オトモダチに会う

いらっしゃいませェ。

白さがひときわ映えるレースのカーテンの向こうに、あたたかくてやさしい空間があった。

ボブぞです。

ずっと、迷ってたんだ。
でも、来てみて良かったって、カーテンを開けた瞬間に感じたの。

“Little Lou’s Café”

白地の小さな立て看板には、温かみのある文字。みどり色のお洋服を着たキツネさんがプリンを目の前にしている、素朴なイラスト。彼は、純粋にこちらに笑いかけているようにも見えるし、ちょっと得意げに「ボクのプリン召し上がれ」、と言ってくれているようにも見える。

トーキョーはナカノ。サブカルの聖地と言われて久しい”ブロードウェイ”。その、メイン通りとは言いがたい2階の一角に、おでらを待ってくれてるコたちがいた。

オトモダチの、ルゥくんと、ダイフクくんだ。

予約したリンですぅ。

はじめまして!

案内されたテーブルにおれらは着席する。

ニンゲンひとりと、ライオンさんにんとペンギンひとりで、来ましたぁ。

ボブお、ボブこ、ボブぞ。勘九郎です。あ、私はリンです。

正直、おでは、お胸のドキドキがもうバクハツして、ドギマギしてしまって、何も声が出てこなかった。リンくんにいちばん近い場所に座って、ジーっと、周りの様子をみることにした。

“Welcomeカード、ありがとうなの!”
“着席。お行儀よくしてる。”

とある日。
ルゥくんとダイフクくんがカフェイベントをするよ、って知ってね。
行ってみたいな!実際に会ってみたいな!っていうワクワクと、どんなコたちなのかな?そもそも何をお話したらいいのかな?っていうドキドキと、おでの心は、ぐっちゃぐちゃーのぐっちゃぐちゃに混ざりあって、行ったり来たり、してた。

行く?行かない?
やっぱり、行く?やっぱり、行かない?
・・・・
むぅ・・・。
おで、決められないよ。ねぇねぇ、ニーちゃんは、どう思ってるの?
ねぇねぇ、行く?それとも、行かない?

おーおー、ボブぞは迷ってるの?
やっぱりボブぞはまだまだ恥ずかしがりやさんなのなぁ。もう6才だろ?オトモダチに会ったらちゃんとご挨拶のひとつもしなくちゃだよ。
ボブぞは相変わらず人見知りが治らないのぉ。フハッ。

あーん、ニーちゃん、それ恥ずかしいから、言わないでぇー・・・。

アハッ。
まぁ、おれはさ、オハナのリーダーだし、ヒャクジューのオーのライオンだろ?だから、いつだって、みんなのために、おれがしっかりしなきゃ、って気持ちを奮い立たせてるんだよ。そりゃあ、おれだって、ちょっとだけドキドキするけど、オトモダチに会うのは楽しみだな。

ニーちゃん、すげー!
やっぱりおでのニーちゃん、すげー!
・・・ってことはさ、オトモダチに会いに行こうってこと?

そうだよ!ルゥくんとダイフクくんに、会いに行こうよ。
ちゃんとニーちゃんがご挨拶するから、ボブぞも一緒に楽しもうよ。

・・・うん!やったぁ🎵
そうと決まったら、じゃぁ、リーンくーん。予約してぇー!

はいはいな。連絡してみるね。

そんなわけで、リンくんがルゥくんとダイフクくんに連絡をしてくれて、カフェに遊びに行くことが決まった。

お待たせしましたぁ。
さっぱりレモンケーキと抹茶大納言パウンドです。
こちら、”おおきいさん”の分、こちら”ちいさいさん”の分です。
飲み物もお持ちしますね。

キンチョーが最高潮に達した頃、目の前にステキなスイーツがやってきて、我に返った。

あ、おで、いま、ルゥくんとダイフクくんのカフェにいる・・・!

“”おおきいさん”と”ちいさいさん”のスイーツ!”
“さっぱりレモンケーキと抹茶大納言パウンド”

もう一度ゆっくりと周りを見回してみると、ペンギンの勘九郎は早速テーブルの上で羽をパタパタさせて、スイーツ、早く写真撮ってェ!スイーツ、早く食べたいぃ!と騒がしくしている。

“スイーツ番長、勘九郎でっす!”

ルゥくんとダイフクくんがテーブルに来てくれた。

あ。そうそう。ルゥくんとダイフクくんに、お近づきの印です。キャンディ、食べてね。

ニーちゃんがゴソゴソと袋を取り出して、お手紙と一緒に、おみやげのキャンディを渡した。そのまま勘九郎とニーちゃんは、スイーツを前にみんなで記念撮影をしたり、おしゃべりしたり、とっても楽しそうにしてる。

“お手紙とキャンディを渡したの”
“ルゥくんとダイフクくんと、記念撮影”
“なにやら話し込んでる様子”

その間、ネーちゃんはというと。
どうやら、ネズさんの帽子店が気になって仕方がないらしい。

ボブこちゃん、スカート可愛いね!

