クマの課題図書
それは、まるでだれかが、もっつのなかで、「もっつ、ほら、ちょいとひと眠りするお時間。」と、いっているようでした。
「やァれやれ、もうそんな時間かいな。」もっつはいうと、横になって、お気に入りの毛布をおなかにかけました。「お気に入りの毛布をもってくるなんて、運がよかったなァ。」と、もっつは思いました。「こんなお天気のいい日に、ハチミツをなめるクマも多いが、ちょっとひと眠りできるものをもってくるなんてことをかんがえるものは、まずあるまいな。」
そうしてもっつはうとうとしはじめました。
・・・
そのとき、きゅうにもっつははねおきました。もっつは、リンくんに読むようにいわれた本を抱きまくらにしていたのです。
・・・ン?夢かぁ・・・。
となりでは、リンくんがスゥスゥと眠っている。
リンくんが図書館で借りてきた、この本。
あれだろ、『クマのもっつ』。え?違った?『クマのプーさん』か。
もっつ。アナタはクマなんだから、クマの名作の童話、読んでみようよ。
そういって、リンくんに与えられた。いわゆる、夏休みの課題図書といったところだ。
『クマのプーさん』、なによりもはちみつが好き。
『クマのもっつ』、なによりもお昼寝が好き。
今日は、8月3日、はちがつみっか。はちみつの日らしいね。
わっしも、たまにはクマっぽくハチミツでもなめてみるかねぇ。
フワァーぁ。まだ眠いのぉ・・・。
あ。リンくん。ひとつ言いたいことがある。
プーさんみたく、バタン・バタン、階段やられるのは、カンベンな。
ヘェ、もっつ、ちゃんと読んだんじゃない。
そりゃ、わっしは、世界第一のクマだからね。
そう、もっつは私にとって、世界第一のクマだよ。ぼく、もっつのこと、とってもすきなんだよ。
フゥ、やれやれ。リンくんもかなり読み込んだな・・・。
もっつ
Rin注: 『クマのプーさん』のパロディです。引用元をお知らせしますのでご興味持たれたか方はぜひホンモノを読んでみてください。
それは、まるでだれかが、プーのなかで、「プー、ほら、なにかひと口やるお時間。」と、いっているようでした。
A. A. ミルン 作、 石井桃子 訳 『クマのプーさん』 岩波少年文庫 p.121-122
「やァれやれ、もうそんな時間かいな。」プーはいうと、腰をおろして、ミツのつぼのふたをとりました。「ミツのつぼをもってくるなんて、運がよかったなァ。」と、プーは思いました。「こんなお天気のいい日に、散歩に出かけるクマも多いが、ちょっとひと口やるものをもってくるなんてことをかんがえるものは、まずあるまいな。」
そうしてプーはたべはじめました。
・・・
そのとき、きゅうに、プーは思いだしました。プーは、イーヨーにやるお祝いをたべてしまったのです。
そうら、クマくんが、二階からおりてきますよ。バタン・バタン、バタン・バタン、頭を階段にぶつけながら、クリストファー・ロビンのあとについてね。二階からおりてくるのに、クマくんは、こんなおりかたっきり知らないのです。
A. A. ミルン 作、 石井桃子 訳 『クマのプーさん』 岩波少年文庫 p.15
「もちろんさ。世界第一のクマにさ。」
A. A. ミルン 作、 石井桃子 訳 『クマのプーさん』 岩波少年文庫 p.236
「ぼく、プーのこと、とってもすきなんだよ。」
A. A. ミルン 作、 石井桃子 訳 『クマのプーさん』 岩波少年文庫 p.211