壊れかけのcamera
オレの愛機、オリンパスのコンパクトカメラ、STYLUS SH-2。
オレが生まれた年に、オレを撮るために、リンくんが手に入れたそいつは、気がつけばもう歳を取って、最近では、アチコチが痛いと言い出した。この頃では何を撮ってもホワイトバランスがおかしくなり白飛びばかりする、白内障の症状がひどい。メーカーのオリンパスによればもう保証期間はとっくに終了しているし、修理対象の機種でもなくなっていた。なんならこやつの後継機種もない。オリンパスはコンパクトカメラ事業からほとんど撤退してしまったからだ(”Tough”シリーズ以外の一般的なマルチユースのコンパクトカメラはない)。
これまで、何千枚何万枚とオレらを記録し続けてきたSH-2。もう体力気力の限界、引退をさせてくれ、と懇願されつつも、なだめすかして酷使していたことがたたってか、今となれば不治の病と戦っている。それでも手元に寝かせ、時々電源を入れて様子を見ては快方に向かうことを期待していた。その結果、お出かけに連れていくこともなく、登板機会をすっかり逸してしまっていたのだった。
それなのに。
それなのに。
それなのに。
今宵、2022年10月8日。十三夜。
月見の夜に、ついに、ヤツが、復活を遂げた。SH-2、まだ出番と役割があることを証明してくれたのだ。
月夜というのは、当たり前だが素人には撮影が難しい。SH-2に白内障が出始めてからというもの、代打からスタメンに仕方なく昇格させられた若輩者のキャメラ氏はまだまだ経験不足だし、ましてやスマホちゃんなんかにはその役目は務まらない。助っ人を雇おうにも昨今のキャメラ業界のギャラは高騰していることもあり懐事情は厳しく、正直、困っていた。
それなのに。
それなのに。
見よ。ヤツのこの鮮やかな仕事ぶりを。
おれは、感動した。
いい十三夜を、愛機のSH-2と迎えられて、感動している。
本当の月夜教えてくれよ♪
壊れかけのcamera♪
まだまだ、オレらのために、いい仕事してくれよな。期待してるぜ。
これからも長く付き合っていこうぜ。
月夜の楽しみがひとつ増えたよ。ありがとう。
ボブお
本当の幸せ教えてくれよ
德永英明 『壊れかけのradio』
壊れかけのradio