もっつは一時失業中 – リンくんが入院した その5
ホラ、いつかのテレビCMであったろ?
「きょう、だれかを、うれしくできた?」
ってヤツ。
うーっす。
ソファの番人、ツキノワグマのもっつです。
聞いたよ、聞いたよ。
アイツ、入院したんだって?あぁ、うちのリンくんのことだよ。
リンくんさぁ、確かにここんところずっと体調イマイチだったんだ。
だけど、まさか、なぁ!
おれってさ、普段ね、リンくんの添い寝係なわけ。しかも夜というよりは昼間が多くって。
要するにお昼寝だったり、体調悪くてちょっと横になるねぇ、みたいなタイミングでいつもおフトンに借り出されるのはおれなんだ。
だから、リンくんが入院するまでの1週間近く、ホントおれ、毎日激務だったの。残業残業また残業。かと思えば、早出もあれば、急な夜勤まであって、休憩はなし、みたいなね。こんな職場、ブラックもブラック、真っ黒けっけだよ。
それが一転。
なんだかおれ、失業しちゃった?ってくらい、いま、暇なんだ。
だって。
雇用主のリンくんがいなくなっちゃった。。。
はうーん。
言いたかない、言いたかないけど。
「さみしい・・・。シゴトがないってこんな不安?さみしいよぉぉぉぉぉ!」
おれがほえていたら、なんだなんだ?ってみんながソファに集まってきた。
「もっつ、どしたー?さみしーの?」
「おーい、もっつらしくないじゃん。いつもはリンくんのハグ、しつこくて嫌だ嫌だって言ってたのにぃ。」
「ハグはいやだ。寝汗もヨダレもやだ。でも・・・なんだか喪失感・・・。仕事が・・・ない。」
「どしたー、でかい図体して。もっつ、オラと遊ぶか?ん?」
「ぐぁーっ!よーくかんがえよー!もっつはさみしいんだよー。」
パブロヲや、まさかのオージェイまで集まってきてしまった。
いかん。いかんいかん。
リンくんの添い寝係リーダーのおれがクヨクヨしてたらオハナ(家族、ぬいともいう)のみんなを巻き添えにしちゃうかもしれん。
よーしっ。ここはいっちょ気合入れ直して、みんなでリンくんにエール送ってみるか。
「なあなあ、みんな。『きょう、だれかを、うれしくできた?』かい?」
おれがソファのみんなにそう質問すると、各々が首をかしげたり立ち止まったりして、そのあと、みんな一斉にふるふると横に首を振った。
「じゃあさ、こんなのどお?」
おれは全員を集めてゴニョゴニョと内緒話をした。そして、ケンイツエンチョーを呼んだんだ。
「エンチョー、ちょっとさ、みんなでいーことするから写真撮ってくれよ!そんで、リンくんに送りつけて。」
「お?なんだなんだ?もっつの発案なの?やるじゃん。」
へへっまぁね、と言っておれは持ち場に戻る。
「さぁ、オハナのみんな、用意はいいね?」
「ハーイッ!」
せーのっ!
「今日は、リンくんを、うれしくしたーい!」
カシャッ!
絶妙なタイミングでエンチョーのスマホのシャッター音が鳴り響いた。
そう。
おれ、ツキノワグマのもっつ。
リンくんが入院中のため、一時失業中。
そんなおれだって、
きょう、だれかを、うれしくできる。
いちばん近くにいる、オハナ(家族)をうれしくしようじゃないか。
それ以上に大事なことってないだろ?
さっきまであった喪失感が、はらはらとほどけていく気がした。
うん、そんな自分を誇らしく思う。
もっつ
きょう、だれかを、うれしくできた?
Hondaハート 本田技研工業
「リンくんの外泊 – リンくんが入院した その1」https://bobingreen.com/2024/06/14/9441/
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