最後の朝餉(あさげ)に酔いしれる – ころすけの旅日記(山陰&山陽編)その9
「いやぁー。今思い出しても、アレは最高だった。」
「ン?何の話?」
「アレよ。アレ。」
「阪神の優勝?」
「ちがーうっ!」
これは、12月1日のこと。
なんと10月下旬に行った旅日記が終わらないまま師走に入ってしまった、リンくんとオレとの会話だ。
2023年の流行語大賞には、今年日本一になった阪神タイガース岡田監督の「アレ(A.R.E)」が選ばれたというニュースが飛び込んできた。
あー、びっくり。
あ、すみません。うっす、旅グマころすけです。
これまで8回+αに渡ってお届けしてきた3泊4日の山陰・山陽旅の旅日記、今回が最終回です。おれのファンになってくれたオトモダチのみんなのためにスピンオフ回が残されてるらしいんだけど・・・、って、あ、先にそんなこと言っちゃいけないのか。ゴメンゴメン。
最終回の今回は、最後の朝餉(あさげ)についてなんだ。
夜明けとともに早朝の日の出散歩へ行ってきたおれとリンくん。朝8時過ぎにホテルの部屋に戻ってきた。リンママちゃんはすっかり身支度も荷物のパッキングも終えていて、一方リンくんは汗だくだった。
「ひー。お待たせー!ジョギングしてきたら汗かいちゃった。シャワー浴びていい?朝ごはんの時間、まだ間に合うよね?」
「どうぞ、どうぞ。」
リンくんがシャワールームからさっぱりした顔をして出てくると、おれは急かすようにリンくんのバッグの中に入った。
「早く朝メシ行こっぜー!」
「はいはいー!」
リンくんはメイクも早々に、日焼け止め塗って眉毛を描いただけで、部屋を飛び出したのだった。
1階のレストランへ行くと、目の前のプールにウミネコが一羽やってきて、気持ちよさそうに泳いでいた。
「おはようございます。お好きなお席をどうぞ。」
「あ、そこでもいいですか?」
気持ちよくウェイターさんに案内を受ける。満席になったら100名以上は収容できるだろうゆったりとしたスペースのあるレストランの、あえて一番手前の席を選んだのだった。そこからはプールのウミネコを眺めることができる位置だ。
「朝食のメニューでございます。こちらの5種類のセットのなかから、お好きなおひとつをお選びください。お飲み物はフルーツジュース、牛乳、・・・それから、アルコール入りのスパークリングワインをご用意いたしております。本日のフルーツジュースは梨でございます。」
?!
なんと?なんと申しましたか?
朝からアルコール入りのスパークリングワインですと?
おれにはリンくんのココロの声がよぉぉぉく聞こえた。
まぁまぁ百歩譲って、プラス料金で朝食からアルコールを頼めるようなホテルレストランもあるかもしれない。どうやらそのような案内はないから、料金に含まれているらしい。
おれはリンくんのココロからだだ漏れてくる感嘆とホテルの太っ腹さへの称賛をしかと受け止めた。さらに、旅行最終日の記念すべき最後の食事だという状況、そして、今朝の約2時間のジョギング散歩を鑑みて、総合的に注文を下したのだった。
「では、スパークリングワインで、お願いします。」
ちなみに食事は、リンママちゃんはコンチネンタルブレックファーストを、リンくんは牛窓特産だというマッシュルームを使ったオムレツを選択した。
トクトクトクトク・・・シュワワワワワッ
「うわーん!朝からこんなオーシャンビューでアワですってよ。なんて素晴らしいのかしら・・・。スミマセン、また飲んじゃうけれど。」
カンパーイ!
