀬戸内は牛窓の瀬戸内海を拝むことができるんだぁねぇ!すごーい!わくわくわくわく!」

わくわく。そう。おれらはとってもわくわくしていたものだから、ついついマイクロバスのなかでもはしゃいでしまった。同席していた他のお客さま、ホント、おっさんグマが騒いでスミマセンでした…!

「つぅぅぅうういたっ!なんていうステキなエントランス!リゾート感満載!」

そう、めちゃくちゃリゾート感満載、それなのに浮ついた感じはなく、地に根付いた様子のリゾートホテルが目の前にあった。

うっふん。その全貌は、次回のお話でじっくりしちゃおーっと。

さぁ。オカヤーマは瀬戸内市、牛窓地区は”日本のエーゲ海”とやらに到着。
3泊目の旅の最終日は、このお宿でのーんびりダラダラ、海を眺めて、何もしない、を楽しむのだ!

“日本のエーゲ海”へようこそ。

頭上では、西に傾くお日さまの下、トンビたちが、ピーヒョロロロロロとおれたちの到着を歓迎していた。

ころすけ

“日本のエーゲ海へようこそ!牛窓の海岸はすぐそこだよ”

牛窓海水浴場 岡山観光Web 公式ホームページ
https://www.okayama-kanko.jp/spot/11137

ホテル・リマーニ 岡山県瀬戸内市牛窓
https://www.limani.jp/

「蔦の館で朝を迎える」
https://bobingreen.com/2023/11/16/7028/

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Rin(リン)

ぬいぐるみブロガー、Rin(リン)です。 ライオンのボブ家と愉快な仲間たち、そしてニンゲンのケンイツ園長と一緒に、みどりキャンプ場で暮らしています。 ボブ家の日常を、彼らの視点でつづっていきます。

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