ライオンの深呼吸
ここ数日、空を眺めてなかったなって、ふと気が付いて、何日かぶりに、みどりテラスに出てみた。
ボブおです。
お天気が悪かったわけじゃない。
体調が悪かったわけでもない。
そう、テラスへの出入り口の窓ガラスのサッシが、すこぶる調子が悪いのだ。
・・・ンガガガガガガ・・・・!!!
急にここのところ、ものすごい音を立てるようになってね。
気になりつつも放置しているうちに、
ガリガリガリガリガリ・・・・・!!!
あからさまにおかしい金属同士のこすれる雑音に成長してしまった。
・・・むぅ。むむむむ!
リンくんが力いっぱい指で引こうとしても、開かない始末。無理やり開けると、今度は閉められない。そんなわけで、なんとなく面倒くさくて、みどりテラスに出る回数がめっきり減ってしまった。いつもだったらちょくちょくイップクしにいくケンイツエンチョーでさえ、ちょっと億劫なのか、タバコの回数が減ってるように見える。
おれの大好きなみどりテラス、出られないの、いやだ、いやだ、いやだ。
それなのに。珍しくリンくんに、お呼ばれした。
ねぇ、ボブお、面白い雲が出てる。
今日は1月の最後の日、31日だ。ちょっとだけ、春っぽいニオイ、してきたよね。鳥の鳴き声もだんだん活発になってきたし、なにより、日が長くなった。
ん?みどりテラス、出られるの?
うん、行こう。
・・・ガ・・・・ガラガラ・・・・。
どうやらリンくん、窓ガラスをガリガリ言わせずに開けるコツを習得したらしい。かなり、慎重な様子だ。とはいえ、閉めるのは苦手らしく、ピシャンっ!と、まだ健在な網戸だけを閉めて、おれらはみどりテラスに出たのだ。
ほらほら、ボブお、みてごらん。ながーい雲!変わったカタチだねぇ。
おわぁ!変なのー!
おれは、ちょっとだけ久しぶりのみどりテラスがちょっと嬉しくて。できる限りのおなかいっぱいに、空気を吸い込んだ。
・・・・スゥぅうううううっ・・・・・
・・・からの。
フゥゥウウウウウウぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅーーーーーーっ!
口をできるだけ、小さく、すぼめて、すぼめて、すぼめて。
ゆっくり、ゆっくり、ゆっくり。
ながーく、ながーく、ながーく。
ひといきに、吐き出す。
・・・ハァ・・・!
フハッ!みてみてみて!リンくーん、みて、みて!おれの長ーい息、雲のカタチになったのっ!
ほんとだぁ。ボブお、すごいなぁ。ボブおが深呼吸すると、雲になるんだねぇ。
フハッ!
おれは自分が吐いた長い息がちょっと面白くて、しばらく眺めてたの。
さわれるのかな・・・?わくわく。いつまで崩れないのかな・・・?どきどき。
おれがうっとりと夕暮れの空を眺めているのに対して、リンくんはというと、どうやってもう一度窓ガラスを穏便に閉めようかと考えあぐねてたみたい。
・・・ガ・・・・ガリガリガリガリ・・・・・・・
あちゃー。。。
ねぇ。おねがい。サッシ、はやく、修理しなよね。
じゃないと、いいお空、見逃しちゃうよ。
ボブお