ピカピカに磨かれて透き通ったフルートグラスを、海を臨む窓越しに透かしてみる。まるでセレブ、まるで王さま、まるで貴族。こんな大贅沢の朝ごはんはこれまでに経験がない。
一口つけたところで、焼き立てパンがカゴに盛られてやってきた。ひとつひとつ説明してくれて、リンくんはシンプルなバゲットと全粒粉のパンを選ぶ。
実はココ、ギリシャ料理のレストランなんだ。だから、バターではなくてオリーブオイルをつけてパンを食べるスタイルで、リンくんはその点もお気に入りなのだという。
「お待たせいたしました、牛窓マッシュルームのオムレツでございます。」
「ほう・・・!おいしそう!」
ふわっふわに焼かれたオレンジがかった濃い色のオムレツの上には、たっぷりとマッシュルームのスライスが添えられている。横には見るからに新鮮な、パリッと角の立ったリーフサラダ。
これ以上ない、リンくんの好物が盛り込まれたひと皿だ。
隣には盛りだくさんのフルーツとギリシャヨーグルトを堪能しているリンママちゃんが顔をほころばせている。リンママちゃんは普段からヨーグルトをよく食べているから、本場仕込みのギリシャヨーグルトを食べてみたかったらしい。
「ふはぁ。シアワセ。」
ねぇ、リンくんのグラスが空いている。空いているじゃないか。
すると、すかさず、ウェイターさんがやってきた。
「お飲み物おかわりいかがなさいますか?同じものでも良いですし、他のソフトドリンクもございます。」
「あ・・・では、同じものを。」
だよねー、だよね。ホンットリンくんはよく飲むけれど、朝からアワが飲めるのだもの、そうしますよね。
というわけで二杯目は食事の後半で、のんびりと海を眺めながら堪能した。
「なんだか良い旅行だったよね。もちろんこれから無事におうちに帰らなくちゃいけないんだけれど。」
「そうね、ホントにどこも良かったわよね。鳥取の境港も行けたし、島根の足立美術館へも行けたし、倉敷は久しぶりで嬉しかったわ。」
リンママちゃんはこの旅程に満足してくれたみたいだった。そして、なにより、体調を崩したりトラブルに見舞われたりすることなく、穏やかな気持ちで最後の朝餉を楽しむことができている。
おれは、アワの軽い酔いが心地よく、ふんわりふわふわと宙を漂っていたところだったのだけれど、そうか、ここから4時間以上かけて帰るのか・・・と思い、最後のお役目に気を引き締め直した。
「ころすけがちゃんとお伴してくれてたから、無事にここまで来られたのかもよ。」
「この旅行中、ころちゃんの写真、いっぱい撮ったわ。」
「ころすけ、お疲れ様だったね。」
「んにゃ。まぁ、ちゃんとおうちに帰ってからだな。」
そう言っておれらは食後のコーヒーに口をつけた。リゾートっぽい香りがふうわりと鼻に抜けた。それは気のせいではなくて、このレストランの趣向で、コナコーヒーを供しているとの説明だった。
「ごちそうさまでした。」
おれ、過去最高の、この旅最後の朝餉(あさげ)に、文字通り酔いしれたよ。
食事を終える頃には、プールで遊んでいたあのウミネコはどこかへ飛んでいってしまっていた。
さぁて。チーバへ帰りますか。
・・・
(12月1日に戻る)
「で、アレ、やっぱり最高だったよね?」
「うん。アレだろ。アレ。」
「朝のアワとマッシュルームオムレツね。」
「そうそう。よく晴れた、晩秋の海を臨むレストランでな。早朝のお散歩してシャワー浴びてからのね。」
「ころすけ、牛窓、ヤバイね。」
「ヤバイっていうな。曲がりなりにも物書きだろ?」
「あ、スミマセン。牛窓、また行きたい。次はせめて2連泊。もっとでもいい。もうちょっとチーバから近ければもっといいんだけれど。」
「だなぁ。あの日、13時過ぎの岡山発の新幹線乗って、やっぱり東京まで長かったよな・・・。うちは東京駅からさらに下るしさ。」
「うん。しかもさ、オハナ(家族)のみんなへのおみやとして、岡山駅では穴子の駅弁、東京駅で崎陽軒のシウマイ弁当買って、もう荷物ずっしりで。」
「よく担いで帰ったよ。リンママちゃんの荷物もずっと持ってたしな。リンくんも、お疲れ様だったなぁ。」
「いやいや、ころすけがいてくれてよかったよ。ありがとね。」
そう。ホントに、牛窓のアレ(最後の朝食)は最高だったのだ。
そんなこんなで、やっぱり食べ物とお酒のお話で、この旅日記を締めたいと思います。
旅するおっさんグマころすけと、リンくん&リンママちゃんによる、3泊4日の山陰・山陽旅にお付き合いくださり、ありがとうございました!
「おいおい。まだまだ全然世に出してない写真とかエピソード残ってるでしょ?」
「あ、ハイ。それはまた追々、ということで。」
・・・ということらしいです。スピンオフはまたいつかー!
ここいらで旅グマは終了しまっす!オトモダチのみなさん、ばいばーい!
ころすけ
ホテル・リマーニ 公式ホームページ / 朝食メニュー
https://www.limani.jp/restaurant/breakfast/
「モォーモォー 牛窓海岸で日の出を拝む – ころすけの旅日記(山陰&山陽編)その8」
https://bobingreen.com/2023/11/30/7179/