こけやまきのこと行く 楽しいきのこ探し

パタパタパタパタ!こんにちわーに!ウサギのすずです。

今朝、出かける支度をしながら、リンくんが変なことを言い出したの。

「今日はねぇ、わたし、リンじゃなくてこけやまきのこだよ。」

「こけやまきのこ?」

横で聞いていたハンペンが思わず首をかしげる。

「あ、そっか、ハンペンはこけやまきのこのこと知らないよね?あのねぇ・・・。」

すずはハンペンのために、リンくんの別名(ペンネーム)のことを説明するの。

「あのねぇー、リンくん、普段はリンくんだけど、写真撮影のときのペンネームが『こけやまきのこ』っていうの。」

「フーン?きのこ?こけ?」

「そうそう。もともと、こけとかきのことかジメジメしてるところに生えてるものが好きらしいよ。リンくんてば、ぜぇんぜん詳しくはないくせにねっ。アハッ!」

「すずのご説明の通り。ま、シンプルにいうと、写真を投稿&応募するときは『こけやまきのこ』の名前にしてるって感じなんだな。それは鳥の写真でも草花の写真でもそう。だけどー今日は特にねぇ・・・。」

「ン?今日は?特に?なになに?」

「これから、きのこを見に行きまーす!!!」

「おぉー!秋はきのこの季節だもんね?」

「いえす!つくばの科博できのこ展ってのをやっててね、去年行きそびれちゃったんだ。一年越しのきのこ展へ、レッツゴー!」

そんなわけで、朝ごはんをかっこんで、すずとハンペンとリン・・・いや、こけやまきのこ?(ややこしいから、やっぱりリンくんって呼ぶ)は連れ立っておうちを出たの。

さぁて、約2時間かけてやってまいりましたよ、つくば!チーバの我が家からアクセスは悪くはないけれど、普段乗ることのない電車にゆられてちょっと旅気分。電車好きのハンペンはワクワクダイコーフン。「ジェイアール乗るペン?」からの、さらに「つくばエクスプレス乗るペン!」とご機嫌モードだ。

つくばの科博、というのは、正式名称を、国立科学博物館筑波実験植物園という。上野にある国立科学博物館の研究施設のひとつで、さまざまな植物を育てて研究に活かしているらしいよ。

雨上がりのゲツヨービ。本来なら月曜日は休館日なのだけれど、今回のお目当ての「きのこ展」の会期中は無休でやっているらしい。11時過ぎにつくば駅から筑波山口行きのバスに乗り、最寄りの「天久保(筑波実験植物園)」というバス停で降りたのはたったふたりだった。

リンくんよりも先に降りたおニーさんは、慣れた様子で植物園とは真反対の方向へ小走りしていった。

「ふーむ・・・。もっと混んでるのかなとか思ったんだんけどな?そうでもないんだね。」

バス停からすでに入口が見える。大学生っぽいグループがチケット売り場の横でなにか説明を受けていた。どうやら大学のゼミか実習で先生に連れられてやってきたような様子だ。

研究棟の入口の券売機で入園券を買う。

一般は320円。寄付つき入園券は500円で差額の180円がさまざまな研究や施設の維持などに活用されるらしい。

「ほう、そんな高くないし、んじゃ、寄付つきにしよう。」

係員さんにチケットを渡すと、寄付のお礼にとカードをくれた。写真に写っているのはショクダイオオコンニャクという大きな花で温室で育てている珍しいものらしいよ。

「きのこじゃないんだね?」

「んだね。きのこカードあったら集めたいなぁ・・・アハッ!」

雨は上がってはいるものの、どーんよりどんよりの曇り空。園内は舗装された遊歩道も整備されているけれど、自然の土の上を歩ける場所も多くある。入っちゃダメの場所はロープが引いてあるからそこには立ち入らないようにして、木々の間を通り抜けるようにして歩くことができるの。

「さぁて、きのこ、探しますか!すず、ハンペン、用意はいいかな?」

「あーいっ!きのこ、探すぞ!えいえいおー!」

リンくんは「きのこ展会場MAP」を手に、きのこ出現ポイントに向かう。どうやら「きのこ展」の赤いのぼりが立っているところがポイントのようだ。

「まずは、このプロムナード先案内板ってところまで行こう。そこに今日見られるきのこの説明があるらしい。」

実際に園内に入ってみると、ちらりほらりと人がいることがわかる。14ヘクタールもあるという広い園内だから、きのこ好きが集まってもそうそう混雑なんてしないのだろう。

ちびっこ連れのファミリーがけっこう目立つ。望遠レンズを首から下げたママさんが、ジィっと地面に向かってシャッターを切っている姿が目に入った。

「あれ、あそこになにか生えてるんだね?行ってみよう。」

ファミリーが立ち去ったあと、リンくんと一緒にそのあたりに向かってみると。

「おぉ!第一きのこ発見です!」

鮮やかなオレンジ色をした小さなニョロリとしたきのこが湿った枯れ木から生えているのが確認できた。

「おぉー!名前がまったくわからん!けど、なんだかうれしい!」

リンくん、さっそくのきのこにわくわくが止まらないみたい。

「ねぇねぇ、すず、鳥さんは好きだけど、きのこのことはよくわかんないなぁ?」

「まぁいいから。いいから。きっと鳥さんもたくさんいるから。ちょっとお付き合いお願いしますよ、ね?」

「はぁーい。」

オレンジ色のニョロニョロきのこの手前には、枯れ葉かなにかの実かと見紛う、焦げ茶色のつぶつぶがたくさん落ちていた。

“焦げ茶色のつぶつぶ。チャダイゴケのなかま、だそうです”

