“チーバくん”の志津(しづ)かなる情熱 – オトモダチとゆくチーバ観光 その1
「はーいっ!コッチ目線くださいねー。”チーバくん”、ホラっ、カメラ見て。あれ、シエロさん、もちょっと上かな?あ、そうそう、そう!いい感じよー。はーい、じゃぁ撮りますねー!」
カシャカシャッ
カシャカシャッ
冬の快晴の空のもと、三体のチーバくん像を前に、おれらはそろってポーズを決め込んだ。
ライオンのボブおです。
おれら、といっても、今日のおれらはちょっと違うんだぜ。・・・あ、つい、語尾にだぜ、とかカッコつけて言っちゃった。フハッ。
あのね、今日のおれら、というのは、ボブ家三兄弟に加えて、はじめましてのオトモダチ4人との、総勢7人なの。
今まさにね、待ち合わせが無事にできて合流して、さっそく記念撮影中なんだ。千葉県の公式キャラクターであるチーバくんの像が三体も並んでいるその前で、オトモダチの”チーバくん”たちとね。
アハッ、何言ってるのかいボブお、って感じだよね。
うふふ、リンくんがシャッターを連写している間に、ちょっと解説するね。
今朝、オトモダチの”チーバくん”御一行さまが、はるばるオーサカっていう街から、おれらの暮らすチーバ県(千葉県)まで会いにやってきてくれたんだ。それで、今日はおれらライオン三兄弟が、イチニチ、チーバをご案内するお約束をしていたの。在住のおれらも普段行ったことのないところや見たことのない景色を、一緒に観光するキモチで楽しむんだ!
さぁて、ここで、オトモダチ御一行さまを紹介するね。
まずは、チーバくんの”チーバくん”。それから、ひざきつねの”シエロさん”、茶トラひざねこの”ベルデさん”に、絶滅動物ステラーカイギュウの”ギュウさん”の4人だよ。
そして、その4人のニンゲンのパートナーさんは、“のぞみさん” というよ。のぞみさんとリンくんとは、ニンゲンがやるTwitterってやつで1年半ちょっと前にオトモダチになって、それ以来、おれらもずっと交流してきたんだ。
のぞみさんのおうちの”チーバくん”はね、いわゆる千葉県のイメージキャラクターであるチーバくんの公式グッズで、オーサカでチーバ県のイベントがあったときにのぞみさんにお迎えしてもらったんだって。うれしいことに、”チーバくん”ってばオーサカ暮らしになって以降、チーバ県に里帰りするのは初めてなんだそうだよ。
※Rin注: 千葉県の公式キャラクターチーバくんと、のぞみさんと一緒に大阪からやってきたぬいぐるみさんのチーバくんを区別するために、後者はクォーテーションマーク(””)付きで”チーバくん”と記載することにします。
「はじめましてチバ!こんにチバ!よろしくチバ!」
「おぉ!はじめましてー!こんにちわーに、ボブおです。会いたかったよ!」
「会いたかったチバ!」
モフモフモフモフ・・・!
モフモフモフモフ・・・!
おれらが、念願の、本当に、念願の初対面をようやく果たしたのは、たった30分前のことだった。
キンヨービの朝10時半ちょっと前。
チーバ県は佐倉市の志津(しづ)という京成電鉄のローカル駅で、のぞみさん御一行さまと無事に合流した。のぞみさんたちは今回ピーチ・アビエーションというピンク色の飛行機の早朝便でチーバまでやってきていて、成田空港から志津は約40分くらいの距離だ。正直チーバ人にとってもその周辺に暮らす人じゃなきゃあ利用することもないかもしれないくらい、あまり用事のない駅だと言ってもいいと思う。
(待ち合わせのお話はコチラ → 「待ち合わせのドキドキドッキン」)
それなのにね。それなのに、うちのリンくんが事前にのぞみさんに提案した、「”チーバくん”里帰り旅プラン」では、3つの案のすべてに、この志津駅が入っていたんだ。
「リンくんさぁ、のぞみさん御一行さま、ホンットに志津に来てもらうの?」
「え?ダメかな?」
「うーん、、、ダメとは言わないけれど、ホンットにいいの?チーバくん以外、何もないよね・・・?」
「いやー、そうなんだけれどね、でも、チーバくん像に確実に会える場所だからね。提案してみようかと思うんだよね。」
そう。この志津駅の駅前広場には、なぜか、ホントになぜか、チーバくんの大きな像が三体並んでいるんだ。一説には、商店会の人たちが自費で作成したのだとか。
のぞみさんちの”チーバくん”がせっかく里帰りしてくれるなら、きっと大きなチーバくんに会いたいに違いないってリンくんが言い張るんだよ。
「ダイジョブかな・・・、ホンットにほかにやることないんだけどな・・・。」
「まぁいいじゃん!志津で写真撮り終えたら移動しよう。ね?いいでしょ。」
「うむ。わぁった。」
おれは最終的に合意したのだった。
カシャカシャッ
カシャカシャッ
ニンゲンたちによるおれらの撮影会はまだ続いている。のぞみさんも、スマホでアッチからコッチからいっぱい写真を撮ってくれていて、おれからすればいつもリンくんしか撮られることがないから、ちょっと新鮮なキモチがする。
