うづめ、1年ぶりにオットの猿田彦さんに会う

澄んだ空気が心地の良い、年の瀬の早朝。

去年のこの日と比べれば、圧倒的に暖かな朝なんだろう。だけれど、やはりまだこの時間では、吐く息は白く、年がら年中毛糸のマントを離さないわたしとしては、カラダの震えが止まらない。

チュン。

わたしはスズメのうづめ。名は天宇受売命(アメノウズメノミコト)からいただいている。天宇受売命は、ニッポンの八百万の神々の一柱で、天照大御神(アマテラスオオミカミ、以降アマテラスさん)がこの伊勢の地で力を振るうに至った貢献者(人ではなく神さまだけれど)のひとりだ。
(※詳しくは以前のお話にて → 「命名 スズメの”うづめ”」 「うづめの神さまにごあいさつをする」

伊勢市駅をバスで出発したのは7:19。「猿田彦神社前」で降りたわたしたちは、鳥居の前で立ちすくんでしまった。

いつも通り、猿田彦神社の正面にある大鳥居の向こうには、荘厳な御本殿がある。紫色の幕にの向こうにオットの猿田彦大神(以降猿田彦さん)がいらっしゃると思うと、わたしの胸は自然と高鳴る。

・・・のだが、しかし、なんということでしょう!

入口側から見て右手前、本来であれば、佐瑠女(さるめ)神社があるはずの、その社殿そのものがぽっかりと更地になってしまっていた。

「・・・え?!わたしのお社が・・・ないチュン!!!」

オロオロするわたし。

だって、わたし、1年ぶりに、オットの猿田彦さんに会いに来たのだもの。

猿田彦大神と天宇受売命は夫婦の神さま。ココ、猿田彦神社の敷地の中に、天宇受売命を祀る佐瑠女神社もあって、共に力を振るわれているのだ・・・けれども、ドコへ行ってしまったのだろう?

「まぁ、うづめ。まぁまずは、猿田彦さんにご挨拶しようか。」

「う・・・わかったチュン。」

大鳥居を一礼してからくぐり、猿田彦さんの御本殿の前で柏手を打つ。

ペコッペコッ・・・パンッ・・・パンッ・・・・・・ペコッ

わたしも二礼二拍手一礼に慣れたものだ。

「猿田彦さん。わたしのオット。1年ぶりにお会いできましたね。お懐かしぅございまチュン。わたし、この日を楽しみにしていましたチュン。」

そうココロのなかでしっかりとお伝えをする。

「・・・しかし、わたしの・・・いえ、天宇受売命の佐瑠女神社はドコに行ってしまったチュンか?」

「おぉ。そういうことか。なぁうづめ、コッチに『假殿参拝所』ってあるよ。建て替えの間、うづめさんはコッチにお祀りされてるみたい。」

戸惑っているわたしに、ケンイツエンチョーが優しく教えてくれた。

「へぇ、こんなの、今だけじゃない?コッチ猿田彦さん、アッチ佐瑠女さん、っていう立て看板。な?ホラ。」

猿田彦神社の会報『みちひらき』(第121号 令和7年1月)によれば、佐瑠女神社は改修工事を行うことになり、今年2024年11月4日に「假殿遷座祭」が斎行されたそうだ。来年の12月末までは、猿田彦神社の拝殿内で一緒にお祀りされることになっているとのことだった。

「あらま、ってことは、天宇受売命、猿田彦さんと同居だチュンね?仮のお住まいとはいえ、それはそれでキュンキュンしちゃうチュン!エヘヘ。」

「アハッ!うづめ、なんだかうれしそうだね。」

「そりゃそうチュン!大切なお方と一緒に暮らせるのだから、うれしいチュン。うふふ。」

わたしは猿田彦神社の拝殿の右側にいらっしゃる天宇受売命にあらためてご挨拶をした。

今回が何度目の同居(「假殿」のこと)なのかは定かでないけれど、そうやって、太古の神話の世界から、猿田彦大神と天宇受売命は寄り添って生きてきたに違いない。

ペコッペコッ・・・パンッ・・・パンッ・・・・・・ペコッ

「天宇受売命、改めて、わたしはスズメのうづめです。お名前をいただき、感謝しています。・・・ねぇねぇ、ところで、猿田彦さんとの同居生活はどーぉ?ウフフ!楽しくやってるかな?ね、楽しくやってるよね。どうか神さま同士、仲良く力を合わせて暮らしてくださいね。新しいおうちができる頃、来年の年末に、また会いに来るからね。」

「うづめ、なにそれー。神さまに向かって失礼じゃない?まるで女子トーク・・・。」

リンくんにはちょっとあきれられちゃったわ。

でもでもでもでも。

1年ぶりにオットの猿田彦さんにもえたし、なによりも天宇受売命が同居してるっていうニュースも知ることができた。

わたし、なんだかうれしいチュン。
今年も来られて、お参りできて、本当に良かったチュン。

清々しい気持ちになって、わたしは猿田彦さんの大鳥居に向かって、しっかりと再一礼をしたのだった。

朝8時前。
美しい朝日が、ようやく神宮の森の間からふりそそいでいる。

光とともに、わたしの仲間たちはチュンチュンチュンチュンとさえずリ始め、わたしたちの来訪を歓迎してくれたのだった。

わたしは小さなスズメ、名前はうづめ。

天宇受売命の神話のように、わたしも踊って踊って踊りまくって、この世界を明るく楽しいものにしたいの。

うづめ

“この木はおがたまの木といって、天宇受売命が踊る時に枝を手に持ったと伝えられている木だよ”
“「古殿地」。今年もブレずに人気運をお願いしました。「とらっうまっいぬー!」だよ”

猿田彦神社 公式ホームページ
https://www.sarutahikojinja.or.jp/

「佐瑠女神社 御造営(改修工事)について」 猿田彦神社 公式ホームページより
https://www.sarutahikojinja.or.jp/info/%e4%bd%90%e7%91%a0%e5%a5%b3%e7%a5%9e%e7%a4%be-%e5%be%a1%e9%80%a0%e5%96%b6%ef%bc%88%e6%94%b9%e4%bf%ae%e5%b7%a5%e4%ba%8b%ef%bc%89%e3%81%ab%e3%81%a4%e3%81%84%e3%81%a6/

佐瑠女神社 について
https://www.sarutahikojinja.or.jp/sarume/

「うづめの神さまにごあいさつをする」
https://bobingreen.com/2023/12/26/7552/

「みちひらきのかみさま」
https://bobingreen.com/2020/05/18/178/

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Rin(リン)

ぬいぐるみブロガー、Rin(リン)です。 ライオンのボブ家と愉快な仲間たち、そしてニンゲンのケンイツ園長と一緒に、みどりキャンプ場で暮らしています。 ボブ家の日常を、彼らの視点でつづっていきます。

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