「つぶつぶ?」

「コレ、なんだ?」

直径1cmほどのつぶつぶが無数に足元に広がっている。よくわからないけれど、一生懸命カメラを向けるリンくん。そのとき、ひとりで歩いていたオジサマに声をかけられた。

「おー、チャダイゴケがいっぱいだねぇ!」

「ちゃ・・・?すみません、全然名前がわからなくって。」

「あぁ、これねぇ、チャダイゴケのなかまだね。詳しくはわからないけどね。それから、この山吹色のは、ツノマタタケかな。」

“ツノマタタケというらしい”

「へぇ、ありがとうございます。」

きのこオジサマに教えてもらって・・・、

「リンくんはきのこのなまえをふたつおぼえた!」

テッテレー!

アハッ!

それからそれから、木の根元に白いでっかい一本を発見!10cm以上ありそうな大物だよ。

「うわー!立派だなぁ・・・!なんだろうなんだろう、わからないけど、撮る。」

地面スレスレにカメラを構えて、シャッターを押すリンくん。きのこを撮るのにベストな設定がわからないようで、あれやこれやとカメラのダイヤルをまわし、露出をいじったりしながら撮るものだから、ひとつひとつのきのこポイントで時間がかかる。

「ふーぅ・・・!やばい、こんなんじゃぁ、全部回りきれない・・・かも。」

ようやくプロムナード先案内板の前に到着。ココがいよいよスタート地点。さぁて、どんなきのこが見られるんだろう?

案内板には、チェキで撮った写真が地図上に貼り付けてあって、手書きできのこの種類が記してあった。

“プロムナード先案内板、とはこのこと。チェキに手書きで種の名前が記載されていて手作り感いっぱい”

「ほーほー!あ!今見てきたやつも載ってるね。ツノマタタケとチャダイゴケのなかま。おー!」

「白いでっかいやつは?」

「うーん、地図的にはマントカラカサタケ?しかしちょっと見た目違うなーぁ。保留。」

園内マップにはクイズラリーがついていて、5つのポイントで全部回答を記入すると、帰りに記念品としてポストカードがもらえるらしいの。

「とにかく、このクイズラリーのスポットは全部見て回りたいね。園内の広さが全然ピンとこないから、とりあえず思うように歩いてみよう。」

このあとはもう無我夢中で歩き回ったの。立ち止まっている人がいたら、きっとそこに何かがあるね?ってことで探してみたり、「きのこ展」ののぼりを見つけたらクイズしたりした。

手元にマップはあっても、園内には地図の看板は少なくて、一体今すずたちがドコにいるのか見失いがちだった。

「うーん、あれ、池?おぉ、池かぁ。ってことは・・・いま、この道?あれ?もう一本、先?うわ、わっかんない。」

きのこを探すと同時に、若干迷子にもなりつつ、できるだけ人の声のする方へと向かった。園内は木々や植物に囲まれてうっそうとしていて、雨上がりということもあってジメジメして暗いから、人がまったくいなかったらちょっと怖いなって思っちゃったんだもん。

「うわぁ、スゴイねぇ。」

クイズラリーのポイントEまで行ったところで、また別のきのこオジサマに話しかけられた。

「ほら、カキシメジいっぱい。今年は大量だなぁ。」

“カキシメジ。今年は豊作?らしい”

なるほど、毎年来てるとその年によっての違いもわかるし、このあたりに出現するきのこの種類もわかるってことだね。

「そういえば、さっき、タマゴタケ探してるちびっこがさ、去年はこの辺で見たのになぁとか言ってた。」

「年によっても時期によっても変わるんだろうねぇ。おもしろいね。」

リンくんがずぅっと地面にはいつくばるようにして写真を撮ってるものだから、すずもハンペンも全然出番がないの。

「ちょっとくらい記念撮影したいペーン!!!」

のそのそとリンくんの背中のリュックから出てきたハンペンが、カキシメジの群生の前で手を広げてポーズを取った。

「コレ、しめじ?おいしいペン?」

「しめじのわりには大きいけどねぇ・・・って、えーっと・・・なになに?うわ!カキシメジ、毒あるってよ!」

「ひゃーぁっ!!!毒きのこだペーン!ヒッヒッヒ!」

“毒きのこだペーン!ヒッヒッヒ!”

