チーバの空に茜色の羽根がはえる – オトモダチとゆくチーバ観光 その3
「今日は、4時50分頃にアチラから日が沈むのが見えますよ。亅
ナイス、店員さん!
まさか海に夕陽が沈む姿を見られると期待してココへ来たわけじゃなかった。だけれど、確かに言われてみれば、この時間帯の展望台といえば、夕景を見るには絶好のロケーション。なぜ、いつもだったら簡単に気が付きそうなことに、思いもよらなかったのだろう。
360°パノラマの展望室のカフェの中で、京葉工業地帯を眼下に眺められる南側の席を取っていたわたしたち、店員さんのご親切なひとことを耳にして、「じゃあせっかくだからあと30分くらいしたら西側の席へ移動しましょうか」、と約束してそのままおしゃべりを続けた。
こんにちわーに。ライオンのボブこよ。
今日は、オーサカから来たオトモダチののぞみさん御一行さまと一緒に、チーバ観光をしているの。午前中に待ち合わせをして、ひとつめの目的地、佐倉市は志津のチーバくん像前で記念撮影。そして電車でチーバ市内へ移動してきたあとは、チーバ県庁の展望レストランでランチを楽しんだり、チーバくんギャラリーを回ってきたよ。
(志津編はコチラ → 「”チーバくん”の志津(しづ)かなる情熱 – オトモダチとゆくチーバ観光 その1」)
(チーバ県庁編はコチラ → 「おいしい楽しいチーバ県庁へ初潜入 – オトモダチとゆくチーバ観光 その2」)
のぞみさん御一行さまに直接お会いするのは今日が初めましてだったけれど、正直そんなこと忘れてしまうくらい、リラックスして気持ちよく過ごせているの。
「リンくんの最初のキンチョーは一体ドコへ行ってしまったのかしらね?」
わたしがそう聞くと、
「みんなのおかげ。」
とリンくんは笑顔で返した。
みんな、とリンくんが指しているのはわたしたちライオン三兄弟だけじゃなくてね、のぞみさんちのぬい御一行さま、つまり、ひざきつねのシエロさん、ひざねこのベルデさん、チーバくんの”チーバくん”、そして、ステラーカイギュウのギュウさんを含めた、みんなのことだと思うの。もちろん、のぞみさんもね。
ニンゲン同士もぬい同士も、同じ景色を見て、一緒に食事をして、会話を重ねて、そうやってココロが通い合っていくんだね。
さて。県庁前駅から千葉モノレールに乗り込んで、つかの間の空中旅を楽しんできたわたしたち。チーバ市民の生活の足でもあるその乗り物は、モノレールの方式としては懸垂型といって、実は日本国内では2ヶ所しかないめずらしいものなのだという。
終点の千葉みなと駅は、文字通り、千葉港の入口でもある。JRとの乗換駅でもある駅前には立派なロータリーがあるし、ビジネスホテルが点在するほか、結婚式場やオフィスビル、それから高層マンションが多く立ち並ぶエリアで、都心へも通勤できるベッドタウンの役割も果たしているように思う。平日だからか、観光客の姿はほとんどなくて、歩いているニンゲンはオシゴトの人かご近所さんのどちらか、という印象だった。
わたしたちは、すぐそばでビジネスのお電話をしているスーツ姿のオジサマのジャマをしないように気をつけつつ、海をバックに千葉港のモニュメントと一緒に記念撮影をすることにした。おだやかな日和とはいえ、心地よい程度の海風を感じる。
わたしたちが座る場所を確保するために、持参のしきものを敷こうとしたリンくんの手が、その風にふぅわりとあおられた。
「あわわ。。。」
すると、その途端にシエロさんがひとこと、ニコッと笑顔を見せた。
「わたしに任せて。」
ほぅら、と言って、そのしきもののど真ん中まで歩いていくと、どっしりと腹ばいに座り込んだ。
「さ。これで大丈夫。みんな、わたしのまわりにおいで。」
シエロさんはひざきつねさん。のぞみさんのおうちに初めてやってきたぬいさんなのだという。のぞみさんのオトモダチがひざきつねさんの写真や動画をTwitter(X)にアップしているのを見て、あまりのそのかわいさといやしに、すっかりトリコになってしまったのだという。それで、のぞみさんご自身も、サンレモン社のひざきつねさんをお迎えすることになったんだって。
のぞみさんの初めてのぬいさんで、パートナー。それがシエロさんってわけね。
「シエロさん、ありがとう。さすがね。」
そう、今日直接お会いしてみてわかったことがあるの。シエロさんってばね、わたしたちライオンのボブ家よりもずっと体重が重いの。シエロさんの前脚と後脚にはシッカリと”おもり”が入っていて、抱っこしたときにニンゲンのおひざでフィットするように考えられているんだって!まさかその”おもり”が今役に立つことになるだなんて、きっとシエロさん自身も思ってもみなかったよね。シエロさんのおかげで、千葉港の風に負けず記念撮影を終えることができたよ。
