ふわふわイケオジもっつ
シュッシュッシュッシュシュシュシュ
シュッシュッシュッシュシュシュシュ
「いやー、やっぱりもっつのうこ💩はでっかいねぇ!アハッ!」
リンくんは茶色いまぁるいカタマリを見て、キャッキャキャッキャと笑った。
ホント、つくづくデリカシーのないヤツだと思う。おれはもう数十年以上、リンくんと一緒にいるのだけれど、子どもの頃のほうがもっと大人びていた。いいオトナ(しかももう中年ど真ん中だ)になった今、どうしてそんな小学生みたいなワードで喜べるんだろうか。
(Rin注: 我が家では💩のことを「うこ」と呼んでいる。間に「ん」は入れない)
うっす、ツキノワグマのもっつです。
桜の花を散らしに散らした春の嵐が去り、今朝はとってもよく晴れておだやかである。
おれは弟のころすけとふたりで、だいすきなみどりテラス(我が家のベランダのことだ)でおひなたぼっこ中。
おれらオハナ(家族、ぬいたちのことだ)は、順ぐりにブラッシングをしてもらう機会があるのだけれど、今日はおれたち、ツキノワグマのオッサン兄弟の日だ。
他のみんなは豚毛でできた毛玉取り用のブラシを使うことがほとんどなのだけれど、実はおれだけ、専用のブラシがあるんだ。まぁ、とはいっても、プラスチックでできた、目の荒いショボイやつなのだけれど、一応、おれ専用なの。
おれは我が家のオハナのなかでイチバン毛足が長くて、しかも毎日リンくんと添い寝するものだから、背中やおしりや、アッチコッチの毛が寝てしまって、しまいにはドレッドヘアみたいに固まってきてしまうんだ。
だからね、それをほぐすために、目の荒いブラシを先に通してもらって、それから仕上げをしてもらうのさ。
リンくんは、みどりテラスにアウトドアいすを出して、そこに座っておれを抱きかかえたまま、かれこれ小一時間も全身をくまなくブラッシングしてくれた。
すると。
茶色いまぁるいヤツができたってわけさ。まぁ、いうなれば抜け毛のカタマリだよ。ピンポン玉よりも大きいくらいの、ふわふわ。コレがおれの全身から出来上がったっていうんだから、ちょっと子分みたいな気になってくる。
「もっつのうこはやっぱりふわふわだね。」
「ン、そりゃそうだろ。・・・ってオイ!うこじゃないし。」
「アハッ!うん、抜け毛だけどさ。排泄物には変わらないでしょ。」
「そーいうの、ヤメてくれよ。」
「でも、もっつ、めっちゃくちゃふわふわになったよ。ふわふわの”イケオジ”クマだよ!」
「おぉ、そうか。じゃぁ蝶ネクタイでもすっかな?」
「うーん、いいけど、ハダカに蝶ネクタイじゃぁアキラ100%になっちゃうよ?」
「新しい服もみつくろってくれよ。」
「もっつサイズか・・・、140cmだよね。カッコいいのあるかなぁ。子供服じゃなぁ・・・。」
みどりテラスでは、おれの愛用しているピンクのラコステポロシャツが洗濯されて風になびいていた。
「まぁ、おれはピンクが似合うから、いいんだよ。」
「乾いたら、また着させてあげるよ。」
「あぁ。じゃ、しばらくはハダカで過ごすぜ。」
「いやーん!カッコいいじゃんもっつオジサン。」
・・・。
ま、そんな感じなのよ。
おれ、でっかいうこして・・・あ、いや、でっかい毛玉とってもらって、スッキリふわふわよ!
今、おれを抱っこすると、すんげぇー気持ちいいぞ。
「もっつぅー!ふわふわだいすき!」
もっつ