可愛い猫にはタビをさせよ
吾輩は猫である。
名は、まだなかったが、ついに、与えられることに相成った。
本日は2月22日。世の中は、猫の日だとニャーニャーニャンニャンと騒いでおる。
そんな日に、吾輩は、正式に世に出ることになった。
この家でいう、正式に世に出ることになった、というのは、オハナつまりこの家の家族になるということである。
吾輩はただの猫から、オハナの猫に成り上がった。
改めて。
吾輩は猫である。
名は、タビと申す。
よろしうに。
以後、お見知りおきをお願い申し上げる。
タビ、という吾輩の名の由来は、みっつあるという。
―――ひとつ。「足袋」。
吾輩は元来、ちびこーずと呼ばれるオハナたちを守る袋の役目としてこの家にやってきた。
吾輩の身体はニンゲンの履く靴下のような伸縮する布地でできていて、ペットボトルなるもののカバァとして店前で陳列されていたらしい。それを主人(リンくんのことだ)が、手に取り、買い求めたのだという。
「靴下っぽいから、足袋ね。」との曰く。
まあなんとも、安易なことだろうか。
―――ふたつ。「木天蓼(またたび)」。
主人曰く、「猫には、またたびだし。」
またこれはなんとも、こじつけが過ぎるのではなかろうか。
なお、吾輩はまたたびの香りをかいだことは、まだない。
―――みっつ。「旅」。
この家の者たちは、どうも外出をすることが好きらしい。
何かと理由をつけてはあちらこちらへ出かけていき、スマァトフォンなるもので数え切れぬほどの写真を撮っている。
ぬい撮り、というらしい。(ちなみに、吾輩が”ぬい”が否かについては過去にも論じようとしたが、未だ結論は出ておらぬ。)
つい数日前も、オハナみなで、成田山新勝寺にある出世稲荷という社寺に参った。
ここは、この家の新入りたちが以後の活躍を願ってお参りをする場所なのだという。その場所に、吾輩はついに立ったのだった。
言い忘れたが、吾輩の最終的な名付け親は、主人(リンくんのことだ)ではなく、主人の連れ合いのケンイツエンチョォであった。この家の者は、ケンイツエンチョォに名を与えられてきているそうだ。
曰く、
「おい、猫。お前さんはせっかく家に来たのだから、オハナたちを守るとともに、これからは、一緒に旅をするのだよ。さぁ、タビと名付けよう。これから、世に出ようじゃないか。可愛い猫はタビをするものだ。」
なかなかに、センスがある。
安易とこじつけでやり過ごそうとする主人(リンくん)とは大違いだ。(思案するうちに、危うく、”漱石”と名付けられそうになったことは、黙っておいてやろう。)
吾輩は先頭に立ち、主人と、主人の連れ合い、そしてライオン三兄弟やらのオハナたちとともに決して大きくない鳥居をくぐった。そして、狐たちの前で心静かに手を合わせた。
「吾輩は猫のタビと申します。これから、この家のオハナとして名を与えられ、世に出ることに相成りました。お稲荷さま、どうか、お見守りください。」
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猫であることには変わらないので、せっかくだから最後にひとこと。
ニャンニャンニャン。
皆様、良き猫の日を。
タビ
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猫が自我を持ち始めた頃のお話はこちらからどうぞ↓↓↓
「吾輩は”ぬい”であるか?」
https://bobingreen.com/2023/02/07/3791/
「猫の衣を借る熊」
https://bobingreen.com/2022/10/13/2794/