十月桜の生きざま
「エーッ!桜咲いてるよ。」
広ぉい公園をお散歩中、桜が咲いてるのを見つけたの。
あら、おかしいじゃない?今日は10月ももう中旬よ。
うふふ、ボブこです。今年は春にたくさんのいろいろな桜を見たけれど。
まさか、10月、秋にも桜を楽しめるなんて知らなかったわ!
「ジュウガツザクラ、ですって。そのままの名前ねぇ。」
「あはっ、でもボブこにはとっても似合ってる。やっぱりボブこはピンク色のお花がぴったりだね。さ、お花と一緒に撮ってあげる。」
カシャ、カシャカシャ。
リンくんに言われて、ポーズを取るの。たった一本のジュウガツザクラの木の周りには、わたしたち以外にも何グループかのニンゲンたちがスマホ片手に撮影をしているの。やっぱりこの季節に桜はめずらしいのね。
「秋の桜でコスモス、とは言うけれど・・・、あっ、そういえば今年、まだコスモス畑行けてないね。」
「リンくん。今年、というけど、去年も行けなかったのよ?」
コスモス畑、とは、我が家の隣町にある、ふるさと広場という花畑のことだ。春はチューリップ、夏はヒマワリ、そして秋はコスモスに変わる。今年は猛暑の影響で開花が遅れてるらしかったけれど、そろそろコスモスまつりが始まる頃のはずだろうと思う。
「あ・・・ハイ。なんかタイミング逃しちゃったよね。まぁ、まぁ。十月桜見られてよかったね。」
カシャ、カシャカシャ。
リンくんはごまかすかのようにカメラのシャッターを押し続けている。
「んもう。でも、わたし、この桜、好きよ。まだ咲き始めだね。春のソメイヨシノみたいにモコモコの満開になるのかしら・・・?」
「ンー。葉っぱも一緒に出てるから、モコモコにはならないかもね。」
あとからリンくんが調べてくれたところ、この十月桜は二度咲きなんですって。
春に華やかなソメイヨシノが咲き誇るその影でひっそり花をつけて、秋の色とりどりのコスモスの影でもう一度こっそり花を咲かせる、そんな健気なコなのだ。
「わたし、これから秋はこの十月桜を探すことにするね。だって、派手で目立つ花たちはいつだって人気者だけど、だれかの影で強く生きているだなんて、ちょっとすてきじゃない。」
「ボブこさんは、優しいね。」
「うふふ、知ってる。」
ようやく柔らかくなった十月の日差しを浴びながら、わたしたちはフリルのような繊細な花弁を見上げて笑った。
十月桜の生きざま。なんだか、秋の桜もすてきじゃない。
ボブこ
※Rin注: ちなみにコスモスは秋桜と書くけれど、実際にはバラ科ではなくキク科なので桜の仲間ではないそうです
十月桜について nae-ya ホームページ 参照↓↓↓
https://nae-ya.com/item/7347/
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