きんとうん、ひとつください
ジィー。なんだろ?なんの虫の声かなぁ。蝉にしては静かだし強弱も抑揚もない。途切れなく、ずぅっと、ジィーーーーーしてる。
夕方5時。町のチャイムが鳴り、おれはちょっとイップク、とタバコを吸いに行くエンチョーの後について、一緒にみどりテラスに出たの。
ボブおです。
おれは、夕方の音が好きだ。あと、夕方の風も好きだ。
まだまだ西陽がガンガン差し込むけれど、このみどりテラスは南東を向いてるから、比較的涼しくなる。スゥっと風が抜けてここちよしだ。
口に出して言ってみる。
こーこーちーよーしー。
ふぅ。いいだろ?
空には白いお月さま。半月、いわゆる上弦の月だ。
そして、建物と青い空の境界あたりには、もくもく、もくもくと、たくさんの白い雲が、集まっている。
まるで漫画に描いたような雲。きんとうん、ってやつだなぁ。
おれは、夕方の音が好き。
夕方の風が好きだし、夕方の雲も好きだ。
雲をコレクションできたら楽しそうだなぁ・・・。
そんなことをぼんやりと思いながら、お月さまに話しかけてみた。
きんとうん、ひとつくーださい。
・・・。

返事は聞こえないけど、まだお月さま、準備中だからかな?
今宵は七夕。
この空の様子なら、もしかしたらオリヒメさんとヒコボシさんが出会えるのかもしれないね。
お日さまが店じまいして、お月さまがのれんを出したら、もう一度みどりテラスに出てみようっと。
ボブお
