ブチとシロ
ボブおです。
おれは、オハナのリーダーで、ヒャクジューのオー、ライオン。
我が家のダイコクバシラは、ケンイツエンチョー。おれらのおとっさんであり、おかっさんでもある。
リンくんは、いまのところ、メシタキしてる、ライオン見習い。だけど、ニンゲンのまねごともしている。
すべてが中途半端なやつなんだ。
そんなリンくんの口ぐせは、
ニンゲンやめて、どうぶつになりたい。
だ。
どうぶつにだって、大変なことがたくさんあるんだぞ。ずいぶんと失礼なやつなんだ。何もわかっちゃいない。
ヒャクジューのオーのライオンのおれが言うんだから、間違いない。
リンくんは、いまだにカイシャってソシキに所属して、パソコンをカタカタカタカタやったり、オンラインカイギとかいうやつをやっている。楽しそうな顔なんて最近めっきりだ。むしろ、つらい、とか、ねむい、とか、つまらない、とか、むかつく、とか、そんな話ばかりだ。
たまにじゃないぞ、まいにちだ。
なぁ。ニンゲンやめたいんだろ、そんなもんやめちまえよ。
やめたい。ニンゲン、やめたい。
さいきんニンゲンつきあい、とってもニガテ。
おうい。どした?
うん。ニンゲンと話すのが辛いの。
フーン。
でもさ、これまで、ずっとカイシャってとこで、ソシキってとこで、働いてきたでしょ。しかもさ、エーギョーなんでしょ。エーギョーって、ニンゲン同士でお話するおシゴトでしょ。もうニジューネン近くやってんでしょ。
リンくん、いまだって、まいにちやってんじゃん。
パソコンの画面向かってさ、「オセワニナリマスぅー。」って。
う・・・。そう。そうなんだけどね。
たぶん、使い果たしたんだと思うなぁ。ほら、いうじゃん。花粉症の話。コップがあってね、そのコップの大きさは人によって違うんだけどね。花粉が飛ぶとさ、そのコップにどんどん、どんどん、蓄積されていって、いつかあふれると、花粉症の症状が出るってやつ。あの話。
はぁ。
カイシャってソシキでニンゲンづきあいする力ってのものさ、花粉のコップみたいなことで、人によって大きさが全然違ってさ。寸胴鍋みたいなおっきくて頑丈な、何があっても割れなくて、一生いっぱいにならない人もいれば、うすはりのシャンパングラスみたいに繊細で美しくて、でもほんのひとくちしか入らない人もいるのかも。もしかすると、もともとは人並みのコップを持ってたんだけど、何かの拍子にヒビが入ってしまって、そこから少しずつ水もれするようになっちゃうなんてこともあるのかなぁ。
とにかく言いたかったことは、人それぞれいろんなコップを持ってて、みんなちがう。もしも自分のコップを取り換えることができないんだとしたら、それを受け入れたほうが楽しいかなってことだよ。
ねぇ、ボブお。どう思う?聞いてくれてた?
・・・ンー。はぅーん。そうかもねぇ(否定してもショーがないんでしょ)。
そうでしょそうでしょ。だから、きっと、私のコップはもういま表面張力スレスレなわけよ。普通の水だとあふれちゃう量でもさ、もしビールだったら、泡でなんとかもうちょっと踏ん張ってくれるじゃない?
いま、まさに、そんな感じ。
じゃあ、おれがそのおビーの泡、飲んで減らしてやるよ。そっとあふれないように。
リンくんが、ちゃんとニンゲンとしてヒキツギってやつを終わらせて、カイシャの最後の日まで、なんとか乗り切れるように。
それで、いい?(だから、もうこの話終えようよ)
ボブお、さすがー。ボブおは優しいなぁ。わかった。それまで、なんとか、乗り切るね。
ありがとう。ありがとう。ボブお。ありがとう。
ムギュっ。
あ。リンくん。いいか、ひとつ言っておくぞ。ちゃんと、自分の食いブチと飲みシロは稼いでよね。どうぶつってのは、ひとりじゃ全部はできないから、オハナみんなで協力し合って暮らしてくんだけどね。
うん。
もし、ブチとシロ、いなくなったら、リンくんもツイホーだからねー。おれら、リンくんを食わせる理由はねぇ!フハッ!
わーん。頑張るぅよぉ。食いブチさんと飲みシロさん、ちゃんと連れてくるから。どんなどうぶつかね?ニャーかねえ?とにもかくにも、しばらく見守っててください。
うむ。しっかりやるよーに!
じゃ、まずは、おビーな。
ほら、リンくんのコップの泡、ちょっと減らしてあげるから。ね?
カンパイ。くぴ。
オハナはみんなで協力し合って暮らすのだよ。
ボブお
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