後脚がなくて自立のできないわたしたちボブ家からしたら、おどろきよ!それぞれのどうぶつ(ぬいさん)にはそれぞれの特徴があるってものね。
(あ、でもね。のぞみさんが、「ボブファミリーは、カラダのなかにニンゲンの手を入れられるから撮影のときにいいですね」、ってホメてくれたわ。でもね、わたしはパペット、ではないのよ、うふふ。)
千葉港のランドマーク、ポートタワーまで続く海沿いの遊歩道を、弟のボブぞが楽しそうにギュウさんと並んで歩いていく。その姿を後ろから見ているのは、とてもいい景色だった。
ギュウさんというのは、のぞみさんちにやってきた絶滅動物ステラーカイギュウさんのこと。あのね、お顔やふっくらまぁるいカラダはもちろんのこと、後ろ姿がとってもキュートなのよ。グレーベージュ色の尾びれは、フワフワで大きくてやさしいカタチをしているの。横に並んで歩くうちのボブぞのたてがみと同じくカラフルなしっぽと隣合わせに、それぞれがうれしそうに海風に揺れていて、まるで手をつないでダンスを踊っているようにも見える。
「それにしても、ホントにボブぞは人見知りな性格が治ったわよね。前だったら、『ニーちゃぁん、ネェーちゃぁん・・・!』ってわたしたちの背中に隠れていたというのに。うふふ。おニーさんになったのねぇ。」
「エーッ!そうかなぁ?っていうか、おで、もともとそんな恥ずかしがりやさんじゃないもん。それに、おで、ネーちゃんと双子だから同い年だからねっ。あー!今日は、とっても楽しいなー!」
「いい?ボブぞ、はしゃぎすぎて転ばないでよ?」
「おでは運動神経バツグンなライオンだもん!それはおでじゃなくて、リンくんに言ってやってよね!フハッ!」
今日のみっつめの目的地、千葉ポートタワーのふもとに到着したのは、もう16時を回った頃だった。細長く海にそびえ立つそれの壁面には夕刻のお日さまの光がキラキラと反射して、まるで磨かれた鏡のよう。昭和感の残るレトロなフォントで”千葉ポートタワー”と書かれた建物の入口をくぐると、展望室行きのエレベーターへと乗り込んだ。
タワー3階、地上109メートルに位置するこのカフェには、先客はぽつんぽつんとしかいなかった。のぞみさんとリンくんがドリンクを手にぽつりぽつりとコトバを交わすその横で、わたしたちは窓の外のほうをアタマにして寝転がり、思い思いに過ごす。シエロさんとギュウさんの上に乗っかり遊びをして伸びをするベルデさん、遊び疲れてウトウトしているボブおニーさん、それから、外の景色に興味シンシンの”チーバくん”とうちの弟ボブぞ。みんな違うけれど、もうお互いのことは理解し始めているよね。
わたしはというと、ちょっと厚着をしてきてしまったから、ノドの渇きをいやしたくてリンくんに飲みものをひとくちねだった。アイスコーヒーをスルスルと飲むと、スゥっとカラダに涼しい風が吹き抜けていく。今日は、ホントにあったかい。何度、「あったかいね」、と言ったかわからないくらい汗ばむほどの陽気だったからね。
氷の音をカランカランとさせているうちに、どんどん日が傾いて暗くなっていく。あまりの日の落ちる早さを目の当たりにして、あ、やっぱりまだ1月だったんだ、ということを思い出した。
「そろそろ移動しましょっか。」
どうぶつ(ぬい)7名とニンゲンふたり、ぞろぞろと全員で大移動。西側の景色を望めるカウンターテーブルへ移る。店内はだんだんと薄暗くなってきているから、足もとや手もとには注意しなくちゃ。そう、夕刻になっても店内の照明が抑えられているのは、窓ガラスにコチラ側の景色が反射して映り込まないよう、外の景色を楽しむために配慮されていただろうことには、あとから気がついた。
「ねぇねぇのぞみさん、見て!すごい空キレイ!」
「わぁ、マジックアワーですね!」
そう、それはまさにマジックアワー。目の前には、グラデーションが現れていた。
明るい昼が終わり、そしてまもなく夕闇がやってくる、その狭間で起きるマジック。いつ見てもどこで見ても、夕焼けというのはココロをひきつけてやまないの。
今日のこの瞬間、この場所で、オトモダチみんなと一緒に過ごし眺めている、この空は、これまでにも、これからも、ひとつとして同じものは出現しない。
「まるで、茜色の羽根がはえているみたい。」
「あぁ、ホントだ。」
チーバの空に茜色の羽根がはえる。
