パブロヲ、田島享央己先生のハシビロコウに出会う
しーんと静まり返るギャラリー。
スタッフのお姉さんに話しかけられた第一声は、こうだった。
「ハシビロコウ、お好きなんですか?」
「あ・・・ハイ。ハシビロコウも好きだし、あ、先生の作品、みんな好きなんですけどね。」
リンくんは、わかりやすいくらいシドロモドロと答えた。
オトモダチのみんなー!
おっす!オラ、パブロヲ!
我が家ではゲージュツガクブ(芸術学部)の部長であり、オハナ学園の教頭も務めているぞ。
あ。そんで、オラはハシビロコウな。
今日は小さなギャラリーに遊びに来てるんだ。
ココはトーキョー品川区、天王洲アイルという街。
駅前にはオフィスビルがガンガン立ち並んでいるのだけれど、少し歩いて運河を渡ると、倉庫街が見える。その一角にアートギャラリースペースを有するちょっと変わった場所があるんだ。
TERRADA ART COMPLEX Ⅱ
その中にある“gallery UG Tennnoz”。そこで、彫刻家の田島享央己先生の個展が開かれているんだよ。
うちのリンくんは昨年に続いて2度目の訪問だけど、オラは初めて。今回ハシビロコウの木彫りがあると聞いて、ワクワクしながらやってきたんだ!
(前回の訪問のお話はコチラ → 「白いねこは白くない。天王洲のアチャラカ世界に引きずり込まれる」)
「あ。先生の作品はアタマの毛が4本なんですね。うちのコは3本。」
ギャラリースタッフのお姉さんはヘェとかホォとか言いながらちゃんとリンくんの話にもあいづちを打ってくれる。オラはリンくんに抱っこされながら、ちょっと気恥ずかしいキモチになりつつも、せっかくの田島先生の作品をジィっと眺めさせてもらった。
「オラよりも、目つきが悪いのなぁ!」
「パブロヲ、はっきり言うねぇ。うん、田島先生のハシビロコウ、目つき鋭いね。そこがいいじゃない、貫禄あって。」
オラたちがギャラリー内をぐるりぐるりと歩いている間にも、ぽつりぽつりとお客さんが入ってくる。このギャラリーは入場無料だから、フラリと寄れるところもステキだと思う。まぁ、オラたちは、気合い入れて行くぞー!って来たけれどな。
田島享央己先生は、彫刻家ではあるけれどもドローイングの作品もたくさん世に出されている。今日の展示内容をみると、木彫り作品の数よりも、壁に展示されたどデカいネコ(やウサギやパンダたち)の絵のほうが数も多いし、インパクトが強いように感じる。
「ホラ見て、パブロヲ。田島先生の白いネコ、白くないんだよ。近くで見ると、ものすごい数の色を重ねてあって、それが光を放っているように見えるんだよ。」
「あぁ・・・リンくん、ゴメン。そんなことよりさぁ、出ちゃってるじゃん?」
「ン?何が?」
「いやぁ、だから、ホラ、大事なトコが・・・?」
リンくんの目にはもう普通のこととして映っているみたいなのだけれども。白いネコにしてもウサギにしても、たいがいの動物のドローイングははだかんぼうで、しかもちゃんと大事なトコロが描かれているのだ。
「あぁ、のび太くんスタイルのことね!びっくりした?」
「いやぁ・・・オラ、初めて見たからさぁ!びっくりしたっていうか・・・うん、びっくりした。でもさ、この木彫りのハシビロコウにはついてないのな?どしてかな?」
ついてるとかついてないとか、そんな話ばかりしても仕方がないけれど、白いマスクのしたでニヤニヤとニヤけつづけているリンくんの耳には、オラの質問はもう届いていないみたいだった。
「すみません、あのぉ。白いネコちゃん、布巻いてるコがいますけど、なんで出してないんですか?」
りンくんがスタッフさんに質問をする。そう、ハシビロコウの木彫りにもついていないけれど、白いネコの絵には、ついているコとついていないコの両方がいるのだ。
「あぁ、白いネコのうち赤いスカート履いてるのは、女の子なんですね。」
「あ、なるほど。女の子。」
