道路が乾いていく音
雨があがった。
気が付くと、晴れ間がさして、青空が広がり始めている。
みどりテラスの窓を開けると、ゆるい風とともに、むわっとした夏の匂いが一気に入ってきた。
スゥー。
ボブおです。
今朝まで、本当に、本当に、ずっと雨雨雨。だった。たまぁに止むと、ほっとするんだけど、小一時間もするとまたすぐに、ポツッ、ポツッ、だ。8月の中旬。お盆の前から、お盆の後まで、こんなにも雨が降り続けたことが、過去にあっただろうか。おれが生きてきたこの6年間では、なかったと思う。
しゅごごごご・・・しゅごごごご・・・・
たったったった・・・ぱッぷぱッぷぱッぷぱッぷ・・・・
カタカタカタカタカタカタ…
リンくん、何の音?おれ、いま夏の音聞いてんの。とめてよ。
あー、ごめんごめん。ヤカンの音。お茶煮出してるの、ちょっとだけ待って。
リンくんは、さっきまでソファででーんと昼寝をしていたかと思えば、すぐにまた別のことをしだす。おれがこんなに集中してるのにさ。
カチャッ。
・・・ふぅ。
コンロを消す音がして、静寂が戻った。扇風機が空気をかきまわす音がかすかにする。
ケンイツは西の部屋でおシゴト中だ。たまにミシッってイスが鳴くくらいで、今日は会議もないみたい。
よく耳を澄ますと、外からいろんな音が聞こえるんだ。
セミの声。鳥の鳴く声。すっかりこの数日の大雨で影をひそめてたどうぶつたちが、一斉に動き出した感じだ。
みゅいーんみゅいんみゅぃんみゅいんみゅぃん・・・
ぴゅい。ぴゅい。ぴゅい。ぴゅいぴゅいぴゅい・・・
ぴぃいいいよ、ぴぃいいいいよ・・・
しゅぅいしゅぅいしゅぅいしゅぅいしゅぅいしゅぅい・・・
しゅぐぉーーーーーーーーーーーーーーーーーーー・・・
飛行機の音。今日は全然静かな感じ。遠くの上空を飛んでいるかすかな音だけが聞こえる。
普段、みどりテラスからは、くらげの大群やらG.I.ジョーやらが間近に見られるのだけれど、今日はどうやら違う訓練をしているらしい。
ぽんやり眺めていたら、ランニングをしているむきむきマッチョのお兄さんが走っていく姿が見えた。
ずぅーーーーーーーぶぅーーーーー、ガタン・・・・ガタン・・・・。
ヴぅううーーーー。
ぶぅーーーーーーーーーーーーーーん・・・・。
ばるぅんばるばるばるばる・・・
おれは車の走る音を聞くのが嫌いじゃない。エンジンの音とともに、タイヤが路面をまわってくその音色は、一台一台結構ちがうものなのだ。
当然、路面がぬれているときと、乾いているときとでは全然音が違う。
あるふぁど。せれな。すてっぷわごん。このエリアでは、セダンよりもファミリーバンのほうが圧倒的に優勢だ。
いろんな道具を積んだ軽トラック。
膝をそろえて走っていく原付。
キャミワンピを着たねえさんを後ろに乗せた二人乗りのバイク。
くゎあ。くゎあ。くゎあ。
ぼぇーんぼぇーん・・・
くぉちらわ・・・
ぉどもたちわ・・・・かえりましょう・・・。
午後4時45分。たぶんこれは隣町の夕方のチャイムだろうか。すごくかすかにしか聞こえない。うちのみどりキャンプのある方の町は、たしか5時だったはずだから。
道路の濃い灰色が、どんどん薄い灰色に変わっていく。スプラトゥーンみたいだ。
路面が乾いて、タイヤが乾いていくとともに、軽い音へと変化していく。
道路乾いてきたねー
って、リンくん。
そうそう。おれ、この瞬間を待ってたよぉ。夏がどこかいなくなっちゃってたの、さみしかったの。夏、おかえり。もうちょっと楽しませてくれよ。はしゃぎたい気持ちを抑えきれない。
8月も、もう17日。8月も、まだ17日。
もう一度、夏の音を、しっかり聞きながら、オハナのみんなで楽しく過ごすんだ。
ちゃーんちゃんちゃーんちゃちゃんちゃーんちゃんちゃーん。
ごじに・・・・なりました・・・
こどもたちは・・・かえりましょう・・・
あ。やっぱりね。
5時を知らせるチャイム。
西の部屋にいるケンイツに声をかける。
ねーねー、エンチョエンチョー?お外、晴れてきたよ、どっか、遊びに行こ???おでまめ、しよ???な?
みどりテラス、夏、おかえりなさい。もちょっと、夏と遊ぶのだ。わふっ!
ボブお