夏至の梅雨入りとシャイなメイ – リンくんが入院した その6

「ぬいぐるみさんを上手に撮るのって結構難しいのよねーぇ!」

「そうよー、うちはぬいぐるみ用の撮影場所作ってるもん。まあ簡易的なスタジオって感じ?いつもそこで撮るわけじゃないけど。」

笑顔でぬい撮り談義をする、リンくんとリンママ(リンくんの母)母娘。ココがオシャレな街なかのカフェだったらいいのにね。
周りを見回せば、壁もベッドも真っ白けっけ、貼り付けたようなうすピンク色のカーテン。清潔感ばかりで味気のない、病室の一角よ。

アラッ。どーも、はじめまして。
ワタシ、メイよ。シェリー・メイ。
リンママちゃんのおうちで暮らすクマです。よろしくね。

昨日までの天気予報では晴れマークだったのに、早朝目が覚めてみたら、地面が濡れてるの。あいにくの雨降りよ。
エッどうして?ワタシ、今日はリンママちゃんと一緒にリンくんのお見舞いについて行く予定にしているのに。

案の定リンくんからは、こんな連絡が入っていた。

「なんか天気予報がぜんぜん変わっちゃってコッチは昼頃にちょうど大雨のようです。足元悪いのは心配なので、面会は今日じゃなくても良いよ。」

ま、それくらいじゃめげないリンママちゃん。杖つきつつ、すったかすったかと電車とバスを乗り継いでリンくんの入院するビョーインまでやってきた。
もう3度目だから慣れたもの。それもこれも、娘の弱ってるときにこそ、母が元気づけてあげようっていう強い意志なんだと思う。

「やぁー!」

病室に着くなり、ワタシはラアコとともに顔を見せる。

「あれー!今日はメイちゃん来てくれたんだね!」

ホッ。 リンくん、ワタシの名前、覚えてる。まず、そのことに、安堵した。

そう、実はワタシはリンくんと一緒に暮らしたことがあるわけではなくってね、リンくんが我が家(リンママ家のことよ)に遊びにやってきたらお話する程度だったのよね。しかもたーくさんのオハナ(ぬい)たちがいるうちの、ワタシはあくまでそのなかの小さなひとり。
どれくらい認知されてるのかって、実は来てみるまで不安だったんだ。

それに引きかえ、今日一緒にやってきたラアコってば、リンくん自身が先月のリンママちゃんとの名古屋旅行でリンママちゃんにプレゼントしたコでしょう?だからってわけじゃないけれど、なんだかちょっぴり引け目に感じちゃってたんだよね。

(コアラのラアコのお話はコチラ「コアラのラアコがやってきた ラァ!ラァ!ラァ! – ころすけの旅日記(名古屋&伊勢編)その3」

「メーイちゃん。うれしいな。めずらしいね。ありがとうね。」

「・・・うふふ、どういたしまして。」

口ではそう言いながらも、ココロのなかではうれしさを隠しえないの。ちゃんと歓迎してくれてる!うれしい!
来てよかった!

ぴと。

気がついたら、ワタシ、ラアコにずっとぴっとしくっついてる。

「メーイ!」

ラアコはそう言って、ワタシのことをハグしてくれた。

「アハッ!ねぇねぇ、ラアコが母性発揮してるみたい。来たばっかりの赤ちゃんコアラのはずなんだけどな、お姉さんみたい。」

「メーイ!」

そのあとも、なぜかラアコがたかいたかーいみたいに遊んでくれたり、仲良くツーショット写真を撮ってもらったりしたワタシたち。

「なんだかラアコとメイちゃんはぴったりな仲良しコンビだねぇ。」

「そうねー、メイちゃん連れてきて良かったわぁ。」

うふふ、うふふ。

リンくんがワタシたちを撮影する姿(コレがうわさのぬい撮りってやつなのね!)をずっと眺めているリンママちゃんも、安堵の表情だ。

リンくんの入院生活も2週目に入って、少しは慣れてきたみたい。高熱と全身の発疹で緊急入院となったわけだったけれど、いまは熱も下がって点滴も取れたらしいわ。ただね、強いおクスリを投与してるから、その減量コントロールは通院ではダメみたいでね。もうちょっとしばらくはビョーイン暮らしが続くみたいなの。

退院時期はまだ決まってないけれど、必ず元気になって戻るからねって、毎日言ってるらしいよ。

ワタシはいま、このビョーインのなかではたった20分間の面会しかできないけれど、しかるべき場所でリンくんを待ってるってことはずっとできる。がんばれって応援したり、タイジョブって励ましたりすることも、どこでもできる。

ニンゲンとオハナ(ぬい)ってね、常にそばに一緒にいられたらそれはとってもシアワセだしうれしいことだけれど、ワタシとリンくんみたいに、もともとベッタリな関係じゃなくたって、いくらでも繋がりを持てるんだ。

そう、ワタシが恥ずかしがりさえ、しなければね。

ワタシはシェリー・メイ、シャイなメイはもうやーめた!自信を持って、ラアコに負けないくらいドッシリと構えてみよう。
それから、笑顔ね。

じゃあねまたね、ママ、足元気をつけて帰ってよー、とかゴチャゴチャ言いながらエレベーターホールで手を振るリンくん。
あぁ、もうバイバイの時間だ。

「あ、メイちゃん、ラアコもありがとうね。」
ですって。

うん、「ありがとう」は、コッチもだよ。

家に帰りひとしきりすると、リンくんから今晩のゴハン(病院食)報告のLINEが来た。

「今日は雨の中来てくれてありがとう。帰りは大丈夫だったかな?」

「こちら今日の晩ごはんは夏至仕様?でした。ちゃんとすてきな暦のカードがついていて、生姜と三つ葉の混ぜご飯、メロンがあってちょっとひと味こだわりがありました」

そっか。今日、夏至だったんだね。

夏至の日に関東は梅雨入り宣言した。
ワタシはシャイ・メイを卒業して、リンくんのお見舞いにちゃんと行けた。

ワタシにとって特別な日。
リンくん、ちゃんと見てるからね。

「メーイ!」

あ、ラアコと一緒にね!

メイ

「リンくんの外泊 – リンくんが入院した その1」https://bobingreen.com/2024/06/14/9441/

「入院患者の皆さまへのお願い?否、鰻とおれのたんじょうび – リンくんが入院した その2」https://bobingreen.com/2024/06/15/9456/

「すずフクコンビの急速充電ソング – リンくんが入院した その3」https://bobingreen.com/2024/06/16/9467/

「くまーなカフェの差し入れ – リンくんが入院した その4」https://bobingreen.com/2024/06/19/9495/

「もっつは一時失業中 – リンくんが入院した その5」https://bobingreen.com/2024/06/20/9515/

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Rin(リン)

ぬいぐるみブロガー、Rin(リン)です。 ライオンのボブ家と愉快な仲間たち、そしてニンゲンのケンイツ園長と一緒に、みどりキャンプ場で暮らしています。 ボブ家の日常を、彼らの視点でつづっていきます。

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