スモモの香りはボブおの気持ち

クンクンクンクンっ!
クンクンクンクンっ!

たまらなくここちのよい、甘酸っぱいいーい香り!!!

アッチを向いてもコッチを向いても、どこからともなく強い香りがおれの鼻をくすぐってくる。

ライオンのボブおです。
春のうららかな日。お気に入りの植物園におさんぽに来てるの。

おれはさ、どうぶつで、ライオンだからさ、どうしたってニンゲンよりは鼻は効くわけよ。

「なぁなぁリンくん、このいーい香り、何の香り?」

同じく鼻をクンクンさせつつ、カメラを片手にほんわかしてるリンくんに聞いてみた。

「ンー?なんだろ、アッチにあるさ、白い花が満開になってる木から香ってくるよね?」

そう言って、リンくんが指さしたのは、白い花々をこれでもかとめいっぱいつけた一本の木だった。

まさか、あんなたった一本から、こんなにも強烈な香りが放たれているとは思わないけれど、ホントかな?
まるで、辺り一面を埋め尽くすような、目の前すべてをおおうような香り、そんな感じだったからだ。

「リンくーん、確かめてきて。」

「あいよっ、見に行ってくる!ボブおはココでのんびりして待ってていいよ。」

たったったったっ・・・

「アッ、走って転ぶなよ!(おれが後々面倒くさいから・・・。。。)」

「ハァーイ!」

リンくんが香りの中心部を目指して、駆け足で向かっていくのを見送った。

おれはひとり、東屋の窓枠のところに座って、ぼんやりと春の景色を眺める。

クンクン。クンクン。

この甘酸っぱい香りにおれの鼻はやられてしまったのだろうか?この奥にどんな香りがいるのかな?

クンクン。クンクン。

なんとか感覚を研ぎ澄ませてみる。

ちょっとほこりっぽい土の匂いと、黄色の強い黄緑色の新緑の葉っぱたちの新鮮な香り。それらの輪郭をキラキラと際立たせるのは、このお日さまの光だ。
ここにはぽつりぽつりとしかニンゲンがいない。

「あーぁ、春うららか、ってこういうコトだよなぁ・・・ほぅ・・・。うまい酒でも飲みたくなるのぉ。」

おれが目を閉じて独り言をつぶやくや否や、リンくんがおれの隣に戻ってきていた。

「あ、ボブお。聞いて聞いて!木のところの説明見たらね、スモモだったよ。ス・モ・モ!スモモってさーぁ、名前は聞くけれど、こんな花でこんな強い香りがするものなんだねぇー!」

「ほぉー!スモモって、こんな感じかーぁ!おれ、スモモの実って、食べたことあったっけ?」

「いやぁ、ボブおはないんじゃない?私も子供の頃に食べたくらいの記憶しかないもの。普通のモモは食べたことあるけどね?モモよりも、酸っぱい感じ?いや・・・、うーん、なかなか思い出せないなぁ・・・。」

リンくんに言わせれば、子供の頃に買ってもらった”匂い玉”の匂いだという。もしくは”匂いケシ”(香りのついた消しゴムのことだそうだ)。おれは匂い玉も匂いケシも知らないから、おれらの会話がそこで終わってしまった。

・・・。

・・・静かに耳をすませてみると、鳥たちが羽根を素早くハタハタとさせて、あちらこちらを飛び回っている声が聞こえる。

ピィピィピィピィ!
ピィヨ、ピィヨ。ピィヨ、ピィヨ!
ホキュッ!ホキュッ!ホゥーーーホキュッ!

あぁ。ここはとても穏やかだ。

この植物園の門を一歩出れば、モクモクと煙を上らせ油のニオイを漂わせる屋台が連なり、散りゆく桜を楽しむ最後の花見客たちがおしゃべりしながら思い思いに過ごしている。そんな場所に隣接していながら、自然の静けさを全身で楽しめる一角が、ここにはあるのだ。

お日さまの光を浴びて喜び、飛び回る鳥たちの声が鮮明に聞こえる。
甘くて強い香りがうららかな春の風にのってふうわりと、おれの鼻をくすぐる。

ハチジョウキブシと桜の共演
ハチジョウキブシと桜をバックにたたずむライオンのボブお
ピンクの花を咲かせるベニバナトキワマンサクとライオンのボブお
シロバナタンポポみっけ!(ライオンのボブお)
シロバナタンポポ

「おれは、やっぱりこういうほうが、好きだなぁ。」

「え?ボブお、なんて言った?」

「ン。ココは静かで穏やかで、ニンゲンが少なくて、いいな。あとね。スモモ、食べてみたいなぁって。」

うふふ。うふふ。

おれらは満開の白いモコモコを東屋の軒下から眺めながら、肩を並べて笑い合った。

なんてことない、ふたりで過ごすひととき。
なんてことない、ふたりで過ごす秘密の庭。

空っぽになって、気持ちを寄り添わせるのだ。

うふふ。うふふ。

リンくんはさ。


おれから見れば、ニンゲンにもライオンにもなりきれない中途半端などうぶつだけど、それでもね。
おれは、毎日毎日一緒にいて、同じ食べものを食べたり飲んだり、それから同じ場所で同じ景色を見て、同じ匂いをかいで、音を聞いて。
それから、同じ気持ちを共有してる。

リンくんがうれしいと、おれもうれしい。

リンくんがかなしいと、おれもかなしい。

リンくんがつまらないと、おれもつまらない。

リンくんがはしゃいでると、おれもはしゃいでる。

それから、
リンくんがシアワセだと、おれもシアワセだ。

おれ、スモモの花。好きになっちまったぜ。

「うん。わたしもだよ。ボブおが好きなものは、わたしも好き。」

あれ、おれのココロの声、聞こえてたのかな・・・?

フハッ!

おれが声を出して笑うと、その息が小さく春風を揺らす。
庭を埋め尽くす甘酸っぱい香りが、おれらを包み込んだ。

ボブお

おれのお気に入りの、チーバは桜、じゃない佐倉にある植物園だよ!↓↓↓

国立歴史民俗博物館 くらしの植物苑 / 千葉県佐倉市
https://www.rekihaku.ac.jp/exhibitions/plant/index.html
(ちなみに入場料は、ワンコイン!・・・といっても500円じゃないよ、100円だよ!気軽に行けるステキな場所なの)

※後日譚↓↓↓
あのね!お出かけしたときにたまたまスモモのお酒を発見したから買ってもらったの!!!
やっぱり甘酸っぱい味だったー!うまーい!コレ箱買いしたい!
(成城石井Original すももサワー)

「東の横綱 鈴之助 vs 西の横綱 瓜乃花」
https://bobingreen.com/2022/08/30/2554/

「早起きのアサガオ一族」
https://bobingreen.com/2022/08/21/2478/

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Rin(リン)

ぬいぐるみブロガー、Rin(リン)です。 ライオンのボブ家と愉快な仲間たち、そしてニンゲンのケンイツ園長と一緒に、みどりキャンプ場で暮らしています。 ボブ家の日常を、彼らの視点でつづっていきます。

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