雪が舞い降りた朝
新年明けて2度目、14日のニチヨービの朝のこと。
リンくんがなんの気なしに、いつものように朝の空気の入れ替えをしようとカーテンを開けると、みどりテラス(ベランダ)越しの眼下に、いつもとはちょっと違う光景が広がっていた。
団地の芝生の日陰の部分が、ほんのりと白く変わっていたの。
すずはリンくんの腕にちょうど抱っこしてもらっていたんだけれどね、リンくんの方を向いていたから、くるっと振り返って外を見たんだ。すると、キラリとお日さまのまぶしい光が目に入ってきて、目の前がくらむように真っ白になった。
「うわぁぁぁぁぁっ!雪がうっすら積もってるうぅー!ねぇ!ねぇ!みんなー!起きてー!」
こんにちわーに。ウサギのすずこと鈴之助です。
昨日の夜は天気予報どおりにすこぉしだけ雪が降ったからね、とってもうれしかったのね。だけれど、すずがおフトンへ寝に行く前にもう一度外を見たら、雪も雨もやんで、お星さまが出てた。だから、あぁ雪はほんのちょっとでやんじゃったんだなぁーって思ってたんだ。
(昨日の夜の初雪のお話はコチラ → 「今年初めてのゆぅきぃウサギさんっ!」)
なのにね。そのあと、また降ったみたいだよ。
すずが夢を見ているあいだに、コッソリコッソリ、ふうわりふうわり、雪さんはこのチーバにも舞い降りてきたんだね。
「ねぇ、リンくん!エンチョー起こしに行かなくっちゃ!ホーコクしなくちゃ!」
「そだねー。もう起きてもいい時間だよね。起こしに行っちゃお!」
リンくんに抱っこされたまま寝室へ行って、ケンイツエンチョーに声をかけた。最近入手したアイマスクで目をおおって、ぐーすかピーだ。
「エンチョぉ!エンチョぉ!ねぇねぇねねぇ!雪ちょっと積もってるー!」
「ン・・・?あー!・・・おぉ、雪積もったかぁ。やっぱりなー。」
「ヘ?やっぱりって、知ってたの?」
「んぁ、明け方トイレ行って外見たら、なんか白いなぁー?って思ったんだよな。」
「なぁんだー!ニチヨービだよ!晴れてるよ!でも雪積もってるよ!起きよー!一緒にお外見よー!」
「・・・おー、すず元気だなぁ・・・。すぐいくぜー。・・・むにゃ。」
エンチョー起きてくるかな?ってちょっと心配だったけど、とりあえず居間に戻って、それからフクに話しかけた。
「フクぅ!雪!雪、見に行く?」
「えーすずちゃん、さっきから聞こえてたよぉ。行く行くー!フクもフクも!すずちゃんと一緒に行く!」
フクはアザラシさんだから、たぶん寒いのは好きだし強いの。それに、フクは寂しがりやさんだから、きっとすずがひとりでおでまめ(お出かけ)しちゃったら嫌がるの。
「フクねー、今日はすずちゃんと5m以上離れないからね。」
「アハッ!なぁにそれ?」
「だってー、、、すずちゃん、すぐドッカ遊びに行っちゃうんだもん。鳥さんの観察とか言ってさぁー・・・。フク、置いていかれるのさみしいもん!だからね、今日はずっと一緒にいるの。いいでしょ?」
「うん、そだね。フク、じゃぁ、一緒に雪見に行く準備しよ?エンチョー起きてきたら、お散歩おねだりしよ!」
「わぁーい!」
フクはそのまぁるいふっくらしたカラダをゆすって喜びを全体で表現すると、モゾモゾと準備を始めた。決して長くないその手を駆使して・・・いんや、それはムリだから、リンくんにお願いして、なにかをアタマにかぶっているみたい。
「すぅずぅちゃーん!・・・んぱっ!(見てっ!)」
「うわぁー!久しぶりだね!フクウサギさん登場だぁ!」
「アハッ!すずちゃんと一緒に雪ウサギさんになりたかったんだぁ!」
わーいわーいっ!
すずがフクと一緒にきゃっきゃっきゃっきゃはしゃいで遊んでいたら、気がつくとすでにケンイツエンチョーは起きてきて、しかも着替え終えていたの。
「おうい、ちょっとそこまで雪見に行くぞー!」
「はぁーいっ!」
小さなトートバッグにフクと一緒にもぐりこむ。リンくんはスマホとカメラを首から下げて手ぶらだ。
「もし足もと凍ってたらすべってあぶないでしょ。だから手ぶらだよ。」ということらしい。ちゃんとすずとフクのこと守ってくれるのかな?ちょっと心配だけど、まぁケンイツエンチョーもいるし、ダイジョブかな?
我が家は団地の5階だ。玄関を出てトントントンと階段を降りていくと、途中濡れている箇所があった。階段は雪ではなく水たまりになっていて、もう溶けているみたいだった。うちのお向かいさんも階下のおうちもみんな少なくともリンくんの親と同じかそれ以上のシニア宅だから、足もとの安全確認は必須なの。
国道に出ると、歩道の一部が微妙に凍っているところがあった。
「んあ、ちょっと凍ってるなー。気をつけないとね。」
そういって、ケンイツエンチョーが前を歩いて、すずとフクがあとに続く。リンくんは最後尾でオドオドしている。
10分弱で裏の公園に着くと、雪の残っている場所をフクと一緒に探して歩いてまわった。
パタパタパタバタ!
「フクぅ、ココ、どぉかな?」
「ンー?すずちゃん、どーこーっ?」
「コーコだよっ!」
キンモクセイの木の植え込みの上と足もとに雪がほんのりと積もっていたのを見つけて、その木の間からお顔を出してみたの。
(ピョコッ)
「アハッ!すずちゃん、見ーっけ!」
「フクもフクもぉー!フクもやりたーい!」
ぷくぷくぷくぷく!
フクもやってきて一緒にかくれんぼ遊びをした。
「アレ?だれがオニ?」
雪景色の写真を撮っていたリンくんが横から話しかけてくる。
「リンくんだよぉっ!はやく探してー!」
「あぁーそっかぁ!んーっと・・・すずぅ、フクゥ、ドコかなー?」
うふふうふふ!
雪の中のかくれんぼをしばらく楽しんで、そのあとは一緒に写真を撮ってもらったんだよ。
「おれ、日陰の雪の上にいるから足が寒い・・・。」
すずフクを雪の上でずっと抱っこしてくれていたエンチョーが寒さに音を上げたので、みんなで日なたへ移動した。
「あっ!ねぇねぇ、見て!梅の花のつぼみがふくらんでるよ。」
「ホントだー。こんな雪の残る朝に、春見つけちゃったね。」
きゃっきゃっきゃっきゃ!
今年は雪、また降るかな?もっともっとざっくざくに真っ白になるまで積もるかな?
でもね、春もじわじわとやってきてるみたいだよ。
雪が舞い降りた朝、すずもフクも、雪さんとごあいさつして、はしゃいで遊んで、とっても楽しかったんだ。
せーのっ!
雪ウサギさん、大成功ー!!!
すず(鈴之助)