お空に向かってシャキーン!
錦糸町駅の北口に降り立って、ニンゲンたちをかきわけかきわけ歩く。チーバの郊外からやってくると、錦糸町の街はとても難しく感じる。まっすぐに歩くとニンゲンにぶつかるし、ぐっちゃぐちゃーのぐっちゃぐちゃーに歩けば自分がいまどこにいるのかを見失う。
仕方ないから、ケンイツエンチョーのTシャツの裾をつかんで、みんなでおそるおそる歩みを進める。
あ、ここだ。
エンチョーの声を頼りに、海鮮丼やさんの角を折れると、トンガリがひとつ。タワービュー通りだ。
ウサギの鈴之助です。
あのトンガリ、なぁに?
お空に向かってそびえ立つ、白くてモニャモニャした模様がある、ニュッとしたトンガリ。
すず、あれがスカイツリーだよ。
すかいつり?
そう、スカイツリー。空の木、だよ。ニッポンでイチバン高い木だよ。お空に向かてそびえ立つ木なんだ。
ふーん!
空!
すず、チーバのお空なら、いっぱい知ってるよ!真っ青な日もあれば、真っ白い日もあるし、灰色のモクモクが迫ってくる日もあるよね。
木!
すず、チーバの木、いっぱい知ってるよ!みどりテラスから、木、いっぱいいっぱい見えるもん。鳥さんたちがいっぱい住んでる、あの、木、でしょ?
でも・・・、空、「の」、木?そらのき?
ハテナ?
「の」、ってなんだ?
アッ!「の」っていうのは、とっても姿勢がいいってことなのかもしれない!
だって、すず、コンナに姿勢のいい木って、初めて見るもん。ドコにも枝も葉っぱもないよ。茶色くないし、みどり色でもないし、まっちろくてまっすぐだ。
なんだかこれが木だってフシギだなぁって思って、白いトンガリをボンヤリ見上げてたら、エンチョーに置いていかれそうになって、急いで羽をパタパタさせて追いついた。
すず、今からスカイツリーのふもとまで、歩いて行ってみよう。
ン!わかったー!
お空に向かって姿勢のいいニッポンでイチバン高い木。
すずね、ジマンじゃないけど、ウサギのなかでもかなり姿勢はいい方なんだ。まっすぐに背を正して、シャキーン!って立つんだよ。ボブ家のなかでもいちばんの姿勢の良さを誇ってるんだ。
だから、すず、空の木をひとめ見て、気に入っちゃった。空の木さんの姿勢、マネしてみることにした!
シャキーン!
すずー。ほらぁ。早く行くよぉ。
シャキーン!
お空の木のマネしてたらまたエンチョーに置いていかれそうになって、羽をパタパタさせて追いついた。
ねーねーエンチョ、空の木にはどんな鳥さんが暮らしてるのかなぁ?
ふもとまで歩けたらわかるよ、さ、行こう。
エンチョーは振り返って、少し猫背ぎみに答えてくれた。
ホラ、すずを見習ってよね。
ねぇエンチョー、見てー!
シャキーン!
すず、すかいつりのマネ上手でしょ!
すず(鈴之助)
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