ボブこおねえちゃんの魔法の読み聞かせ
「『くじらはくじら』。はじまり、はじまりー。」
ライオンのボブこおねえちゃんが、とある絵本を手にして、オラの横でお話を始めたよ。
おっす!オラ、パブロヲ!
「なぁなぁボコちゃん、コレ、どんなご本なの?」
オラが質問すると(オラはボブこおねえちゃんのことをボコちゃんと呼んでいる)、ボブこおねえちゃんはただ、シィーっと静かに指を口の前に差し出して、それからオラのほうをジィッと見た。
その目は、いつにも増して青くて、清らかに澄んでいるような気がする。オラが知っている青空よりももっと濃い青で、えぇっと、深い青、といったほうがいいかもしれない。
ボコちゃんの青い目がまばたきをするたびにキラキラと色が変わるのが気になって、お話がちっともアタマに入ってこない。
あぁ、オラ、やっぱりハシビロコウだし、鳥アタマってやつなのかなぁ・・・。はぁ。
すると。
「ドッボーン!!」
ボブこおねえちゃんが、とびっきりの大きな声で、まるでライオンがほえるかのように叫んだのだ!
「ひゃぁ!ボコちゃん!急に大きな声出さないでよぉ!オラ、ライオンかと思ってびっくりしたじゃない!」
「アラ。わたしはライオンだもの!んもー。パブロヲ、全然聞いてなかったんでしょ?」
「だって・・・ボコちゃんの目が、青くてキラキラしてたから。」
「ふふふ。そうなのね。じゃあ、ちゃんとお話聞いてたってことね。」
「???」
オラはお話に集中できていなかったことをボブこおねえちゃんに悟られて恥ずかしくなった。
でも、ボブこおねえちゃんの真っ青な目に映る、美しい海や陸や空、そして宇宙の色と、くじらをはじめとしたどうぶつたちの姿は、きちんと見ていたもんね。
「あれ?んで、『ドッボーン!!』の続きは?」
オラがまた口を挟むと、ボブこおねえちゃんは、そぉっとやさしく、ほほえんでくれたのだった。
その真っ青な目がとろけるくらいに、にこにこと。
「はい、おしまい。」
「ふーむ。オラ、もいっかい読んでほしいの!今度はちゃんと集中するから!」
「うふふ。パブロヲはやっぱりゲージュツ肌よねぇ。いいわよ。じゃあ今度は一緒にページをめっくてちょうだいね。」
「おっす!オラ、絵本好き!」
ボブこおねえちゃんの読み聞かせは、まるで魔法。
ボブこおねえちゃんの声と目の動きを眺めていると、オラの目の前に、たぷんたぷんとした海が広がってくる。かと思えば、気がついたらお星さまが輝く夜空になって、宇宙まで行っちゃった!
結局オラはその後もボブこおねえちゃんに3回読んでもらって、そのあと、自分でも読み返してみたんだ。
「オラ、ボコちゃんの青い目越しに見た、暗い海を泳ぐお月さまが忘れられないよ。」
そう。自分で何度読み返してみてもね、ボブこおねえちゃんの目の中に光る、ゆったりとしたお月さまの姿が焼き付いてるんだよね。
あとから聞いた話だけれど、この絵本は、ボブこおねえちゃんのオトモダチのかえるさんの主さんである、しろがねみつきさん、という絵描きさんが描いた作品なんだってさ。とても特別な絵本なんだって。
うちのリンくんも、ボブこおねえちゃんも、しろがねみつきさんの絵が好きなんだって。
「だから、パブロヲはゲージュツ肌なのよね。」
「ううん。ボコちゃんが魔法をかけてくれたんでしょ?」
「うふふ、そういうことにしておこうかしらね。その代わり、絵を描いてくれる?」
「え?いいよ!オラ、絵描きさんになる!」
「楽しみにしてるね。」
見る人の目がキラキラと光を放つような、そんなステキな絵を描きたいなぁ!
そして、いつかオラも絵本を描いて、ボブこおねえちゃんに魔法の読み聞かせしてもらいたいな。
だって、オラはパブロ・ピカソ巨匠からお名前を頂戴したんだもんね、きっとできるもん。
オラの夢へのお話、はじまり、はじまりー。
パブロヲ
画家 しろがねみつき さん 公式X: @shiroganemitsu
かえるさん X: @pickmarch2525
しろがねみつき さん作『くじらはくじら』
https://x.com/shiroganemitsu/status/1792752203050209395
▼※2023年1月にしろがねみつきさんの個展へ行ったときの様子はコチラ▼
「かえるさんとえかきさん」
https://bobingreen.com/2023/01/13/3457/
▼パブロヲの命名秘話はコチラ▼
「命名 パブロヲ – 『コート・ダジュール』に憧れて」
https://bobingreen.com/2024/02/22/8316/