その後、マップとにらめっこしながら園内の一番奥まで行ってみた。どんどんひとけがなくなってきて、薄暗くしっとりと濡れた園内は、さながらアップダウンのないハイキングのよう。

「あ、小さな立て看板あるよ!」

ノウタケ、キツネノタイマツ、聞いたことも見たこともないきのこたち。周囲は枝で小さな柵のように守られていて、その横には、手書きで種の名前の立て看板が立てられていた。おそらくこの科博の職員さんたちがひとつひとつ見つけては踏まれないように作ってくれたものだろうと思う。

“ノウタケ”
“キツネノタイマツ”
“キツネノタイマツのたまご、らしいです”

最後に残ったクイズラリーのポイントDまでまわると、もう時計は午後2時半を回っていた。そこはちょうど建物のあるエリアで、きのこ展の関連展示を行っている研修展示館の入口にあるベンチに座って、おうちから持ってきたおにぎりとあったか~い缶コーヒーで、すずたちはようやく休憩することができた。

「ふはー!楽しかったけど、めっちゃ疲れた・・・!」

リンくんがおにぎりをひとくちほおばりながら、音を上げている。

「いつもはさぁ鳥さん探すために、上ばっかり見て歩いてるじゃない?それが今日は足元ばっかり見て写真撮るにもしゃがんでさ。足腰が痛い・・・。」

「アハッ!リンくんは、へなちょこだなぁ?」

「うーむ。鳥見とは使う筋肉が違うのだよ。ま、レンズの重さは違うけれどね。鳥見の時は首肩がしんどいけど、きのこ探しは足腰にくるね。」

これも実際に来てみないとわからない発見ではあったよね。

「ま、でもきのこ探しは宝探しみたいで面白いね!」

おにぎりを食べ終えたあとは、館内展示をぐるっと見て回る。フォトスポットがあったから、ハンペンと一緒に記念撮影したよ。

「きのこ!きのこ!楽しいきのこだペーン!」

なんとも楽しいきのこ探しさんぽでした。

リンくん、帰りに売店で子供向けの小さなきのこ図鑑と、それから迷ったあげく、毒きのこ柄の靴下をおみやげに買ってた!

「てぬぐいと迷ったけどー、靴下ってグッズとしてもめずらしいから買っちゃった!」

「これで、正真正銘、こけやまきのこだね?!」

「そうだねぇ、緑色の服着て、この靴下履いたら、こけやまきのこっぽいかもね。」

園の外に出ると、もう午後4時近くなっていた。

バス停に着いてみるとその路線はとても本数が少なかったらしく、慌てて別の路線を探す。リンくんはスマホで地図を見ながらなんとか別のバス停まで到着してホッとしていると、間もなくしてつくばターミナル行きがやってきて、無事に駅までたどり着くことができた。

「なんだかリンくん、今日は地図見てばっかりだね?」

「ホント、ホント。来たことない場所は緊張感あるねぇ。はぁー。あれまぁ、これ、家まで帰ったら二万歩コースだ。。。おうちまで無事に帰ろうね。」

「つくばエクスプレス乗るペーン!ジェイアールも乗るペーン!」

「はいはい、帰りも乗りますよー。」

ハンペンはやっぱり電車が大好きだ。

「リンくんはさぁ、”こけやまきのこ”をちゃんと名乗れるように、きのこのこと、もっと学んでよね!」

「はぁーい。鳥さんもちょっとずつちょっとずつで覚えてきたもんね。きのこのことも覚えたいね。」

そうそう。すずも一緒に頑張るからね!うふふ!

リンくんがいろんなところで迷うものだから、今日はホントにいぃっぱい歩いた。お昼に食べたおにぎりじゃ全然足りなかったみたいで、すず、おなかがグゥーって鳴っちゃった。

今夜の晩ごはんは何かなぁ?やっぱりきのこかな?って考えながら、ウトウトと目を閉じた。のんびりとした田畑の中を走る電車の揺れが心地いい。

リンくんのリュックのなかにはあの園内の湿っぽい草木の匂いが満ちていて、とても居心地がいいの。あれ、またすぐにでもあの森みたいな植物園へきのこ探しに行きたいなぁって思っちゃった。

近所だったら年パス買って通うのになぁ。

楽しい、楽しい、きのこ展。また来年も来ようね!

すず(鈴之助)

“カワラタケ”
“チャカイガラタケ”
“クジラタケ”
“ヒイロタケ”
“ハナオチバタケ”

国立科学博物館 筑波実験植物園(茨城県つくば市)
https://tbg.kahaku.go.jp/

きのこ展2025 ~名前にまつわるミステリー~(※2025年は会期終了しました)▼

会期: 2025年10月18日(土)~10月26日(日)
開園時間: 9:00~16:30(入園は16:00まで)
開催場所: 国立科学博物館 筑波実験植物園

https://tbg.kahaku.go.jp/event/2025/10kinoko

▼「こけやまきのこ」Blueskyアカウントはコチラ▼

@kinokokeyama.bsky.social

※「こけやまきのこ」名義でのXアカウントは閉鎖し、現在はBlueskyのみで活動しています(2025年10月現在)

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Rin(リン)

ぬいぐるみブロガー、Rin(リン)です。 ライオンのボブ家と愉快な仲間たち、そしてニンゲンのケンイツ園長と一緒に、みどりキャンプ場で暮らしています。 ボブ家の日常を、彼らの視点でつづっていきます。

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