すずちゃんの野鳥にびっくりでSHOW – 第22回 夏休みの少年とセンセーとカワセミさんを待つ

「センセー!センセー!いまねー!雷魚がいたよー!」

「おー?雷魚か。どこだぁ?影しか見えんなぁ。」

「あのね!あのね!自衛隊の模様みたいのが動いてたよ、ホラ、センセーが作ったさぁ、あの枝の下のあたりだよぉ!」

ミンミンミンミン
ジリジリジリジリ

セミたちの鳴き声に混じって、元気な少年の声が響く。

小学校低学年くらいかなぁ、ザ・夏休みの少年といった風貌で、Tシャツに短パン姿で、水路の脇のため池を眺めている。

その横には、70歳前後と思わしきオジイが、こちらはザ・野鳥愛好家といった風貌で、ハットをかぶり首からでっかい双眼鏡をかけている。少年から「センセー」と呼ばれるそのオジイは、口もとには白髪まじりの口ひげをたくわえ、少年と同じく水面を眺めている。

オトモダチのみんなー!こぉんにぃちわーにっ!
鳥さんだいすき、ウサギのすずちゃんこと鈴之助でっす。

ずーいぶんご無沙汰しちゃったこのコーナーだけど、久しぶりに再開するよ!

その名もぉ・・・

「すずちゃんのぉぉぉぉぉっ野鳥にびっくりでSHOWぉぉぉぉぉ!」

“鳥さんだいすき!ウサギのすずちゃんこと鈴之助だよ”

密かに大人気の?このコーナー、ついに第22回を迎えたよ。

といってもね、実は前回から2ヶ月以上もあいてしまったの。
それもこれも、このコーナーのアシスタントでありカメラマンのリンくんが体調を崩して、先々月入院しちゃったからなんだ。退院してからも少しずつリハビリをしている間に梅雨が明けてしまって、そしたら直後から連日の猛暑!
(リンくんの入院のお話はコチラ「リンくんの外泊 – リンくんが入院した その1」

っていうわけで、でっかい望遠レンズ付きのカメラを持って、暑い中お散歩できるくらいに回復するまでに、こんなにかかっちゃった。
(前回のお話はコチラ「すずちゃんの野鳥にびっくりでSHOW – 第21回 みどりキャンプ場にエナガさんがやってきた」

「すずー、今日はちょっとだけ涼しいから、お外行ってみる?」

今朝、6時半すぎに起きて居間にやってきたリンくん。ついにすずのことを野鳥観察に誘ってくれたんだ。

すず、これまで毎日のように、「ねーねーリンくーん!鳥さん、まだー?鳥さんに会いたいよー!」って言い続けてきたかいがあったよ。リンくん、ちゃんと覚えてくれてたんだね。

行き先は、歩いて30分くらいの、いつもの公園だよ。今朝のチーバの予報はくもりときどき晴れ、最高気温は33℃。35℃を超えて熱風がすごかった日を思えば、今日は少しは楽かなー?っていう感じなんだ。
(いつもの公園でのカワセミさん探しのお話はコチラ「すずちゃんの野鳥にびっくりでSHOW – 第13回 カワセミさんの青いレーザービーム」

“野鳥撮影用のでっかいレンズをつけたカメラを持ってお散歩にやって来たの”

ため池の橋の上でのんびり会話する少年とオジイの横に、しれっとすずも一緒に並んでみたよ。

「トンボしかいないねぇー。」

オジイが独り言のようにつぶやく。ウサギのすずには目もくれず、リンくんに話しかけたみたいだった。

“シオカラトンボがいっぱい飛んでいた”

「あ、カワセミさんは今日はいませんか?久しぶりにココ来たんですけれど。」

リンくんがひとこと質問すると、オジイはサッとポケットから小さいデジカメを取り出していろいろとしゃべりはじめた。今日も見たよぉ、えっとね、さっき見たのはあそこね、それで、昨日はアッチの金網のところで、ホラ、見て見て、ヒナが3羽いてねぇ、最近は橋の向こうの小川のほうにいることも多いんだよ、だなんて説明をしてくれた。

