夏をぐんぐん進む
「リーンぐーん!早く早く!」
「ボブぞ待ってぇー・・・!」
おでは広いヒマワリ畑を、わふわふと駆けまわる。
強くてカッコいいヒャクジューのオー(百獣の王)といわれるライオンのはしくれだもの。真夏の強い日射しくらいへっちゃらさ。
ライオンのボブぞです。
今年もこの季節がやってきた。
そう、夏ッ!真夏ッ!
そんでもって夏といえば、おで!
だっておでは夏生まれなんだもーん!
おでのだいすきなヒマワリが、今年も咲いた。
そう、おでのだいすきな、ふるさと広場で。
鮮やかな緑色が美しい稲が一面に集まっている。いっぽんいっぽんが重なり合うと、そこはまるでフカフカの絨毯だ。
その手前に、めいっぱいに手のひらを広げたような、黄色いヒマワリが咲いている。すべてが満開でスキのないお花畑・・・と言いたいところなのだけれど、来るタイミングがちょっと遅かったみたいで半分以上はしおれて枯れ始めてしまっているようだ。
黄金色のミツバチたちは、元気さを残す一輪を見つけては懸命に蜜を集め、それからぷぅんと飛びたつとおでの鼻先をかすめていった。
「へぇ!こんなところにカワセミさんがいる!」
今日のリンくんはカメラを2台も携えて、ヨタヨタとひまわりの畝と畝の間を歩き回っている。
不思議なこと言うなぁって思って振り返ってみると、田んぼを背にして、カワセミさんを模したオブジェが光を受けて輝いていた。
「リーンぐーん!早くってばぁー!置いてっちゃうよー?」
「やだー!置いてかないでー!あっ、ボブぞ。風車の見えるところまで行ったら、そこで待っててぇー。」
「んもーしょーがねーな!わがった!」
おでは、
ヒマワリ畑をぐんぐん進む。
夏をぐんぐん進む。
思うがままに、したいように、興味のわく方へ、うそをつくことなく。
それでも、
ときどき後ろを向く。
おでのために向くんじゃない。
だれかのために、後ろを向く。
今日の場合は・・・、リンくんのためかな?
だって、放っておけないから。
いくらリンくんがニンゲンの大人だからって、
おでが小さなライオンだからって、
大きいとか小さいとか、ニンゲンとかライオンとか、カンケーないね。
おでがリンくんを守ってやるだなんてたいそうなことは言わないけれど、
リンくんにおでが一方的に守られる筋合いもないもんね。
おではだれかと一緒に咲きたいし、だれかに見ていて欲しい。
だれかがおでを見てくれていて、そのだれかの人生にうれしいとか楽しいとかの日々を添えることができたら、おでもまたうれしいし楽しいから。
リンくんのためにだなんて、、、やっぱりこっぱずかしーけどな。
おでは、オランダ国旗をたなびかせたでっかい風車に向かって、ダッシュした。
「リーンぐーん!いいフォトスポット見っけたぞ!はやくはやく!」
うしろを向いて大きく手を振った。
夏は、おでの季節。
今年もヒマワリが咲いている。
おではだれかを放っておかないし、ヒマワリもおでのことを放ってはおかない。
「ボブぞー!オッケー。そこで待っててー!」
ぜこぜこと汗にまみれたリンくんの声が、うるさいくらいにおでの耳に届いた。
夏だねぇ。
ボブぞ
「夏のお日さまにはライオンだってさからえない」
https://bobingreen.com/2023/07/16/5641/