石神さまの町
雨あがり。午後5時。ちょっと風が強いけど、そのせいで蒸し暑さが少し和らいで、ちょうどいい。
ガラガラの先頭車両を降りて、ホームをてくてく。改札を抜けて、南口商店街の方へ。
土地勘がないもんだから、リンくんが不安そうにスマホ片手によろよろしてる。思っていた以上に町には人が多くて、夕方の賑わい。カラオケやパチンコ屋もあって、なんだかいっちょまえだ。一方で、日に焼けた手書きのメニューをのぞかせる食堂もあったりして。もやしそば 500円、だって。うまそう。
何の期待もなしに、いきあたりばったり。ちょっと散歩するにはいい感じの町だ。
わっし、ころすけです。
駅から5分も歩くと、公園への案内看板が出てきた。池のある、ここらへんでは有名な、おっきな公園。
別にね、公園に来たかったわけじゃないけれど。ただ、木々が多くて、緑色の草のにおいがして、水辺があって、景色が開けてて、正直ちょっとテンション上がる。
もう夕方だからか、もしくは、今年の例のやつのせいで営業自粛なのか、白鳥のボートたちはくちばし揃えて、一列に横並び。
リンくんとわっしはもう30年以上の付き合いだから、お互いが子供のころから、よく知ってる。しばらくは離れて暮らしたこともあったけど、ここのところは一緒に過ごしてる。別にこれまでずっと仲が良かったわけじゃなくって、毛並みがバッサバサになるまで相手にしてもらえなくって、ポーンってなったときだってあったんだ。去年の正月明けから一緒に暮らすことになったのだって、衝動的なもので、全然なんの前触れもなかった。
ふー。
でも、今日は、いい日だな。
石神さまがみてるからかな?
この町のどこかにいるのかなあ。今度、会いに行ってみよう。
パンパンっ。
ころすけ。