夕刻の空の道
ボブおです。
夕刻の美しい空は、おれのもっとも好きな景色のひとつだ。
今日は朝から灰色の曇りがちで、北風も強い。すきま風だらけのこの古い団地では、暖を取るのは一苦労だ。早々にガスストーブを出してもらって、おれらはヌクヌクとモーフにくるまって静かに過ごしていた。冷気を少しでも遮断するために、窓のカーテンも引いていたものだから外の様子はあまり気にしていなかったのだけれど。
年季の入った日焼け混じりのクリーム色の布越しに、ピンクに照らされる光を感じて、おれは驚いた。夕闇のやってくる日の入りの直前夕方5時ちょっと前のことだ。
リーンくーん。カーテンあけてみてよ!
はいはいな。換気もしなくちゃだしね。
カーテンがパッと開いた瞬間、幻想的なグラデーションがあらわれた。
うわぁ・・・。
急いでみどりテラスに出ると、より一層、色が鮮やかに、目の前に迫ってきた。そこには、不思議な一本の道ができていた。
今日の空は、また一段とキレイだねぇ。私、好きだなぁ。
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リンくんはありきたりなことしか、言えないのな。表現力とか語彙力とかね、この空に、全然、追いついてないよ。そう言ってやりかったけど、だまっておいた。おれも、なんて言っていいか、わからなかったからだ。
この道、どうやってできたんだろう。そして、どこ行くんだろうね?
リンくんはボソボソとおれに話しかけてくる。おれは、うんうんと相槌だけ打って、言葉を探していた。
東のふもとから、南中を通って、西の空へ伸びているがその着地点はわからなかった。林の闇の奥へと消えていったからだ。おれは摩訶不思議な空の道に見とれながら、ぐっと大きく伸びをした。端をのぞき込もうとしても、それはあまりに広くあまりに深く、到底おれが太刀打ちできるものではなさそうだった。
陽が沈めば夜がやってくる。その一瞬の空の移り変わりは、こんなにも豊かなものなのだ。おれは胸いっぱいにこの色を吸い込んでやろう。そう思って、大きく深呼吸をした。
スゥ・・・ハァー・・・
うん。いい空だ。おれ、好きだなぁ。
でしょ。でしょ。私もボブおと空を見上げるの、好きなんだもんね。
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リンくんはうるさいよ。黙ってて。
リンくんの腕の中で、静かにもうひとつ呼吸を整えた。
スゥ・・・ハァー・・・
いい空だ。
ボブお
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