東京湾に沈まんとする太陽は焚き火の炎のようにゆらぎながら、刻一刻とそのカタチを歪ませていく。昼間はあんなに白く見えた雲は、赤みと黄みをおびた色に熟成し、スゥっと空に筋を描いていった。広い果てしない上空には成田を離発着する旅客機が飛び交い、ゆるやかに波打つ暗い灰色の海上には漁船やタンカーがうごめいていた。
わたしたちの目の前に広がる光景は、間違いなく今日のハイライト。この瞬間を切り取ってスナップショットを撮ったら、そこにたくさんの感情と感覚を集めて、フゥッと封じ込める。あまりに楽しく濃厚なイチニチのすべてを記録し記憶することは不可能だから、だから、わたしたちは、こうやって思い出、というものを自分自身のなかで作り上げていくの。
外に出ると、もう街は真っ暗だった。
今日は時の流れが濃厚でゆったりとしていて、西の海に沈む太陽を見てきたばかりだというのに、夜が来ることを忘れてしまっていたみたい。ひとことで言うと、とても楽しいイチニチだった、ってことなんだけれどね。この感情ってどんなふうに言ったらもうちょっと気持ちよくおさまるかなぁと考えてみた。
シエロさん、ベルデさん、”チーバくん”、ギュウさん、そしてのぞみさん、みんなと一緒に過ごしたイチニチは、キンチョーとコウフンとコウヨーとアンド、それからシンアイ(緊張と興奮と高揚と安堵、それから親愛)に満ちたものだったの。
そのことをちゃんとコトバにしてあらわせるようになったのは、「バイバイバイバイ、バイバーイ!またね、またね、まったねー!」と手をブンブンと大きく振り、のぞみさん御一行さまみんなと別れた千葉駅のホームを出て、リンくんと電車とバスを乗り継いでおうちに着いて。お風呂に入って晩ごはんを食べて・・・。
・・・それから、なんと2週間近く経ってからのことだった。
ニンゲンのリンくんに言わせればね、ニンゲン同士の付き合いというものは、はかなく、弱く、繊細で、もの悲しいものなのだという。どんなに仲良く見えても、どんなに愛に満ちたものに見えても、実のところはとてももろいのだという。
だからこそ、大切にしたいものは、ちゃんと大切にしないといけないのだという。昔のリンくんはそんなこと露も知らず、自分のココロをだまして、人のこともだまして、そうやって生きてきたのだという。
わたしはライオンでどうぶつだから、そんな感情は持ったことがないし、リンくんの気持ちなんてこれっぽっちもわからない。ニンゲンって大変だなとは思うけれど、ニンゲンに寄り添って生きているわたしたちどうぶつ(ぬい)にとっては、無関係ではいられない。できるだけ理解しようと、努めようと思うのね。
「ボブこさん、ねぇ、あの日はホントに楽しいイチニチだったよね。」
「そうね。みんなでオトモダチとはしゃいで遊び回って、それからチーバのことも改めて知ったわね。」
リンくんはわたしを腕に抱っこして、あの日のあの瞬間の1枚を眺める。ニンゲンとどうぶつ(ぬい)が寄り添い合うにはちょうどいい、今日は雪の積もる底冷えのする日だから、わたしも遠慮なく、ニンゲンの体温を感じる。
チーバの空に茜色の羽根がはえる。
わたしはずっとココロにその光景を刻み、大切にしていこうと決めた。
ありがとう。ありがとう。ありがとう。
シエロさん、ベルデさん、”チーバくん”、ギュウさん、のぞみさん、次はオーサカへ遊びにいくよ!そしたら、今回は会えなかったダネさんとピカチュウさんにも会えたらうれしいな!
まったねー!
ボブこ
おまけ。
ボブぞ&ベルデさん、ハートマーク前でのツーショットだよ
シエロ&ベルデ さんX(旧Twitter)アカウント: @cieroandverde
千葉都市モノレール
https://chiba-monorail.co.jp/
千葉ポートタワー
https://chiba-porttower.com/index.php
千葉ポートタワー シーガルキッチン
https://seagullkitchen.gorp.jp/
ひざきつね BR ぬいぐるみ サンレモン社
https://www.sunlemon-original.jp/prod/hizaseries/hizakitsune_m_foxbr/
「待ち合わせのドキドキドッキン」
https://bobingreen.com/2024/01/26/7922/
「”チーバくん”の志津(しづ)かなる情熱 – オトモダチとゆくチーバ観光 その1」
https://bobingreen.com/2024/01/26/7910/
「おいしい楽しいチーバ県庁に初潜入 – オトモダチとゆくチーバ観光 その2」
https://bobingreen.com/2024/01/30/7976/