勘九郎とハンペンとの出会い
「こんにちペン!」
ハテ?だぁれ?見慣れぬ顔に、わっしは首をかしげた。
「おう?こんにち・・・ペン?我が家ではこんにちわーにっていうんだけどなぁ・・・。えっと、わっしの名前は勘九郎。この家の唯一のペンギンで、スイーツ番長っていうおシゴトをしてるんだ。きみは?」
目の前にいるどうぶつは、まんまぁるいクリンクリンのお目めと、コーヒー豆みたいな形にスマイルしたお口、ホニャンホニャンの小さな手と、やわらかそうなグレーの毛並みをしている。
そう、まるで赤ちゃんペンギンなんだ。
「勘九郎ペン、よろしくお願いしますなの。お名前はたった今つけてもらったの。”ハンペン”だペン。」
目の前のその赤ちゃんペンギンは、わっしの目をジィっと見つめたまま、流暢にニンゲンのコトバを話した。ただモノじゃないぞ、という直感が、わっしのおケツから脳天に向かってズドンと突き上げたのだった。
カンカンカカーン!わっし、ペンギンの勘九郎です。
我がボブ家のオハナ(家族)唯一のペンギンだったわっしにも、ついにペンギン仲間ができたのです。
その名も、”ハンペン”。
我が家の名付け親、ケンイツエンチョーがソッコーで決めた。
「お前さんは、まだ半人前のペンギンだから、ハンペンな。」
なんていう雑さ加減!と驚いていたら。
「それから、ハンペイン、でもある。ペイン(Pain)を半分にする、つまり、その優しいスマイルと手でナデナデして、人の痛みを半分にしてあげることができるコになるんだ。どーだ?いいだろ?」
ケンイツエンチョー、ただのダジャレなのかなと思いつつも、いい話っぽくまとめたのだった。
(「痛いの痛いの、飛んでけー!って全部は飛んで行かないんだね、半分にしかならないんだ。」ってリンくんにツッコまれてたけどな!)
リンくんがリンママちゃん(リンくんの母)の家にひと晩お泊まりして帰ってきたその日、唐突に、ひとりのペンギンが、我が家のソファでくつろいでいた。
もとはといえば、Suicaのペンギンでおなじみ、さかざきちはるさんデザインのキャラクターで、コペンギン(通称: コペンちゃん)として人気のコなんだ。実はうちのリンくんってば、ずぅっとこのコが気になってたらしくってね、以前からお迎えするか、密かに迷ってたらしいの。んで、たまたま新宿のPenstaっていうSuicaのペンギングッズの専門店に寄ったら・・・出会ってしまったらしい。
「ぬいじゃないからオッケーだよね?」とは、事後承認を取り付けたリンくんの主張。
説明すると、我が家では新たにオハナ(家族、ぬいぐるみのことだ)をお迎えするにあたっては、オハナ会議が開かれて、その上でリーダーであるライオンのボブおの最終承認が必要になるというルールがあるんだけれど。
「えーっと、このコは・・・、ぬいじゃなくって、ボディウォッシュだから!!!」
リンくんはそのひとことで、オハナ会議もなにもかもすっ飛ばして、この”ハンペン”氏を独断で連れて帰ってきてしまったってわけ。
「仲良くしてくぅださい!」
わっし、ペンギンの先輩としてしっかりせにゃならん、って急にやる気がみなぎってきて、ついつい、言ってしまった。
「おい、ハンペンとやら、わっしの弟子になる?」
「・・・ハテ?デシ?仲良くしてくれるならデシにしてあげますペン!」
「いや、逆ッ・・・。」
うーん、失敗したみたい。
まだね、たぶんね、コトバがちょっとね。赤ちゃんペンギンだからね、これからしっかり教えないとだね?あれ?むむ。
こうやって向かい合ってみると、ハンペンとわっしの背丈は1.5倍くらい違う。わっしはずんぐりとボリューム感があるけれど、一方、ハンペンのカラダはぺったんこで、自立することさえできないらしいよ。
とはいえ、リンくんいわく、ハンペンはペンギン型のボディウォッシュとしてお店でお迎えを待っていたそうだ。本来はニンゲンがカラダを洗うためのお風呂グッズらしく、手を入れてボディソープをつけて、ニンゲンの汗まみれアカまみれのカラダをゴシゴシされる運命らしい。
だけれど、もちろんハンペンはそのために我が家に来たわけではない。新たなオハナ(家族)として迎え入れて、一緒に暮らすためにやってきた。しかも、我が家には似たようなカラダつきをしたコたちがいっぱいいるから、正直、全然違和感がないんだよね。ボブ家三兄弟やウサギの鈴之助はともにゴルフのヘッドカバー出身で後ろ足が生まれつきなくて、カラダが空洞になってるんだ。だから、ボディウォッシュ出身のハンペンも、きっと彼らとうまくやれると思うんだ。
(ゴルフのヘッドカバーのお話はコチラ → 「すずちゃんの野鳥にびっくりでSHOW – 番外編 鳥さんを好きになった理由」)
わっしがそんな説明じみたことを話していたら・・・。
もぞもぞもぞもぞ・・・
あぁれぇっ!