「ハイッみんな、スマーイル!ちょっとキンチョーした顔してるよ。リラーックス!」
おれはいつだって笑顔のつもりだけれど、やっぱりちょっとだけ、はじめましてのドキドキが顔に出ちゃったかな?もうひとつキュッと口角を上げてみて、それから、ひとつ深呼吸をした。
スゥ・・・ハァ・・・
ん?・・・クンクン
おれらが陣取っている駅前のチーバくん像広場の背中側にある駅前時計台では、ペンキの塗替え作業の真っ最中だった。ちょっとシンナーっぽいニオイがおれらの鼻を刺激してくる。どうぶつのおれらはニンゲンよりも鼻がいいから、どうしてもガマンには限界がある。
「ンー。作業のオジサンたちがどうしてもフレームに入っちゃうなぁ・・・。入っちゃうけど、それはそれで、良い思い出ってことで、いいかな?」
リンくん・・・写真にこだわりがあるんだかないんだか、よくわからないけれど、とりあえずカメラマン、納得はしたみたい。
「ハイッ!いいと思いまーす。各自戻ってヨシ。シエロさん、ベルデさん、”チーバくん”、ギュウさん、おつかれさまでした。」
ふぅ、ようやくペンキのニオイから開放される、良かった、とホッとしていると、おれの横にいた”チーバくん”は振り返って、ペコッと一礼をした。
「はーいっ!センパイ、ありがとチバ!」
「ン?センパイって何?誰のこと?」
おれが”チーバくん”に質問をすると、丁寧に答えてくれた。
「センパイっていうのは、本家のチーバくんのことチバ。三体ものセンパイに会えてうれしかったチバ!」
「なるほどぉ!のぞみさんちの”チーバくん”はチーバくんのことをセンパイ(先輩)と呼んで慕ってるんだね。とってもステキなことだね。まさに里帰りして、会えてよかったね。」
「そうなんだチバ!よかったチバ!」
おれが心配していた志津駅でのチーバくん像前での撮影会はどうやら成功に終わり、本当に心底ホッとしたよ。リンくん、ときにはいいアイディア出すじゃん、と少し見直したけれど、口に出すのはやめておいた。ホラ、リンくんのやつ、ホメるとすぐ調子に乗るからさ。
「あー、”チーバくん”に喜んでもらえたみたいで良かったです。多分、いい写真、撮れてます。うふふ、うふふ。」
すでに自画自賛しているようだったから、やっぱりおれはスルーしておいてよかった。
撮影会が終わってもなお、後方ではポーズを一切くずさない三体のチーバくん像がいた。改めてよく見ると、こぶしを振り上げ、その浦安市の舌*をペロリと出して、スローガンの書かれたたすきをナナメにかけて、三人揃って志津を推しまくっていた。
*チーバくんは千葉県の地図を模してデザインされています。舌の部分は、浦安市の位置だと言われています。
「志津を盛り上げよう!!」 「志津駅南口商店会」 「みんなで頑張ろう!!」
うーむ、志津駅に何もないって言ってゴメンなさい・・・、でも今日はこれから予定があるのでコレで失礼します、また今度お散歩に来ますから・・・、とココロのなかでそう唱えて、それから、みんなで振り返ってアリガトぉーサヨナラーって手を振った。
ニンゲンたちは移動させていたベンチを元の位置に戻し、それから、”チーバくん”たちはのぞみさんのもとへ、そしておれらライオン三兄弟はリンくんのもとへ、それぞれのトートバッグのなかに入った。
「さぁて、じゃぁ移動しますか。」
時計に目をやると、まだ11時前。ペンキ屋のオジサンたちは作業を続けながらも、おれらの撮影会の一部始終を見届けてくれていたにちがいない。
さぁ、”チーバくん”の里帰り旅は始まったばかり。
ひざきつねのシエロさん、ひざねこのベルデさん、それから、謎の動物ステラーカイギュウのギュウさん。みんなのこと、もっと知りたいな!いっぱいおしゃべりできるかな、どんなものが好きかな?今日イチニチでどれくらい仲良くなれるかな?
おれ、今日をとっても楽しみにしていたんだから。
「さぁさぁ、みんなー!次の目的地、チーバ市(千葉市)へ、レッツゴーだチバ!」
アハッ!あれ、おかしいな。本当はおれが案内人だったはずなのに、”チーバくん”に先導されちゃったよ!
“チーバくん”は、きっと、オーサカで暮らしている間にも、チーバに対する静かなる情熱、いや、志津(しづ)かなる情熱を抱いて、今回、満を持して里帰りしに来てくれたんだろう。
おれはそんなことを考えながら、スタスタと元気に前を歩く”チーバくん”の後について、志津駅前を後にしたのだった。
(続く)
ボブお
シエロ&ベルデ さんX(旧Twitter)アカウント: @cieroandverde
千葉県に住む不思議ないきもの チーバくんの広場 公式ホームページ
https://www.pref.chiba.lg.jp/kouhou/miryoku/chi-ba-kun/index.html
4件のフィードバック