お荷物じゃないのよ

いよいよの歳の瀬。
今日はケンイツエンチョー、オシゴト納めの日なんだって。

今年も一年、兼業エンチョーとして、カイシャインとオハナ学園のエンチョーの二足のわらじを頑張ったケンイツのために、おでらはトーキョーへ行くことにした。オシゴト終わりにワッ!と驚かせて、おつかれー!って忘年会をおねだりしに行くんだよ。

アハッ!
ライオンのボブぞです。
朝、ちょっと寝坊したのに、まだおでの横でエンチョーが寝てた。

「おーぅい、今日オシゴト納めじゃねっの?外出するって言ってたよね?」

「ぉぉ・・・おはーに。」

あっ、全然余裕なんだ。じゃ、良かった。

テレワークとツウキンが半々くらいのエンチョー。今日は今年最後のカイシャへ行ってから、外周りして、終わるんだって。
朝の出掛けにひとこと。

「いってきまーす!あ。今日のシゴト、秋葉原で終わるけど?」

「おーーーー!おで、アキハバラだいすき!だいだいだいすきアキハバラーっ!」

これはお誘いに違いない。そうに違いない。間違いない。

おでがそう確信を持つその直前に、すずがおでの肩にやってきた。

パタパタパタパター!

「ねーぇねーぇオヤビンっ!すずもアキハバラ、好きー!」

「そおかそおか、すずも一回行ったことあるもんな。」

「うんっ!すず、アキハバラ行くー!でもひとりじゃいやー!みんなで、行くー!」

「すずちゃん行くならフクも行きたーい!」

「おぅい。。。なんでニーちゃんのこと置いてくんだよお、おれも行きたい。おれもアキハバラ好きー。」

「あら、トーキョー行くの?アワあるかしら?ウフフ」

そんなわけで、なだれ式に、大所帯フルメンバーで行くことになった。
あ、お気づきでしたか?リンくんはおれらのアッシー係としてなくてはならないので、仕方なく連れて行ってやるの。フハッ!

「おおぅ、フルメンバーですなぁ。じゃあ大きいトートバッグじゃないとね。他の荷物は小さくして、と・・・」

“トートバッグのなかで、ギュウギュウのギュウ”

エンチョーを見送ってから、自分のやることそっちのけで、ブツブツいいながら準備を開始したリンくん。

「あれ?なんか、リンくん今日、目が違うよ」

「たまにはアイメイクしたぁ。アイシャドウ久しぶりに塗ったの。あとマスカラもちょっと丁寧にヌリヌリした。」

そんなアイメイクばっちりのアッシー、リンくん。何か勘違いしてる?

「え。えーと、エンチョーにオハナ(家族)連れおデートに誘われたからぁ。オシャレしよかと。」

うーん。。。誘われたのはおでらであって、リンくんは違うけど。
まぁ、ボサボサアタマのアッシーよりはいいか。

「ほら、早く行くよー!さっさと支度終わらせてよね。」

そんなわけで、おでらはいそいそと年末の静かな団地をあとにしてトーキョーへ向かった。

昼どきの電車はすいていて、ところどころ空席がある。あたたかく日差しが差し込んでいて、のんびりした空気が流れてる。周りを見回すと、大きなカバンやスーツケースを持った人たちがちらりほらり。なごみの米屋さんの紙袋を持ってる人は、ハイ、確定。
みな、帰省の様子だ。

おれらはというと、でっかいトートバッグに入ってリンくんの膝の上にいるの。

「なぁなぁ、リンくん。おでらもさーぁ、帰省のご一行様に見えるのかな?」

「ンー。多分・・・ねぇ。見えるかもね。」

リンくんから気のない返事。おでは、周りに聞こえるくらいおっきな声で言ってやったぜ。

「おでらはーーー!お荷物じゃないのよぉ!!!ね?」

でへっ!