アタクシ、このお帽子がいいわ!ステキ!

ネーちゃんは、お気に入りのピンクのチュールスカートを褒められて上機嫌。コーディネートにぴったりな夏らしい麦わら帽子を試着してご満悦の様子だ。

“アタクシ、この麦わらのお帽子買ってもらったの。ウフフ”

・・・あーん・・・。
リーンくーん、なんでニーちゃんも、ネーちゃんも、勘九郎も、そんなに思い思い自由に過ごせてるのかな?ねぇ、聞いてる?リンくーん?

リンくんに話しかけてみたが、おかしいことに、リンくんもどうやらキンチョー気味の様子。いつもよりも声が小さいし、おでの声もスルーしてるっぽい。

おーい。リーンくぅうううんってば。

はいはい。ボブぞは私の隣で静かに座っててね。あ、ケーキ食べようよ。

そう言って、ケーキのお皿を近づけてくれた。
もちろん、”おおきいさん”のお皿だ。”ちいさいさん”の分は、スイーツ番長の勘九郎が早々に食べてしまった。

パクッ・・・!レモンがさわやかでおいしーい!
おで、食べる以外は、出番なしかなぁ・・・?じゃあ、モグモグしてるぅ。

“イチバン手前がおで(ボブぞ)だよ。モグモグ・・・”

おでがふたつめのケーキをほおばりながらニンゲンカンサツをしていると、もう一組、お客さんがやってきた。

いらっしゃいませェ。

レッサーパンダさんがふたり。テーブルについた。フワフワの毛並みがとってもキレイ。ボブ家にはレッサーパンダさんのオハナはいないけど、風太くんには会いに行ったことがあるから、レッサーパンダさんは知ってる。
せっかくおとなりさんになったのだから、思い切ってお話してみたいな・・・。
・・・こ(んにちわー・・・)

おでが勇気を振り絞ってご挨拶しようと思ったら、一秒早く、ニーちゃんが前に出た。

こんにちわー。ライオンのボブおといいます。お名前、教えてくださいな!

こんにちは!こあざ、と、がくせいくん、です。
何人で来てるんですかー?

リンくんがドギマギしながら答える。

あ・・・ニンゲンはひとりで、ライオンがさんにん。ペンギンがひとりです。リーダーのボブお、妹のボブこ、弟のボブぞ。ペンギンは勘九郎です。私はリンです。
こあざちゃんとがくせいくん。よろしくね。

あぁ。また、おで、出遅れちゃった。
でも、ニーちゃんのおかげで、おとなりの席のレッサーパンダさんたちともオトモダチになれた。
なんだか、おで、すっごくおニーさんになったような、誇らしいような、こそばゆいような、気持ちがする。
オトモダチに会う、って、こういう気持ちなんだね。

しみじみ。うれしい。

帰りの電車に揺られて、おで、すごく満ち足りた気持ちになった。

ねぇねぇ、ニーちゃん。おで、今日、スッゴクスッゴク、スッゴク楽しかったの。

ん?ボブぞ、ひとこともおしゃべりできてなかったじゃん?でも楽しめたの?

うん。オトモダチに会えて、スッゴクスッゴク、スッゴク、嬉しかったの。
あと、オトモダチが新しくできて、スッゴクスッゴク、スッゴク、幸せだと思ったの。

そりゃぁ良かった!ボブぞ、次は自分からコンニチワーできるか?

できるもん!今度はちゃんと練習してから行きたい。

フハッ。じゃあ、ニーちゃんと一緒に、コンニチワーの練習しよう。スパルタ特訓だぞ!

でへっ!がんばる!

おで、ちゃんとご挨拶の練習するよ。
「コンニチワー、おで、ボブぞです。ライオン三兄弟の末っ子です。よろしくね。」
ちゃんとひとりで言えるようになったら、会いに行くから。
オトモダチのみんな、待っててね。

ガタンゴトン。

ニチヨービの夕方の電車はすいている。
おでらとリンくんは、ロングシートの端っこでぼんやりと座っていた。
あたたかくてやさしいがいっぱい詰まった、あのカーテンの向こうを思い出しながら、おでは、リンくんに抱っこされて、ウトウトしながらおうちまで帰った。

ありがとうね。とっても楽しかったです。

ボブぞ

“ウトウト・・・”

“記念撮影!新しくオトモダチになったレッサーパンダさんは、こあざちゃん(左)とがくせいくん(右)。ネズミの帽子店の店主、ネズさん。”
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Rin(リン)

ぬいぐるみブロガー、Rin(リン)です。 ライオンのボブ家と愉快な仲間たち、そしてニンゲンのケンイツ園長と一緒に、みどりキャンプ場で暮らしています。 ボブ家の日常を、彼らの視点でつづっていきます。

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