「今日見たのって、早朝ですか?」

「あいや、ついさっきよ。待ってればまた来るんじゃないかなぁ。」

そんな具合で、急遽、すずとリンくんは、しばしオジイと少年と一緒に、ため池エリアを観察することになったんだ。

「そうそう、ゴイサギの若いのもいたよ。あの水路のとこね。」

「あ!以前も見たことあります。じゃぁちょっとゴイサギさん見てきます!」

リンくんは知らない人と長い時間おしゃべりするのはあまり得意じゃないから、ちょっと距離を取ろうと、そのオジイが言うゴイサギさんがいるという水路のほうへ向かった。

「ねぇねぇすず、ゴイサギさんいるって!」

「ひゃぁー!すず、ゴイサギさん見たいー!」

すずとリンくんはゴニョゴニョと小声で話す。リンくんに抱っこされたまま、水路の奥のほうを目をこらして探したよ。

手前の方には、白い羽に黄色い脚のコサギさんが、チョイチョイと水面をつつきゴハンタイムなの。どこかなーって見ていたら、日陰になっている暗がりの奥から、赤い目のゴイサギさんがやってきた。

“黄色い足が特徴のコサギさん。水面をチョイチョイとつつきゴハンタイム”
“コチラがゴイサギさん。赤い目が目立つね”

「いた!いたねぇ!」

「わーいっゴイサギさん!ゴイサギさんにびっくりびっくりー!」

わぁいわぁいとリンくんと一緒に喜んでいたら、オジイが近づいてきた。

「あーゴイサギ来てくれたねぇ。カワセミも見られるといいね。」

そういって小さな缶を取り出して、ハイ、と黒いなにかをリンくんに手渡そうとした。

「”女梅”じゃなくてゴメンだけど。どうぞ。」

それは、”男梅”のアメちゃんだった。
その瞬間、夏の日射しがジリジリと強さを増してきていることに気がついた。

「わ!アリガトウございます。」

背中のリュックの脇に差し込んである麦茶のペットボトルを取り出してひとくちグビリとやって、そのあと、リンくんは、「せっかくなんでいただきます」と言ってアメの袋を開けた。

「あ、すずも食べたい?」

「ううん、すずはキューリがいい。おうち帰ったらキューリ食べるからダイジョブ。リンくんが倒れたら帰れなくなっちゃうから、リンくん食べなよね。」

「おっけー。・・・ン。酸っぱくてしょっぱくてオイシー・・・」

モニョモニョと口を動かすリンくんの向こうで、少年がセンセー、バイバーイ!と去っていくのが見えた。オジイのこと、センセーって呼んでるのも不思議だったけれど、やっぱり家族ってわけじゃなかったんだね。
夏休みの少年と、鳥見好きのオジイと、ウサギを連れてでっかいカメラを首から下げたリンくん。なんだか妙な取り合わせだ。みんな他人だけど、みんなどこかでつながってるんだ。

少年が帰ってしまったあと、今度はベビーカーを押したカップルがやってきた。お父さんのほうがどうやら双眼鏡を持ってきていて、やっぱり水路を観察しているんだ。リンくんのカメラに目をやると、話しかけてきた。

