風向き良好(くらげが空を舞う 2022)

今日は朝からワクワクが止まらないの。

ボブぞです。

みんな、おはーに。

ふわぁ、リンくんおはーに。

ムニャムニャ。おでがまだ寝起きのポンヤリした気持ちで居間へ行くと、おでらよりちょっぴり早く起きた、変なテンションのリンくんがいた。部屋の中を落ち着きなくうろうろとして、何度も窓の外を見てる。

うーん、まだ曇ってるねぇ。青空のほうが見えやすくていいんだよねぇ、暖かいし。晴れるかなぁ。ねぇ、晴れるかなぁ?

そだなー。ヨーダさんの天気予報では、チーバは晴れるっぽいから、ダイジョブじゃない?

今日は何の日?

そう。今日はね、年に一度の、くらげ大パーティーなの。大量のくらげたちが、みどりテラスの空を舞う日なの。ボブ家では、年始めの恒例行事として、毎年日程をチェックしてね、くらげ観覧するのを楽しみにしてるんだ。

リーンくーん。準備してぇ。

はいはいな!

早速みどりテラスにキャンプイスにクッションも設置してもらって、防寒用のモーフもカメラも用意して、準備は万端。

・・・はやくね?

イップクしにテラスにやってきたエンチョーに突っ込まれる。

ほら、クッション干すのにもちょうどいいしさ。

平静をよそおってるように見えるエンチョーも、実は気になってるっぽい。オシゴトの合間にちょこちょこ様子を見に来ては、おでらにチョッカイ出していく。

わーくわーくわーくわくー

わくわくわーくー

わくわくわくわくわくわくわくわく!🎵

ずっとお外にいるのは寒いから、おでとニーちゃんは、窓際のソファのへりにしがみついて、外を眺めて待っていたんだ。

“わくわく!”
“わくわくわくわく!”

すると・・・。

ばるばるばるばる・・・

ごくごく小さな音で始まったイントロ。時刻は午前11時をまわったところ。

ばるばるばるばる・・・・・
ばるばるばるばるるるるるるるるるるるるる!!!
ばばばばばばばばばばばばばばばばばば!!!
バリバリバリバリバリバリバリバリバリバリ!!!

フハっ!今日は特別ににぎやかだ。

小型、大型、アッチコッチでばるばるしてる。

キャンプ場の周囲を旋回してみたり、荷上げしてホバリングしてみたり。

と思ったら、後方から別の音が。

・・・・グオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォ・・・

おおー!ヒコーキ来たぁ!

” ・・・・グオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォ・・・ “

南の高い位置を目指して徐々に場所を移動していくお日さまの光を一瞬さえぎるかのように、おれらの目の前を通り過ぎた、

と思ったら。

パラパラ パラパラ パラパラ パラパラ パラパラ
パラパラ パラパラ パラパラ パラパラ パラパラ

キッチリ、20匹のくらげ。

あけまして、おめでとうございます!
新年のくらげ始め、2022。

ライブに例えて言えば、ステージに登場してから三曲目までぶっ通しで駆け抜けて、序盤のクライマックスを迎えた、といったところだろうか。

(「みーんなー!今年も来たよー!みーどーりーキャーンプッ!」)

ここでMC、と言わんばかりに、歓迎の効果音が入る。

ヒュゥー・・・・ルルルル・・・・(ボワン・・・)

火薬モリモリの舞台演出も健在だ。

ズドンッ!
スパパパパパパパ!
ズドンッ!
スパパパパパパパパ!

ずいぶんと太陽の位置が高くなってきた。

おではニーちゃんと連れ立って、キャンプイスに移動したの。ひなたぼっこしながら、いよいよ観覧だよ。

“みどりテラスのひなたぼっこはここちよしー”

ばるばるばるばる・・・

耳の奥、というより、カラダの奥に、ずっと低音で響きつづけるばるばる音。

ふと顔をあげると、

ふわりふわり

小さな葉がみどりテラスに飛び込んできた。

枯れ葉混じりの南西方向から吹く風が、臨場感を増してくれる。

風向き良好。
 

気が付けば、空の雲は散らされて、太陽の光の筋で目を開けているのがつらいくらいに晴れわたっていた。何にもさえぎられることなく、おでのたてがみをカラフルに照らしている。

さぁ。今年も、みどりテラスをくらげが舞うのだ。

ヒコーキが後方から旋回しながら、こちらへやってきた。1機、2機、3機。

スゥっ・・・

そのおしりから、糸を引くように、次々と出てくるくらげたち。

“糸を引くように、次々と出てくるくらげたち”

風と一体となって、空を舞い降りていく。

パラパラ パラパラ パラパラ パラパラ パラパラ
パラパラ パラパラ パラパラ パラパラ パラパラ
パラパラ パラパラ パラパラ パラパラ パラパラ

最後の1機が、くらげをすべて吐き出して、飛び去って行った。

・・・以上をもちまして・・・

かすかに聞こえる拡声器の声。何を言ってるのかはちょっとわからない。

・・・ペーポーぺぺー・・・

金管の音楽が聴こえる。おそらく、終わりを告げる何かの儀式の曲なんだろうと思う。

ばるばるばるばる・・・

ずっとうなり続けたプロペラ音も、だんだんと遠ざかっていった。

アウトロも、この音だ。

その瞬間。

キーンコーンカーンコーン🎵

小学校のチャイムが聴こえた。12時15分。

ここ、みどりキャンプ場は、都会でも田舎でもない、平凡で巨大な団地の一角。みんな、学校に行ったり、オシゴトしたり、のんびりと犬と散歩したり、しているの。

さ。お昼ごはんにしよか。お部屋入ろう。

うん!

今日もみどりテラスは、平穏で、あったかいのです。

ここで、おでらはオハナみんなで仲良く暮らしている。静寂と爆音が混在する、我が家の日常。

ニーちゃーん。くらげ、終わっちゃったねー。あー、今年もすごかった!

ボブぞ

“コーフンするおでを横目に、ゆったりと観覧するニーちゃん”

“今年もすごかった!”
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Rin(リン)

ぬいぐるみブロガー、Rin(リン)です。 ライオンのボブ家と愉快な仲間たち、そしてニンゲンのケンイツ園長と一緒に、みどりキャンプ場で暮らしています。 ボブ家の日常を、彼らの視点でつづっていきます。

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