「ハイ。特にあの絵は、西洋美術のとある作品のオマージュでして、田島は他の作品でもそういう手法を結構使っているんですよ。」
「へぇ・・・!!!」
今回の展示のポスターにも採用されている一枚のことを指している。登場人物(どうぶつか)は3人。パンダがイーゼルに立てたキャンバスに向かい、赤いスカートを履いた白いネコがモデルをしている。その奥の扉から階段を上ろうとしているのは白いウサギ。この絵は実はオマージュなんだって。
(うちのリンくん、スタッフさんがそのオリジナルの画家の元絵をスマホで探してせっかく見せてくれたのに、名前さえ失念してしまうという体たらくぶりだ。)
去年来たときには額装した展示作品以外にもファイルが置いてあって、自由にポートフォリオを眺めることができたらしいのだけれど、今年に関してはそのような設えはなかったので、比較的アッサリと会場を引き上げることになった。
・・・とはいえ小一時間はいただろうか、あとから思えば、スタッフのお姉さんに、田島先生のお彫刻ガチャガチャをコンプリした話とか、ゼウスのことを神さまだと勘違いして呼び続けていたことなどを熱く語ってしまって、なんだか申し訳なかったかもしれない。
帰り際、受付で記帳を終えると、リンくんはひとことスタッフさんに質問をした。
「あのぉ・・・。会期中、先生はいついらっしゃるご予定だとか、あるんですか?」
すると。
「それがですねぇ、今回の個展期間中にはまだ特にそのようなスケジュールが出ていなくって。先生、まだ頭皮の調子が悪いみたいです。」
「頭皮の調子が悪い・・・!アハッ!そうでしたそうでした。」
「そうなんですぅ。ウフフ。」
「じゃあ仕方がないですね。わかりました。ありがとうございました。」
・・・?!
オラ、アタマのなかがぐるんぐるんして、わけがわからなかった。
オラのアタマの毛が3本なのに対し、先生のハシビロコウは4本だよ、とかそういう話でもなく、先生ご自身の頭皮の調子が悪いのだという。あれぇ、一体何本になっちゃったんだろう。あいや、薄毛になったとかそういうことでもないかもしれない、デキモノができちゃったとかそういうことかもしれない。
なんだか、オラ、心配だ。
「あぁ、パブロヲ。心配しないで。田島先生、きっと頭皮の調子が悪いだけだから。いつか会えるよ。」
「あ・・・アァ・・・うん。オラ、うん、えっと。うん。わかった。。。」
会場をあとにしてから、一応リンくんからは説明を受けたのだけれども、ここでオラが「頭皮」についての種明かしをしてしまうほど間の抜けたハシビロコウにはなりたくないので、割愛する。
オラ、田島先生の作品は今日初めて対峙したのだけどさ、ゲージュツ家として、尊敬すべきニンゲンだってことは確定した。足元にも及ばないかも知れないけどさ、オラが目指すゲージュツガクブもこうでなくっちゃね。
カッコいいぜ!!!
オラのレポートで少しでも伝わればいいなって思うけれど、彫刻家 田島享央己先生について興味を持ったオトモダチがいたら、まずは先生のブログかSNS(X, Instagram)を見てみてくれい。
そして、天王洲アイルまで作品を見に行ってみてね。ホンモノの力はすごいぞ。
んでは!パブロヲでした!
またな!
パブロヲ
田島享央己 個展 『I Believe in You』
会期: 2024/10/18 -2024/11/02
場所: gallery UG Tennoz
田島享央己先生についてはコチラからどうぞ!
ブログ: http://shidokou.blog20.fc2.com/blog-entry-155.html
X: @shidokou https://x.com/shidokou
Instagram: @shidokou https://www.instagram.com/shidokou/
「ガッチャガッチャ アッチャラッカ ガッチャラカ ホイっ!」
https://bobingreen.com/2023/12/13/7348/