「何を撮りに来たんですか?」

「あ、今日はカワセミさんです。」

あぁやっぱりねぇ!と言って、しばらく過ごした後になかなかあらわれないことにしびれを切らすと、また夕方来ようか、と奥さんのほうを向いて帰っていった。

リンくんはまたオジイとふたりぼっちになった。

男梅はもう食べ終わってしまって、ほのかな甘じょっぱい香りがリンくんの口元から漂ってきた。ウサギのすずがここにいることは、オジイには気が付かれていないの。

公園に着いてから1時間ほどが経っていた。

「あ!来たー!」

リンくんが小さな声ですずを呼んだんだよ。いや、もしかすると、オジイにホーコクしたつもりなのかもしれない。

来た来た、と手ぶり身ぶりで知らせると、オジイは満足げにうなずいた。

「カワセミ来てくれて良かったねぇ。んじゃ、ごゆっくり。健闘を祈ります。」

カメラを構えて撮影の設定を始めたリンくんに、そうひとこと言い残して、オジイは自転車にまたがった。

リンくんは柵越しにカメラを構えていたものだからあたふたして、仕方ないからすずが変わりにお礼を言った。

「ハーイ!アリガトございましたぁ!・・・セ・・・」

つい、センセー!と言いたくなったけれど、それはなんだかまだ早い気がしたのでやめておいた。もし次に会ったら、そのときはなんでセンセーって少年に呼ばれてるのか、聞いてみようと思う。もの知りだからなのかな?それともホントにセンセーなのかな。なんだか不思議な時間だった。

“オジイ、いろいろ教えてくれて、あと男梅、アリガトございましたぁ!”

オジイ、否、センセーが帰っていったあと、しばらくカワセミさんを観察してたけれど、リンくんは思うようなベストショットは撮れなかったみたいだった。
カワセミさんは水路に突き出た枝の上に止まり、何度か水面に飛び込んでエサを取ろうと試みたのちに、また別の場所に飛んでいってしまったのだった。

“水面をジィっと眺めて飛び込む瞬間を待つカワセミさん”
“ダイブっ!(ピント合ってないけど…!)”
“お、お魚ゲットしたね!”

「まぁだまだ修行が足りないねぇ!リンくん。」

「すずー、今日2ヶ月ぶりの復帰戦だからね。暑いしね。また、今度チャンスあるよ。」

「言い訳は無用だよっ!リンくん、そんなこと言ってると『すずちゃんの野鳥でびっくりでSHOW』のアシスタント、見習いからやり直しだからねっ。」

「はうーん!すず、キビシー!」

ま、そんなこと言いながらもね、すずはリンくんがいなくっちゃ鳥さんに会いに来れないもんね。しっかり体調整えてよね。

久しぶりの「すずちゃんの野鳥にびっくりでSHOW」、第22回は、夏休みの少年とセンセーとカワセミさんを待つ、でした。
なんだか、野鳥さんにっていうよりも、オジイセンセーにびっくりびっくり!な回になっちゃったねぇ。

そういえば、雷魚はホントに雷魚だったのかなぁ・・・。あの少年にもまた会えるかな?

アハッ!

さぁー!次はどんな鳥さんに会えるかなっ?

すぃーゆーねくすと!
ばいばーい!

すず(鈴之助)

“「すずちゃんの野鳥にびっくりでSHOW」次回もお楽しみに!”

「すずちゃんの野鳥にびっくりでSHOW – 第20回 手賀沼で桜の木に住むコゲラさん」
https://bobingreen.com/2024/04/15/8950/

「すずちゃんの野鳥にびっくりでSHOW – 第19回 団地の桜とメジロさん」
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「すずちゃんの野鳥にびっくりでSHOW – 第18回 ヒヨドリさんのお花見姿」
https://bobingreen.com/2024/03/18/8654/

「すずちゃんの野鳥にびっくりでSHOW – 第17回 白く染まる並木はカワウさんのコロニー」
https://bobingreen.com/2024/03/12/8584/

「すずちゃんの野鳥にびっくりでSHOW – 第16回 お不動さんのお庭でヤマガラさんに出会う」
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Rin(リン)

ぬいぐるみブロガー、Rin(リン)です。 ライオンのボブ家と愉快な仲間たち、そしてニンゲンのケンイツ園長と一緒に、みどりキャンプ場で暮らしています。 ボブ家の日常を、彼らの視点でつづっていきます。

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