おめめぐりぐり
お昼寝からふと目が覚めたリンくん。おなかが痛いという。
例の、あれかあ。
シク。シク。
ガマンできないほどではないけれど、といいながら、ソファに戻ってきた。メガネと本を持って。モーフでおなかより下をぐるぐる巻きにする。
そのおなかの上に、呼ばれた。
わっし、くまの、もっつ。
わっしはクッションじゃないし、まくらでもないよ。でも。
仕方ないなぁ。
リンくんの腕のなかに入ってやる。
そのうち本を開きはじめた。図書館で借りてきた、ハードカバーの、単行本だ。白い表紙には、『ざらざら』、と書いてある。
先日はじめて読んだ、『神様』というくまの物語を書いた、川上弘美さんの別の短編集なのだそうだ。
リンくんは、本を読むのが早い。あっという間に一冊読み終えるんだ。
今日も、おなかがシクシクするといいながらも、まほうびんの水筒に入れたアールグレイを片手に、ページをくっていく。
なぁ。わっしに、お茶こぼさないでよね?
うん。ダイジョブ。
そういって、ひとくちすする。
ページをめくる間に間に、リンくんの手癖が始まった。
ぐりぐり。ぐりぐり。
左。
ぐりぐり。ぐりぐり。
右。
うぅ。
わっしの目玉をぐりぐりするのが、癖なのだ。
ぐりぐりぐりぐり。
ぐりぐりぐりぐり。
おうい、そんなにぐりぐりしたら、わっし、おめめパッチリオッサンぐまになっちまう。
・・・。
ねえ、きいてる?
・・・。
・・・パラッ
わっしのアタマの上でページをめくる音が聞こえた。
ふぅ、今日は仕方ないか。調子の悪いときのリンくんは、声も小さいし、動きものろいし、反応が鈍くて、低空飛行だから。
一緒に、いるしかできないから、いてやるな。
ぐりぐり。ぐりぐり。
リンくんの、腕のなか。
むぅ。ガマン。
もっつ