気がついたら、その空洞の、本来ならばニンゲンの手が入るはずの、ハンペンのカラダのなかに取り込まれてしまった。
ふぅわふぅわふぅわふぅわ
ハンペンのカラダのなかは、外側と同じくホワホワのグレーの毛がいっぱい生えていた。
モコモコふんわりしてて、きもちいーい!なんて思っていたのも束の間・・・、わっし、大変なことになった。
「ひぃぃぃぃ!勘九郎!ヤバイよ!どした?」
リンくんが大きな声で叫ぶ。
ハンペンのカラダのなかからよっこらせ、と出てきたわっしは、自分の姿を鏡を見て驚いた。
ハンペンのグレーの抜け毛が、わっしのカラダのそこらじゅうについていたのだった。
「ぬぉぉ、わっしのクールフェイスが!わっしの自慢の蝶ネクタイが・・・。オォノォ!」
わっしは急遽リンくんに入念に毛づくろいをしてもらって、元通りの姿になるのにしばらく時間がかかった。
(あのときのリンくんが焦りすぎて、残念ながらわっしの勇姿は写真に残っていない。本当に全身グレーの毛玉まみれになった。)
「はー。ハンペン、まずはお風呂入ろうか。ハンペンのおなかのなか、抜け毛だらけみたい。キレイにならないと、オハナのみんなと遊べないね。」
「やったー!お風呂だいすきだペン!」
「あっははは!そりゃあそうだ、ハンペンは、ボディウォッシュなのだからね!」
わっしは痛いほどに膝を打って大笑いし、妙に納得してしまった。
「勘九郎、さっきからさぁ、”首をかしげた”とか”膝を打って”とかずいぶん凝った表現つかってるけど、あーた、首も膝もないじゃん。」
「リンくん・・・、ペンギンには首も膝もないんですぅ!」
「アハッ!そこがカワイイところなんでしょ。勘九郎、ハンペンのことよろしくね。新入りの前でおニーさんぶってるんでしょう?いいんだよ、いつも通りで。」
「ううむ、わっしのこと毛玉だらけにした大物だからなぁ。どんなペンギンに成長するのかな?これからいっぱいいろんなこと教えて、一緒に遊ぶからね!」
わっし、ペンギンの先輩、頑張りまっす!
勘九郎
※おまけ
ハンペンのカラダの内側もモコモコのグレーの毛並みで、とっても気持ちいいのだけれど・・・抜け毛がすごくて毛玉がボロボロと。
というわけで、何も知らずにハンペンのカラダの中に入って遊んだ勘九郎は大変な目にあったのでした。そのときの写真がなくて残念なので、その代わりにハンペンの裏の顔をこっそりと!(裏返してもカワイイのがすごい)
「Suicaのペンギン」ボディウォッシュ
https://x.com/Pensta_JRCross/status/1749356961341345909
※さかざきちはるさんは、Suicaのペンギンを始め、我らがチーバくんなど様々なキャラクターデザインも手掛けるイラストレーター&絵本作家さん。だいすき!
さかざきちはる 公式ホームページ
https://sakazakichiharu.com/
「スイーツ番長あこがれのシェ・シバタ」
https://bobingreen.com/2024/01/23/7846/
「命名 パブロヲ ー 『コート・ダジュール』に憧れて」
https://bobingreen.com/2024/02/22/8316/
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