秋を照らすオレンジ
クァアアー。クァアアー。クァアアー。
クァアアー。クァアアー。クァアアー。
もいっちょ
クァアアー。クァアアー。クァアアー。
カラスが三羽。電信柱の上で会合してる。
あ、ひとり、白いうこ、落とした。
ひとりは飛び立ち、ぐるんと旋回してすぐに戻る。
クァアアー。クァアアー。クァアアー。
秋って、やつなのかなぁ。
ボブおです。
なんだか、秋っていうのは、どうにもこうにも、はっぴーなぱーりーぴーぽー!みたいな感じとは程遠くて、
どこか静かな、どこか物悲しい、どこか懐かしい。そんな気持ちになる。
先月のこと。近所の子供たちが夜、花火をしていた、赤い光の小さな公園。気が付いたら、もう葉が黄色く色づき始めて、あちらこちらには枯れ葉が落ちている。決してステキな紅葉、とかじゃないんだ。ただ、ただ、平凡な小さな公園の一本の木の、葉が枯れ落ちていく。葉が枯れるからまた春になるとステキな新しい葉が生えてきて、季節がまわるんだって、わかってる。わかってるのに、それでもなんだか、この黄色が美しいと思えない、おれはまだ、子供なのだろうか。大人のライオンになったら、この黄色が、金色に輝いて見えるのだろうか。
9月がもう終わるね。
キンキュージタイセンゲンが、ようやく、ようやく、ようやく、解除されるんだって。おれ、毎日てれぴでニュース見てるから、知ってるよ。
キンキュージタイセンゲンが解除されたら、みんなでまた、おでまめ、できるかな?神さまに会いに、パンパンっ!とか、モビスケで車中泊遊びー、とか、お花畑でうふふふふ!とか、お外のレストランでおいしいゴハンとおいしいお酒クピクピ、とか、できるかなぁ。ねぇ、できるかな?
ねぇ、できるかな?
隣でポンヤリ本を読んでるリンくんに聞いてみた。
うん。できるんじゃない?
なに、それ。みんなで行こうね、とか計画しようね、とかさー、そういうの、ないわけ?できるんじゃない?って、ちょっと自信なさげに言わないで。連れてってよー。
うんうん、ごめんごめん、本読んでポンヤリしてた。みんなで、どっか行こうね。楽しいこと、面白いこと、いっぱい体験しよう。そうしよう。エンチョーにお願いしてモビスケで連れて行ってもらおうね。
うむ。うむ。
なんだかちょっとリンくんの反応が薄くて理解に苦しむ。けれど、まあ、よしとしよう。
リンくんも、秋が来たことにさみしさを感じてるっぽいから。
今日のみどりテラスは、風が涼しくて、もう半袖じゃ風邪っぴきになっちゃう。おれらはいまだに夏のお気に入りの白Tを着たまま、毛布にくるまってるんだ。弟のボブぞはというと、おれの隣でうとうとお昼寝中。ダイジョブかな?寒くないかな?
クァア。クァア。クァア。
例の三羽が飛び去って行った。
隣の家から、あまじょっぱい煮物の香りがしてくる。
5時か。リンくん。このままテラスにいたら風邪ひいちゃうよ。最近、日が落ちるのも早いしさ、中入ろうよ。
うん。
うん、と言いつつ動かないリンくん。
みどりテラスは南東向きだから、夕日は見えない。でも、隣の建物をかすかに照らす、オレンジ色の光を眺めるのが、好きだ。
クンクン。
焼き魚の香り。
あー、今日の晩メシ、おさかながいいな!
はいよ、お買い物、行ってこようかねー?
おう。仕入れ隊よろしくね!メシタキ、よろしくな。
9月の終わりの、夕暮れ。いつだって、みどりテラスは、平和な風が吹いている。
今夜は月が見えるかもね。
また、日が落ちたら、見に来ようっと。
ボブお