「そうそう。お荷物じゃないよ、大事な大事なオハナ(家族)ですから。こないだもさーぁ、旅行中にさ、言われたじゃない?『大きなお荷物、よろしければお預かりしましょうか?』ってさ。その時、私、ちゃんと答えたもん。」

「あ、あのときのリンくんは、おで、ほめてやりたいと思ったよ。係員さんにきっぱり、言ってくれたもんな。」

「『貴重品なので』。」

「神ワードだったな!フハッ!」

そんなことを話しながら、乗り換え駅に着く。気がつけばどんどん乗客は増えていた。帰省する人たちの影はなく、カレンダーやらを持って年末のあいさつ回りをするサラリーマンたちが乗り込んでいた。

「そろそろ、エンチョーも外出したのかな?」

「かもね。アキハバラで待ち合わせだから、先にちょっと家電見てよーっと。うふふ。みんな、お付き合い願いますよ。」

「ビックマップゥ!ヨドバシアキバーっ!」

おれらは待ち合わせ時間までを外国人観光客にまぎれながらうろうろとした。コンパクトカメラを触ったり、おもちゃコーナーでシルバニアを片っぱしから眺めたり、SIMフリースマホコーナーで説明を受けたりした。リンくんは結局何ひとつ買わなかった。

「ンー。カメラはずっと欲しくて探してるけど。スマホは年内限りで安くなってるらしいけど。シルバニアは沼ったら困るから手を出せないけど。どっちにしても、初売りまで待とぉっと。」

“ヨドバシアキバァーっ!”

とぅーんとぅんとぅんとぅーんとぅんとぅん・・・

リンくんのスマホが鳴ったのは、おれらが一通り店を見終えて、ヨドバシの横で夕陽に照らされてる頃だ。

ケンイツエンチョーのオシゴトが終わって、合流しようって連絡みたい。

「UDX前で待ち合わせだってよ。」

「パタパタパタパター!すず、行くー!」

「おぅいすず、焦らないでぇ。待って待って。」

すずがトートバッグを飛び出してリンくんの手に抱っこされてアキハバラの街を飛び回っていると、ケンイツエンチョーがジャケパンにネクタイ姿でやってきた。

「アッ!えぇぇぇんちょぉぉぉぉ!すずのこと、すぐわかったぁぁぁー?」

「アハッ!すぐわかったさぁ。そんなところを自由に飛び回ってるウサギさんは、すずしかいないと思ってね。そんなところで、ウサギさんと写真撮ってるおのぼりさんは、リンくんしかいないと思ってね。」

「あはっ。ばれたかぁぁー。」

そうしておでらはアッシーリンくんに運ばれて、ケンイツエンチョーと無事に会えたのだった。

中央通りのサイゼリヤ、ここは昔エンチョーとリンくんがシゴト終わりに飲みに来てた場所らしいんだけどね。ここでおれらはお疲れのカンパイをした。それから、それから、例のまちがいさがしをして遊んだ。

「今日の私、めっちゃ冴えてる。もう7個見つけたぁ。」

「アッ、おれも7個まで来た。一旦、答え合わせする?」

「するするー。えーっと・・・」

「なぁなぁ、エンチョー、なぁなぁ、リンくん。いつもとやってること、変わんないなー?アキハバラせっかく来たんだからさぁ、もうちょっとなんかないの?」

「ん?ボブぞ。行くよ、この後。サイゼリヤはゼロ次会さぁ。久しぶりに中華行こうぜ。」

「うわぁいわぁい!チューカッチューカッ!」

そうして、おれらはでかいトートバッグに入って、リンくんに抱きかかえられて、夜が始まるアキハバラの街を移動するのだ。

「お荷物じゃないのよ。決して、ね。」

ボブ家の忘年会 in アキハバラ。
おなかポンポン、食べ過ぎぐるじぃーーー!ってなるまで、これから中華料理を食べるのだ!

“いつもとやってることかわらないけど、サイゼリヤでゼロ次会なの!”

一昨日も昨日も、そして、今日も。おでらは、楽しくてかけがえのないイチニチをひとつずつ繰り返して、今日を迎えられている。明日も、明後日も、楽しくてかけがえのないイチニチがやってきますように。

さぁ、大いに年末の宴を楽しもうじゃないか。

カンパーイ!

ボブぞ

“すず、ホシドフだいすき!ホシドフ!ホシドフ!”
“薬膳スープだってぇー!健康で毎日を過ごせますよーにっ!”

「すずのすきなたべもの “ホシドフ”」
https://bobingreen.com/2022/06/17/2164/

「秋葉原にライオンあらわる」
https://bobingreen.com/2022/11/21/3051/

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Rin(リン)

ぬいぐるみブロガー、Rin(リン)です。 ライオンのボブ家と愉快な仲間たち、そしてニンゲンのケンイツ園長と一緒に、みどりキャンプ場で暮らしています。 ボブ家の日常を、彼らの視点でつづっていきます。

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