さようならモリシア

「おわぁ!!!ツダヌンだっ!ツダヌーン!コッチ向いてぇ!お願いしまぁす!」
並んでいた行列を離れて、思わずスマホを取り出すリンくん。リンくんの後ろで話し込んでいたマダムおふたりもびっくりだ。
カシャっ!
「あいやいや、失礼しました・・・!
口ではそう言うけれど、なに食わぬ顔で行列に戻るリンくん。いくら数秒とはいえ、離れたじゃんよ?ン?と思っていたら。
「あぁらいいわよー。ねぇねぇ、あのコ、なんて名前なの?」
「ツダヌンです」
「へ?」
「ツ・ダ・ヌン。津田沼だから。」
「あらそぉ。うふふ、ツダヌンね。明日も来てくれるかしら?明日はね、あたし、孫と来るのよ。」
「たぶん来てくれますよ!かわいかったですねー。明日はイベントもあるらしいですよ!あ、今日もやってますけどね、土日はもっと混むでしょうねぇ。あ、どうも、失礼いたしました。」
ウフフオホホホホと笑いながらリンくんは行列の前方に振り返り、何事もなかったかのように手元の文庫本に視線を落とした。
うちのリンくんの悪行に目をつぶってくれた、心優しきマダムたちに感謝。

こんにちわーに!
アザラシのフクこと、鰒太郎でっす。
今年2025年3月30日で、津田沼駅前の商業ビルMorisia(モリシア)が閉館する。
津田沼(つだぬま)という街が全国的にどれくらい知名度があるのかはわからないから、ちょっとだけ説明するね。
チーバ県(千葉県)北西部、船橋市と習志野市にまたがってJR津田沼駅がある。総武線が通っていて、トーキョー都内へ通勤通学するにも利便性が高いし、快速も停まるターミナル駅だ。それにもかかわらず規模は決して大きすぎず、あくまで地元民向けの街だと思う。
津田沼には3つの駅、JRの津田沼駅と京成電鉄の京成津田沼駅、それから新津田沼駅(若干ややこしいが、3月末までは新京成、4月から京成に吸収合併される、地元民と鉄男鉄子以外は知らなくてもいい情報だ)があり、互いに少しずつ離れている。それぞれの駅を取り囲むように繁華街が広がっていて、百貨店は(今はもう)ないものの、ショッピングモールがいくつもあるからファミリー層からシニアまでいろんな人がいるし、バス路線が発達しているから学生もいっぱいいる。全国的に名のしれたチェーン店なら飲食店も衣料品店もたいがいあるし、パチンコ屋もカラオケ店もあるし、なんなら、きらびやかな夜のお店が連なるオトナ向けの裏通りだってある(あっ、フクはタテゴトアザラシの赤ちゃんだから夜は出歩かないもんね)。
千葉県の繁華街といえば、千葉駅や柏駅、次いで船橋駅や松戸駅なんかがあるけれど、それらよりももうちょっとこぢんまりした街。最近開発されたんじゃなくて古くから栄えていて、近隣に住む地元民の遊び場であり生活の場、それが津田沼である。
一昨年はPARCO(パルコ)が閉館するといって、少なからずニュースになった。
さらに、昨年はイトーヨーカドーが閉館するといって、やはり少しだけニュースになった。

そして、さようならモリシア。
明後日、閉館するんだって。
津田沼、閉館ばっかりじゃん。

モリシアに関しては建物の老朽化が主な理由で、これから数年かけてタワマンつきの商業施設に再開発するらしい。パイプオルガンを有する習志野文化ホールも生まれ変わるらしい。
きっと大きく街並みが変わるだろうね。…ま、そこまで頻繁に来てたわけじゃないけど。
「ハァー。月に1度やそれくらいしか来てなかったわたしがいうのもなんだけどさ、さみしいのーぉ。」
「モリシア感謝くじ」の券を握りしめながら、リンくんがつぶやく。今日から閉店日までの3日間限定の有効期限で、それを目当てのニンゲンたちでこの大行列が成されているらしいことがわかる。軽く100名以上の列の最後尾につくと、「約1時間ほどかかります」と申し訳なさそうに説明する係員のおニーさん。まぁ、このために来たし、一応閉店の記念だし…と思って行列嫌いのリンくんが並んでみると、実際のところは係員さんたちの誘導が素晴らしくスムーズに進み、そこまではかからなそうな雰囲気だった。
「フクもねーさみしいの。大好きなお魚やさん、角上魚類がなくなっちゃうから。」
「そだねぇ。角魚(カクギョ、と我が家では呼んでいる)のお魚、まじうまだもんねー。」
リンくんとそんな話をポチポチしていたら、突如として、クリーム色の…というには残念ながらかなり灰色がかってしまった、ツダヌンがやってきたというわけだ。アタマの上にはにょろりと芽の出た鮮やかな黄緑色の葉っぱをのせている。
ちなみにツダヌン、うちのハンペン(Suicaのペンギン)と同じ、イラストレーターのさかざきちはるさんのデザインで、「森の妖精」だそうだ。
https://www.yurugp.jp/yvs/vote/detail/00002205
https://sakazakichiharu.com/index.html
フクにとって、最初で最後の動くツダヌン。
真正面からの撮影はかなわなかったけれど、リンくん、真横のアングルでなんとか1枚撮れたらしいよ。ホントはフクと一緒にツーショットを撮ってほしかったところだけれど、リンくんがくじを終えた頃には、ツダヌンは妖精の森に帰ってしまったあとだった。
ほんの一瞬の出来事だったけど、きっとフクが来たから、ツダヌンも森から遊びに来てくれたんだよね。フク、うれしかったの。

ツダヌンへ。
妖精の森に帰ったらね、まずはゆっくりお風呂に入って、思いっきりふわっふわに泡立てたせっけんで、ピカピカのクリーム色の肌に戻るまですみずみまで洗ってね。これまでいっぱいおシゴトして津田沼のみんなを喜ばせてくれてありがとう。
また、新たな姿で会えることを楽しみにしてるね。
何年かして新しいショッピングモールができたら、それはモリシアかどうかはわからないけど、そのときはまたさかざきちはるさんがキャラクターデザインしてくれたらいいなぁ。
ありがとうツダヌン。
さようならモリシア。
( あ。ちなみにリンくんは3回くじを回したけれど、残念ながら全部ポケットティッシュでした。アハッ!)
フクでした!
フク(鰒太郎)


※2025年3月30日(日)に閉館
▼おまけ▼
モリシア外では屋台やらステージやらイベントをやっていて、たまたま通りがかったときに演奏していた和太鼓チームの演奏がめっちゃカッコよかったの!お祭りっぽくて楽しかったよ。
佐倉太鼓衆
https://www.catv296.ne.jp/~taikoshu/


https://bobingreen.com/2025/02/20/12696/