“トリシマリヤク”に会う

うっす。わっし、ころすけっす。

今日は、リンくんのヤボヨーに付き添い当番。10月だというのに気温は30度近く、汗が噴き出してくる。わっしはリンくんのリュックの中にジーっと潜んでいるのだけれど、正直、風通しが悪くムッとして快適とは言い難い。

なー。どこ行くの?

隣町のターミナル駅だよ。

ふぅん。

フナバシに到着。リンくんはここでヤボヨーを済ませるらしい。

わっしはというと、リンくんのリュックの中でじっとりと汗ばんでいる。アラフォーのクマとしては、加齢臭が気になるお年頃なのよ。クンクンしないでよね、ちゃんと制汗剤してくればよかった・・・。人前に出られないよ、ホンット、早く終わんないかな・・・。

そんなことを考えながら、無駄な動きを完全に排除して、ジッとしてると、急にジッパーを開ける音がして、パッと視界が開けた。

ほうら、フナバシ駅だよ。久しぶりでしょ?

おう、お、おう。急に開けるなよ、びっくりしたぞ。

でも、ようやく外の空気吸えて、すがすがしい。

スゥー。よっ。ころすけっす。フナバシのみなさん、こっそり、コンニチワ。

“久しぶりのフナバシ駅”

無事に用事を済ませたらしいリンくん。リュックの荷物が増えてしまったから、わっしのスペースが減ってまたずいぶんと狭い。ぎゅうぎゅうに詰め込まないでよね、ほんと雑なんだから・・・。

文句いうならさー、もしころすけがよければ、リンくんが抱っこしてあげるよ、一緒に抱っこで電車乗る?

・・・いぃーやぁーでぇーすぅーーー!わっしはね、もういい歳なのよ、恥ずかしいのよ、そんなの。リュックに入ってついてきてやっただけ、ありがたく思えよな。

いやよいやよも好きのうちよぉ、ころすけ、おいで。

リンくんのこういう強引で傲慢なところが嫌いだ。30年以上一緒にいるけれど、本当に、本当に、これまで散々ひどい目に会ってる。

それでも、一緒にいるじゃんね?

うん、まあね。腐れ縁な。

う、ころすけ、憎まれ口ー。もうー・・・!

そんな会話が淡々と繰り返される。何気ない、何もない、やり取り。そう。リンくんとわっしは、同志のような、そんな関係なのだ。

フナバシから、ガタンゴトンと普通列車に乗って、最寄り駅まで。一本待てば急行のほうが先に到着するというのに、わざわざ鈍行を選ぶリンくん。

いいじゃない、鈍行旅。

うむ。たまには、いいね。ガタンゴトン、ガタンゴトン。急行の通過待ちだって、悪くないじゃないか。平日の昼間の電車はガラ空きだ。目の前に座っていたおばあちゃんが駅を降りた瞬間、リンくんがリュックのジッパーを開けてくれた。

“スティッキーフィンガーズごっこー。ジッパーの中からコンニチワ”

到着ー。プラットフォームに降りて、電車を見送る。わっしらは先頭車両に乗っていたものだから、ビリッケツ。ダラダラと階段をのぼり終える頃にはの乗客はすでに改札を出てしまっていた。

おだやかな秋の、駅構内。

ん?

何?どした?

ねぇねぇ、トリシマリヤクがいる。

取締役?

うん、トリシマリヤク。

はて?誰よ?リンくんの知ってる人?上司?それとも有名人?

ほら。かわいいー!トリシマリヤク、ハロウィンの衣装着てるよ!しかも、いっぱいいるよ!

見て見て、ころすけ、挨拶しておいでよ。

かわいい取締役って何よ?ハロウィンの衣装着ちゃうファンキーな取締役?しかも、いっぱい、って役員会議かよ?おーうい。

挨拶するって、わっし、名刺交換とかしたことないよ?そもそも名刺ないし、えーっと、どうしよう???

改札まで歩み寄ると、正解がわかった。

“鳥しまり役”

そこには、わっしよりも体がひとまわりもふたまわりも大きな鳥たちがいた。たしかに、ファンキーな服装をして、しかも、ちゃんと名札を付けてもらっていた。

“鳥しまり役”

あー・・・。合点がいった。しかし、挨拶しようにも、なんだかご立派な様子の”鳥しまり役”たちに圧倒されてしまった。

わっし、ころすけといいます。ども。

リンくんの面倒を見るために今日は一緒にやってきました。あなたたちはずいぶんとご立派なオシゴトをされているようですね。トリシマリヤク、これからも頑張ってください。わっしも小柄ながらいちクマとして、家庭内の平和を保つべく、頑張ります。またお会いしましょう。それではごきげんよう。

“鳥しまり役”会議に参加でっす

そんなことを伝えてる間に、あっという間にリンくんはパスモを出していた。

ピッ。

おおう、挨拶まだ途中ー!そんなこんなで、てんやわんやで電車を降りた。

外は、まだ、暑い。

いつもならバスに乗り継ぐところなんだけど、天気がいいしなんだか気分がいいから、リンくんと、てくてく歩いて帰った。

せっかく電車内のクーラーで涼しくなったというのに、結局またしても汗だくだ。

だし、いつまで経っても、リンくんのペースに巻き込まれて、メーワクなものだ。

ふぅ。わっしにも、トリシマリヤクの肩書くらい、くれよな。あ、やっぱり肩書はいらないや、トリシマリヤク手当くーださーい。

北海道の秋鮭かノルウェーサーモンで、現物支給で、おねがしまーす!へへっ。

ころすけ

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Rin(リン)

ぬいぐるみブロガー、Rin(リン)です。 ライオンのボブ家と愉快な仲間たち、そしてニンゲンのケンイツ園長と一緒に、みどりキャンプ場で暮らしています。 ボブ家の日常を、彼らの視点でつづっていきます。

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